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4.いつもと違う日常

『いただきます』

「……いただき、ます」

 翌朝。今日も朝食と夕食は家族全員で食べる。いつもの日常と違うのは、月飛くんという男の子がいることだ。

 しかし、その月飛くんは、全く食事に手をつけようとしない。

「どう、したの?」 

 見かねたお母さんが、不安そうに尋ねる。すると、月飛くんはびくんっと肩を揺らし、お母さんの方に向いた。

「、あの……こんな、豪華で……いいん、ですか」

「え、豪華?」

 彼の言葉に、私はもう一度今日の朝食を見る。

 今日の朝食は、トーストにスクランブルエッグ、レタス、トマト、スープだ。おいしいんだけど、私はお母さんは朝食は手を抜いて夕食にとびっきり豪華なのを用意して驚かせようとしていることを知っている。……それが、豪華……? 普通の朝食だよね?

「あ……僕にとってのご飯とは、違い、ますよね」

 あ、そっか。

 この子……元浮浪児、だったんだ。

「えっ、何が普通なの?」

「……? 魚の骨は、豪華です。残りとかがあったらもうごちそうです。あとはゴミか、虫です」

『っ』

 そんなに、劣悪な……。

「……え、大人たちは気づかなかったの? 浮浪児って絶対目立つじゃない」

「……廃墟で、過ごしてました。弟と一緒に、廃墟探して。取り壊されそうになったらこっそり出て、また廃墟探して」

「あ、弟さんがいるんだ……なんていう名前?」

月翔つきと、です」

「月翔、くん……今はどこ? 一緒に来なかったの?」

 何気なく聞くと、なぜか月飛くんはひゅっと息をつめた。

 ……あ。もし、かして。

 ——亡くなって、る?

 ……いつか、浮浪児の生存率はとても低いと、聞いたことがある。戦後に多くの子供たちが孤児になって、家もなくて、浮浪児になる子たちが多かったって。それは劣悪な環境で体調を崩したり、食べちゃだめなもの食べちゃったり、そして一番多いのが飢餓だ……って。

 私はなんて、デリカシーのない発言をしてしまったんだ。

 そう反省し、私は笑顔を取り繕い話題を逸らした。

「、まあ食べてみなよ! おいしいよ」

「えっ、あ、はい……」

 恐る恐る、月飛くんはトーストを口に運ぶ。小さくて形の良い唇の中に、一口トーストの一部が入り、彼はそれをゆっくりと噛み潰す。どんどんと月飛くんの目が大きく開いていき、彼はばっとお母さんを見た。見られたお母さんは、あっけにとられたような顔をしてから、くすっと笑った。

「おいしかった?」

「っはい、とっても!」

 きらきらと瞳を輝かせ、トーストにかぶり付く小動物みたいな月飛くんに、私たちはほっと息を吐いた。


「——あ、あおちゃーん」

「ゆゆ。おはよ、」

「ねえ聞いた⁉ 中等部1年D組にさ、めちゃくちゃ綺麗な転校生が来たんだって! しかも男の子!」

 ……。

「へー、そーなんだー」

 自分は演技の才能がないと思う。

「もーおー、ちょっとは興味示そうよー」

 ゆゆがそんなことを言っているが、そんなこと言われても……。義弟だもん……。家族だもん……。興味持ったらキモいでしょ……。うざいでしょ……。(*個人の感想です。全て鵜呑みにしないでください)

 だったら言えば? いいえ、私は高校生活波風立てたくないのです!

「……あ、碧音、さん……」

 ……はい?

 え、私大丈夫かな、今幻聴聞こえた気がしたんだけど。中等部なんだから、いるはずねーよな。いやいたらやばい。私の高校生活に波が……! 私サーフィンできないのに……! っつーかスポーツ苦手の部類に入るのに……!

「……、あの……?」

「ゆゆ、あれ誰呼んでるんだろうね?」

「……え、いや明らかにあおちゃんのこと呼んでるじゃん……バカなの?」

 ……うぅっわ。

「絶対あんたには言われたくなかったセリフ。はんっ、留年と留学間違えたくせに。数学10点だったくせに。最高得点46点のくせに」

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああんんっっっっ‼‼‼」

「うるせーよ」

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