34.夜空に爆ぜ咲く火の花を、願いの星を、見つめてた
「……あ、」
私は、遠くにある人を見つけて、声を漏らした。
「お母さんとお父さん」
「えっ」
「えー、あおちゃんの両親見たいー」
「くふふっ、サオーネの両親、気になるなあ、くふふっ」
「呼んでみたらどうですか?」
みんなが見たいと言っているのと月飛くんの一言で、私はお母さんたちを呼ぶことにした。
「あら、碧ちゃんのお友達? こんにちは、碧音の母です。娘がお世話になっています」
柔らかくお母さんが微笑んで、挨拶をする。
その横で、キラキラと眩しすぎて直視できない完璧スマイルを浮かべたお父さんも挨拶をした。
「碧音の父です。碧と仲良くしてくれているそうだね。ありがとう」
「い、いえ、そんな……ことは、はい」
どっちやねん。
……うん。多分、みんなあっけにとられてる。お母さんとお父さんが美男美女すぎて。
いや、これほんとに自慢じゃないの。キラキラしすぎて私まで直視できないくらいなの。可愛いとかかっこいいとかの次元じゃないの。は?
……ちゃうくて。
「私のお母さんとお父さんです。えーと、この子が安倉由優。こっちが三つ子で、左から環多くいは、環多くいひ、環多くいふ。そして、この男の子たちが、左から佐野貴月くん、來山陽太くん。月飛くんの同級生ね」
私が一人ずつ言っていくと、呼ばれた人はぎこちなく頭を下げる。
お母さんたちは更にキラキラスマイルを深めて、口を開いた。
「佐野くんと來山くん、かしら? 月飛くんと仲良くしてくれて、ありがとう」
「月飛くんにお友達がいると聞いて、安心したよ」
「いえ。月飛と友達になれて、俺たちも嬉しいです」
「俺もです」
優しい笑顔を浮かべて、恐ろしい程に美しい容姿の4人が話す。
それに、この中でも突出して綺麗で端整な容姿を持つ月飛くんが、縮こまって真っ赤になっていた。
「……っほ、ほんとに、恥ずかしい……ですっ……もぅ、僕のこと会話に出さないでください」
そんな可愛死ぬすぎる彼に、4人はもっと悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「月飛は優しいですし、頭もいいようなので。うちのクラスでは、清涼剤って呼ばれてるんです」
「歌もうまいんですよ。あ、お二人はうちのクラスのカラオケ大会見ましたか? 月飛が優勝したんです」
「おお、そうだったのか? 月飛くんと碧の出番が被っていてね。どちらを見に行こうかと言って、分かれて見に行ったんだよ。月飛くんを見に行ったのは須磨子さんの方だね」
「ええ、すごかったわよ? またビデオで見せるけれど、すっごく綺麗な歌声だったわぁ」
微笑み合いながら、とびきり美しい少年について美男美女が話す。なんという目の保養。ただ月飛くんを見ると目の保養を通り越して死んでしまうのでご注意を。
そんな見目麗しい光景を、いつの間にか誰もが息を呑んで見ていた時、こちらも眉目秀麗なイケメンハイスペ生徒会長が口を開いた。
「お話中申し訳ありませんが、今から——『打ち上げ花火』を開催します!」
ざわっ、とざわめく。
……打ち上げ花火? そんなのできるの?
「本物の打ち上げ花火はできませんが、プロジェクターで花火を演出したいと思います! ただの映像と侮るなかれ! 現代の技術は、こんなにも進んでいます!」
「では、花火の打ち上げまで——5!」
南峰さんが言った後(おそらく村屋先輩だとノリノリで言ってくれないから)、林くんがカウントダウンを始める。
慌てて私たちも指を出して、一緒にカウントダウンを言った。
「4! 3! 2! 1——」
こくり、と、誰かが息を呑む音がした。
「0!」
ひゅう——
ドンッ!
轟音がホールに響いて、私たちはその光景に目を奪われる。
それは、花火。花火だけれど、プロジェクターだとは……思えない。
たくさんの花火が打ち上げられて、咲いた瞬間に散る。
それは、本当に美しい光景だった。
光と色、音にホールが包まれて、もう花火以外が目に入らない。
花火大会よりも至近距離で、花火大会よりも多く、花火が打ち上げられる。
そうして私たちは、夜空に爆ぜ咲く火の花を。
ずっと、ずっと見つめていた。
月飛くんの横顔に、花火の色が移って、輝いていた。
花火がひと段落ついたとき、林くんがおもむろに口を開いた。
「では、願いごとを——」
「“星空に”いたします!」
私たちが書いた願いごとがふわりふわりと浮かんで、ぽっと灯をともす。
そして、それらが上に集まった時——
「星空、だ……」
誰かが、言った。
願いごとが、星になって、星空を作った。
……すごい。
願いを……星に。
星に願いを、じゃなくて。
願いを、星に。
「すごい、ね……碧」
「そう、だね」
月飛くんの敬語が崩れているのも気づかぬまま、私たちはその無数の願いの星たちを見つめていた。
「それでは、願いごとを見られてもいいと言ってくださった方たち、総勢10名の願いごとを発表します。
まず、1人目。中等部2年C組、沢城恵令奈さん。『彼氏ができますように』。続いて、2人目。中等部3年A組、松田栄太さん。『このまま高等部に行けますように』。3人目。高等部2年E組、安倉由優さん。『テストで全部20点以上になりますように』。4人目。高等部2年E組、環多くいふさん。『AとYがもっと面白いことをしてくれますように』。5人目。中等部1年D組、佐野貴月さん。『母と兄の病気が治りますように』。6人目。中等部1年B組、江藤めいさん。『妹か弟が無事に生まれますように』。7人目。中等部1年D組、來山陽太さん。『夢が叶いますように』。8人目。高等部3年A組、紀美野陽詩さん。『彼女へのプレゼントが喜ばれますように』。9人目。高等部2年E組、澄瀬碧音さん。『幸せな日々が続きますように』。10人目、ラスト。中等部1年D組、澄瀬月飛さん。『月翔との約束を、一生守れますように』」
みんなの願いごとに、たくさんの人たちが感情を出した。
佐野くんの願いごとが発表されたとき、私たちが思わず彼を見ると、佐野くんは少し困ったような笑みを浮かべていた。
なんの因果か、私と月飛くんはラストに呼ばれた。月飛くんの願いごとを聞いた時、私は少し視界がぶれた。
願いごとは人それぞれだったけれど、全てが温かく、優しく輝いていた。
「はー、よかったねー」
「ね。すごかったわよね」
「くひひっ、終わってほしくなかったぞの、くひひっ」
「くふふっ、確かにい、ずっとやっててほしかったなあ、くふふっ」
「くははっ、期待以上であったな、くははっ」
談笑しながら、自分たちの教室に帰る。
すごかった。光の演出がすごすぎて、今もまだ瞼の裏に焼き付いてる。
もう一回見たいなー。お願いごとももう一回聞きたい。
中等部一年生と高等部二年生は違う棟なので、月飛くんたちとは別行動だ。
そして私たちは文化祭の余韻に浸りながら、一日を終了させた。
楽しい文化祭回が終わりました!
続きが気になる方は、ブクマ等してお待ちくださいね!




