31.夏祭り! 浴衣……着る?
私たちがホールにつくと、そこは真っ暗だった。
メインホールは、私のクラスがコスプレコンテストをしたホールと、月飛くんのクラスがカラオケ大会をしたホールとはまた違うホールで、高等部と中等部の分かれ目、学園の中心にある、ホールの中で最も大きなホール……ホールホールうるさいな。
……というかくっら。真っ暗じゃん。暗所恐怖症の子いたらどうすんの。
私たち以外にも人はたくさんいるようで、ざわざわと声がたくさん聞こえてくる。
「陽太ってさ、なんで生徒会入らなかったの? 絶対誘われただろ」
「んー。生徒会よりも、優先したいことがあったから……かなぁ」
「優先したいこと? 何それ」
「それは内緒。というか、貴月も生徒会誘われたろ? 入りそうなもんなのに」
「……あー」
佐野くんは、その問いにふっと目を逸らす。
……? 言いたくない理由でもあるのかな?
「それよりも、生徒会に勧誘されることなんてあるんですか?」
こてんと首を傾げて、月飛くんはそう質問した。
佐野くんは救われたという顔で月飛くんを見て、來山くんはふぅ、とやれやれというように嘆息する。
「あるよ」
「どんな人が勧誘されるんですか?」
「ん……俺らみたいな人? 多分、澄瀬先輩も勧誘されてんじゃね?」
「ん? ええ、まあ……。というかみんな断っ、」
たのね、と言おうとした時。
ぱっ。
突然、ホールが明るくなった。
ホールの電気ではない。これは——
屋台?
屋台の……灯。
「えっ⁉」
「なにこれ……」
「すっげぇ……」
「屋台じゃん」
「えっ、いつの間に?」
突然ついた灯に驚いた生徒たちが騒ぎ出す。
……いや、私もまだ状況についていけてない。
なんで屋台だけに灯をつける必要があるの? ホールの電気をつければいいんじゃ……
そこまで考えた時、林くんの声が聞こえた。
「皆さん、メインホールにお集まりいただき、誠にありがとうございます! では、これから『夏祭り』の概要をご説明いたします!」
……『夏祭り』……
もしかして、
「夜……ってこと?」
「んみゅ? あおちゃん、夜ってどゆこと?」
「あ、いや、多分林くんが言ってくれると思うわ」
「まず、真っ暗なところに集めたり、突然灯をつけたりして、不安にさせてしまい本当に申し訳ありません」
深々と林くん、村屋先輩、そして生徒会役員たちがそろって頭を下げる。
……うん、あれは怖い。
「しかし、それには意味があるのです。皆さん、『夏祭り』と言ったら何を思い浮かべますか?」
「え、『夏祭り』? ……たこ焼き、焼きそば、りんご飴、イカ焼き、かき氷、たこせん、フランクフルト、チョコバナナ、カステラ、わたあめ、ワッフル……」
「食べ物ばっかじゃない」
ゆゆはやっぱり食いしん坊だった。
……ゆゆは夏祭りで食べ物ばっかり食べてるの? え、そんなわけないよね? ……そんなわけ……ない、よね……?
「もっとあるじゃない。射的とか、ヨーヨーつりとか、金魚すくいとか、輪投げとか、くじ引きとか。あとは屋台じゃなかったら、花火とか浴衣もあるでしょ」
「おー。あおちゃんすごい」
「……いや、あのね?」
呆れすぎてゆゆに説明をする気力も起きない。
すると、林くんが話し出した。
「皆さん、たくさんあげられましたか? たこ焼き、焼きそば、射的、金魚sくい、花火、浴衣……数えきれないほどあると思います。ですが、夏祭りはこれだ、ということがあるんです」
林くんが目くばせをして、村屋先輩がこくっと頷く。
そして、村屋先輩にバトンタッチした。
「それは——『夜』です。夏祭りは基本、夜に行われる祭りです。なので、この暗さは『夜』を表し、屋台だけが明るい、というまさに夏祭りを表しているんです」
おおー、と歓声が上がる。
すっご、手込みすぎだろ。
「碧音さん、楽しみですね!」
「そうねっ」
にこっと月飛くんが笑いかけてきたので、私も微笑み返した。
うん、楽しみだ。今年の文化祭、最高かも!
「では、概要の説明を再開いたします。屋台などは全て無料でお楽しみいただ けます」
おおっ、とざわめきが起きる。
そして、林くんは手を斜め右に向けた。
「そして、あちらをご覧ください」
その手をなぞって、手を向けている方向を私たちも見る。
するとそこには、笹があった。
「あちらに、笹と短冊が置いてあります。短冊に自分の願いを書いていただき、笹に括り付けていただきます。これは自由参加型ですが、場所が分類されており、こちらから見て右方向に括り付けられている『みんなに見せてもいい願いごと』、左方向は『みんなに見せたくない願いごと』と判断いたします。気を付けて括り付けてくださいね。さらに、20分ごとにミニイベントを開催します。ミニイベントの詳細は、それをするときまでのお楽しみです!」
林くんは茶目っ気たっぷりにウィンクをして、女子たちの黄色い歓声が響いた。
わーお、モテモテー。
「さらに! 手芸部協力の元、いらなくなった制服をアレンジした浴衣をご用意いたしました! 着用は任意ですが、ぜひ着てみてください! そして、浴衣を着ない人も、着る人も、光るブレスレットは着用していただきます!」
「浴衣はこちらで、光るブレスレットはこちらでーす!」
林くんの言葉の後、生徒会役員の人たちが呼びかけをしている。
「私たちも行こっか。というか、月飛くん浴衣着る?」
「ゆかた……ってなんですか?」
はてな、と顔に浮かべながら、月飛くんが質問してくる。
私はん-、と悩んで、言った。
「日本の……服?」
「……」
ぱちぱちと目を数回瞬きして、月飛くんがクエスチョンマークを頭の上に飛ばす。……ですよねー、わかりませんよねー。
「あ、」
私はいい案を思いついて、ぱちん、と手を叩いた。
「じゃあさ、浴衣着ちゃおうよ。私も着るから」
皆様の応援が糧になってます、ありがとうございます!
ブクマ・評価・リアクション・感想、待ってます! お気軽にどうぞ!




