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24.文化祭、当日(碧音ver.)

 文化祭当日。

 学園は、いつもの5倍くらい騒がしい。

「澄瀬さーん、上宮さんが化粧室来てってー」

「ん、わかった」

 よし、と椅子から立ち上がり、化粧室に向かう。

 そして着くと、上宮さんと須浦さんがいた。

「お、来たね」

「……あっしが……可愛く……綺麗に……してやる……任せろ……」

「……頼もしいスタイリストさんね」

 上宮さんが静かに燃えているのを見て、私はため息交じりにそう言う。

 ……ああ、ついにこの日が来てしまった……。

 今日は、お母さんもお父さんもお仕事は休みなので、二人とも来るらしい。私も、来てくれるのは嬉しい……けど、コスプレは見せたくない……なぁ……。

「ねぇ、須浦さんと上宮さんって親来るの?」

「……あっしは……おっかあは……仕事で……来ないから……おっとうが……来る」

「ウチは、上宮さんの逆だよー。パパが仕事だから、ママと……あと、妹が来る」

「あ、妹さんいるんだ。何歳?」

「小1だよー」

 他愛のない話をわちゃわちゃと3人でしていると、いつの間にか髪のセットとメイクが終わっていた。

「……上宮さんすご……」

「めっちゃ綺麗ー! 似合ってるよ、澄瀬さん……!」

「……元の顔が……綺麗だから……メイクが……映えた……」

 上宮さんは、いつもはおとなしくて物静かで、あんまり人前に立つことが好きじゃない子だ。

 でも、こういう裁縫とかメイクとかヘアセットになると目がキラキラ輝く。とっても手先が器用で、家事スキルが家族の中で最も高いらしい。

 そして私は、今回もう一つ上宮さんの得意技を見つけた。

「……上宮さん、お世辞とか人褒めるの得意だね」

 それを言った途端、二人がすんっと虚無の顔になったのがちょっとよくわからなかった。


「——お次は、みんな大好き『ヒルアカ』のヒロイン! 麗日お水子ちゃんー!」

 わーっ、と歓声がホールに響くと同時に、麗日お水子ちゃんに扮した東谷さんが舞台袖から出て来る。

 そして、何かを食べる仕草をして、表情をふにゃっととろけさせた。

「お恵みやぁ~♡」

「お水子ちゃんーーーー‼ 可愛いぃぃぃーーー‼‼」

「こっちゃーん! 可愛いよー‼

「でも「テク」って……「頑張れ!!」って感じで、なんか好きだ。わたし」

 テク、というのは、緑谷滴久(みどりやしずく)という主人公のあだ名らしい。

 ……すごい、めっちゃ堂々としてる、東谷さん。

「東谷こちじゃけぇ! ありがとう、ございました……!」

 わあぁーーっ‼ と、大歓声がホールに満ちた。

 私はうわっ、とそれに気圧されて、ぴょこんと頭を下げてこちらに向かってきた東谷さんに目を向ける。

「こっちゃぁーん、よかったよぉー! 可愛かったー!」

「っほ、ほんと……⁉ よかったぁ……!」

 頬をピンクに上気させて、彼女はにこっと笑った。

 その笑顔がとっても可愛くて、私たちの視線は自然と東谷さんに吸い寄せられる。

「お次はぁ……女の子じゃないかと巷(ウチの中)で噂されている、『殺戮教室』の主人公! 凪くんですっ!」

 うおおおーっ、と、ホールの熱気がまた一つ上がる。

 そして、凪くんのコスプレをした本庄くんが出て来た。

「全部が演技だったなんて、言わせないよ」

「っきゃあぁあぁぁぁーー‼」

「キスしてぇぇぇぇぇーー凪様ぁぁぁぁぁぁーー……‼」

「——殺そうとしたことなんて、ないくせに」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ‼‼」

「かっこいいーーーーーっ‼」

 興奮がホール全体をあつく包んで、顔からたらりと汗が流れた。

「……本庄、響。ありがとうございました」

 素っ気なく挨拶をして、本庄くんはすたすたと私たちの方に向かってくる。

 舞台の電気を背に歩く彼は、とても綺麗だった。

「本庄くん、めちゃよかったよ! キュンキュンしたー!」

「絶対殺戮教室のあの蕗野(ふきの)ちゃんとのキスシーン知ってる子、きゃーってなるよね! してもらいたいー!」

「……どうも」

 ぼそりと呟いて、本庄くんは黙って椅子に座った。

 ……、さて。

 ラストは、私の出番だ。

「ラストは澄瀬さんと三木くんだね……! 頑張れーっ!」

「あおちゃんー、頑張れー」

 須浦さんとゆゆの声援を受けて、私は三木くんのところに行った。

「やりきろうね、澄瀬さん」

 にこりと爽やかな笑みを浮かべて、三木くんがそう私に声を掛けた。

 なので私も、ふっと微笑んで頷く。

「ええ」

「ラストはぁ……二人同時に! かっこよくて、可愛い最高の二人! 『ソートアードオンライン』キリタ&アスカコンビ——!」

「澄瀬さん——いや、アスカ。行こう」

「ええ——キリタ」

 私は、すっと出された三木くんの手を取り、二人で舞台に飛び出した。

 そして、わっと盛り上がった観客席を見ながら——

「俺の命は君のものだ、アスカ」

 そう言って、私のことをぎゅっと抱き締めた。

 きゃあっ、と皆がざわめくのを後目に、私はセリフを言う。

 ……ほんとは嫌なんだけどね、同級生男子とこんなのするとか。月飛くんだったらいいんだけど。

「私も、絶対に君を守る」

 私はふわりと微笑んで、三木くんを抱き締め返した。

 すると——

 一瞬、ホールがしん、として。

 そして、1秒後。

 爆発的に、どぉんっ! と超大歓声が襲った。

 ホールの誰もが歓声をあげて、力いっぱい拍手をしてくれている。

 それがとっても嬉しくて、私は誇らしげに、花が咲くように笑った。

読んでくれて、本当にありがとうございます。

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