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29.名前呼び!

「……ふぅ……じゃあ、生徒会の企画に行きましょうか」

「そうですね」

 そこから私たちは、生徒会の企画に向かった。

「あ、ゆゆ」

「陽太さん、佐野さん」

 すると、そこにはゆゆ、來山くん、そして月飛くんのクラスの委員長だという佐野くんがいた。

 ……やっぱりみんな生徒会企画気になってたんだ。

「あおちゃぁーん、聞いてよー」

「え、何」

「あたしさー、あおちゃんは弟くんと回るんだろーなって思ってたからさー、気遣って声かけなかったんだよー。それで、違う子と回ろうって思ってたら、みんな彼氏とか家族とか友達とかと回ってるんだよぉー! あたし一人だけで回ってたのぉー!」

 私に抱き着いてきたゆゆの頭をぽんぽん撫でて、私は苦笑する。

「災難だったわねー」

「災難っていう3文字で片付けられるものじゃなかったよぉー!」

「そうねー、3文字で……3文字?」

 ……3文字って……どの要素で?

 えと、災難の漢字で2文字、さいなんのひらがなで4文字……3という数字はどこから……?

「んー?」

 純粋無垢な目で見上げて来るゆゆに少し戦慄を感じながら、私はそのことを頭から抜き去った。

「月飛、さっきぶりー」

「あ、來山くん聞いたわよ? すっごくうまかったんだってね! 聴きたかったんだけど……ちょうど私たちのクラスの出し物の時間が被っちゃって……」

「澄瀬先輩。ありがとうございます」

 ふっと破顔して、來山くんは頭を下げる。

 礼儀正しいし、かっこいいし、歌もうまいし、月飛くんによると頭も運動神経もいいらしいし……こりゃモテるわ。

「大丈夫? 今は」

「あ、はい。以前は、本当にありがとうございました……澄瀬先輩のおかげで、今はテストの点も上がってます」

 少しあどけなさの残る笑顔で、にかっと陽太くんが笑った。

 おぉっとぉ。これ絶対女子に見せたらイチコロだぁ。

「陽太さんと佐野さん、一緒に回ってたんですね」

「あぁいや、陽太とはここで会ってさ。安倉先輩も、澄瀬のお姉さんの友達だってわかって話してたら、2人が来たんだよ」

 佐野くんが簡潔にまとめて話してくれる。

 ……あー、この子委員長タイプだわ。月飛くんによるとこの子も頭と運動神経よくて、かっこよくて、礼儀正しくて、リーダーシップがあって、みんなに尊敬されてるらしいし……なんかもうこりゃモテるよねって感じ。いい子そうだし。

「そういえば澄瀬さー、俺のこと名前で呼んでくんね? 俺も月飛って呼びたいし。ダメ?」

 こてっと首を傾げながら、佐野くんが言う。

 ……こういう可愛いことをするからモテるんだよ分かる? 分かるかな佐野くん?

「ふぇっ、僕が……佐野さん、のこと……ですか?」

「そ。……というか澄瀬、俺の名前知ってる?」

 ぴきっと月飛くんが固まって、彼は佐野くんからそろそろと視線を逸らす。

 ……おーっとこれは知らない反応かー?

「俺の名前、改めて言っとくね。俺は、佐野貴月(きづき)って言います。ちなみに、兄1人、弟2人」

 茶目っ気たっぷりに完璧なウィンクをして、佐野くんは自己紹介をした。

 へぇ、兄1人に弟2人……4人兄弟か。にぎやかそう。

「きっ、きづ、き……しゃん……」

 顔を真っ赤っかにして、月飛くんは佐野くんの名前を呼ぶ。

 くっ、可愛い……噛んだとこも可愛いし……顔真っ赤で縮こまりながら小さく言ってるのも……可愛いっ。

「そんな恥ずかしいことか、佐野の名前呼ぶの」

 來山くんはそう呆れたように言う。

 あれ、佐野くんは來山くんのこと名前呼びなのに、來山くんは苗字呼び……なんだ。

「そんだけ言うんだったら、陽太も俺のこと名前で呼べー」

「えっ」

 私と同じことに気づいたのか、佐野くんは來山くんの首に腕を回して言った。

 やめろよ、なんて言いながらも、來山くんの唇には笑顔が浮かんでいる。

 そんな美しい少年たちの微笑ましいじゃれ合いを見て、私の口角も無意識に上がっていくのがわかった。

「……あーもう、わかったよ。呼べばいいんだろ呼べば、……貴月」

 來山くんがそう言うと、佐野くんはぱちっと一つ瞬きをして、月のように優しく笑った。

「そーゆーことだよ、陽太!」

長く続いているこの作品が、誰かに読まれていると感じるだけで嬉しいです!

ブクマや感想、評価、リアクション、くださればほんとに小躍りしちゃうほど喜びます!

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