25.文化祭、当日(月飛ver.)
文化祭当日。
学園は、いつもの5倍くらい騒がしい。
「月飛ー、準備できてるかー?」
陽太さんの言葉に、僕はこくんと頷いて、笑った。
「大丈夫です」
すぅー、はぁー、すぅー、はぁー……と深呼吸をして、僕はどっくんどっくんと暴れる心臓を落ち着かせる。
佐野さんが司会で観客の方を盛り上げているのを後目に、僕はイヤホンでもう一度歌の確認をした。
「……月飛、頑張れ」
陽太さんが、そうぽそっと激励して安心させるような太陽の笑顔を見せてくれたので、僕は少し落ち着くのを感じた。
「桐ケ谷啓介——94.038! ここで、最高得点が出ましたー!」
クラスメイトの男子・桐ケ谷さん(特技が歌だって誰も知らなかったらしい)がここで最高得点を出し、会場のボルテージが史上最高になった。
うおおおお、と歓声が会場内に響き渡り、夏でもないのに暑い。
「お次は……女子のみなさーん! お待ちかねの……、」
佐野さんはにや、と含みのある笑みを浮かべて、その名を言う。
「來山陽太——!」
その名前が呼ばれた途端、黄色い歓声が会場を覆いつくした。
……わぁ、陽太さん大人気。
僕だったら怖気づいて俯いてしまうものだが、陽太さんは太陽のような眩しい笑顔をきらきらと会場に振りまいた。
それに、甲高い黄色い歓声がまた一つ大きくなる。
「陽太ー、がんばー!」
「陽太くーんっ、頑張れー♡」
「來山くんー‼」
応援の嵐に、陽太さんはひらひらと手を振って、そして歌を指定した。
「俺が歌うのは——SnouMenの、『タペストリィ』」
ん? と僕は首を傾げるけれど、観客席ではそれだけで心臓が射抜かれたようで女子数人が石化してしまっている。恐るべし、陽太さん。
「~♪」
綺麗な、太陽みたいな、明るくて、眩しくて、力強くも透き通った歌声。
いつの間にか会場はしん、として、陽太さんの歌に引き込まれていく。
最後、ピアノの音がやみ。陽太さんが、深々とお辞儀をすると——
どんっ! と、拍手の音が爆発したように思えた。
それくらい、みんなが思いっきり手を叩いた。
そんな爆音に、陽太さんは思いっきり顔に満面の笑顔を咲かせた。
「來山陽太……」
息を呑む。
こくり、という誰かが息を呑んだ音が、聞こえてくる。
「——97.824……! 最高得点です……!」
会場を、最高潮の熱気が包んだ。
ぅわっ、と歓声と拍手が鳴り響いて、その全ての音が陽太さんを祝福する。
そして、陽太さんは太陽の笑顔をまたきらりと輝かせて、舞台袖に帰ってきた。
「陽太さんっ、すごいです……! すっごく、上手でした……!」
「はは、それならよかった。んで……月飛、次だろ? ラストだから、緊張すると思うけどさ……頑張れよ」
眩しすぎる笑顔と一緒に激励してくれたので、僕は少しほっとリラックスする。
「さぁ……行ってこい、月飛」
「はいっ!」
そうして、僕は舞台に身を躍らせた。
「ラストはー! クラスイチの清涼剤——澄瀬月飛ーっ……!」
わぁぁぁっ! と大歓声と大拍手が会場中に響く。
それが嬉しくて、僕は少し微笑んだ。
「えっと……僕は、ヒルシカさんの「まだ君に晴れ」……を、歌います……っ!」
その歌の名を言うと、おおっ、とホールのボルテージが上がった。
僕はすぅっと息を吸って、歌い出した。
思わず、口元を綻ばせながら。
歌い切った——そう思って、観客席を見る。
すると、皆がぽかんと口を開けていた。
んっ? と首を傾げると、ぱち、ぱち、と一つずつ拍手の音が増えていって。
そして——どぉぉんっ! と、爆発した。
思わず後退ってしまう、音圧だった。
佐野さんは、圧されながらも僕に控えめな拍手と綺麗な微笑を向けてくれ、口を開く。
「では! 得点発表に移りましょう! 澄瀬月飛の、得点は……」
僕は、こくっと息を呑みながらも耳を澄ます。
「——99.506っ‼ 超最高得点が出ました……! よって、カラオケ大会の優勝者は……澄瀬、月飛——っ!」
わぁぁぁーっ、と、今日最大の拍手と歓声がホールに響き渡った。
それがとっても嬉しくて、僕は誇らしげに、花が咲くように笑った。
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