26.文化祭、一緒にまわろ?
「あっ、月飛くん……!」
私は、月飛くんを見つけて彼に駆け寄る。
月飛くんはぱっと顔を輝かせて、私を出迎えてくれた。
「碧、……音さん」
「ふふっ、月飛くんのクラス……は、カラオケ大会だっけ? 月飛くんの歌、聞きたかったんだけど……」
あは、と少し苦笑しながら言う。
ほんとに、残念だった……。みんな、月飛くんがすごかったって言ってたし。
「優勝したんでしょ? ふふっ、おめでとう」
「ありがとうございますっ」
にこにこ、小動物みたいに可愛く咲う。そんな彼の笑顔がすごく綺麗で、私は思わず息を呑んだ。
「……? 碧音さん? 大丈夫ですか?」
「ふぁっ、い、いや、大丈夫……っ」
心配そうに月飛くんが私の顔を覗き込んで、私はぶんぶんと手を振って距離をとる。
そんな私にきょとんとしながら、月飛くんはもじもじし始めた。……え、何それ。え? 人類を瞬時に滅亡させる兵器? 隕石かな? あぁいや、ビッグバンか。どっちにしても私もう死んでるわ。なむあみだぶつなむあみだぶつ……死んだ本人がなむあみだぶつなむあみだぶつ言ってどうすんだ。いや別にいいのか。一人漫才してる場合じゃないんだよな。
「あ、あの……」
ちょいちょい、と月飛くんの細くてきれいな指が動いて、私を招く。
今度は私がきょとんとしながら、月飛くんのもとに行く。
すると、月飛くんは私の耳に口を寄せて、囁いた。
「文化祭ね、僕、碧と一緒に回りたい……な。だめ……?」
「——っ⁉」
っ反則! 即レッドカード! 2回とかっていう次元じゃない! 即退場案件……!
「可愛死ぬとはまさにこのことよ……」
「へ?」
ぱちぱち、目を瞬かせて月飛くんが戸惑う。
「ふっ……少年よ。私がこうなったのは君のせいなのだぞ……宇宙の端から宇宙の端も生ぬるく思えて来た罪深き月飛くんよ……」
「んにゃっ? ぼ、僕……つみぶかい……?」
「んにゃ……? んにゃだと……? なんと……なんという罪深可愛ぐはっき少年か……! 私は今の一撃で一気に消し飛んだぞ……! まだいるけど……!」
どっちなんだよ。
「……」
不思議そうな目で私を見て来る月飛くん。
そんな彼を見て、私はすぅーはぁーと深呼吸をして、正気に戻った。
「——文化祭、一緒に回ろ?」
「うんっ」
月飛くんはそう言って、輝くような笑顔を浮かべた。
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