15.“ごめん”じゃなくて、“碧”がほしい。
「……落ち着いた?」
しばらくして静かになった僕に、碧音さんが心配そうに声をかけてくれました。その声がやさしくて、また泣きそうになってしまいましたが、ぐっと堪えます。
「……、はい。ありがとう……、ございます……すみませ、」
「謝らないで」
謝ろうとすると、碧音さんはそう強く、僕の言葉を斬るように言いました。
突然のことに、僕は少し狼狽え碧音さんをそろっと見ます。
すると碧音さんは、さっきの厳しい顔をふっと柔らかく崩し、その桜で染めたようなあでやかな紅唇から、打って変わって先ほどのようなやさしい声を出しました。
「謝らないで。月飛くんは全く悪くないんだから。……おかしなこと、言ってもいい?」
「おかしな、こと……?」
僕がオウム返しをすると、碧音さんはうん、と頷き、言いました。
「泣いてくれて、よかった」
「……え、」
「……って、思ってる。おかしなことかも、しれないけど……ずっと、泣けてなかったんでしょ? だから——泣いてくれて、よかった。……あと、ね。私の、前で……初めて、泣いてくれたのが、嬉しくて。私、信頼されてるって思って……嬉しかったの」
「……っ」
あぁ。また、涙が出て来そうです。
僕が、碧音さんのことを信頼していることは事実です。碧音さんは、僕のことを見てくれているから。
でも——そのことを、ただそれだけのことを、嬉しく思ってくれる人がいる。
それだけで、とても幸せで。涙が、出そうです。
僕のことを、ちゃんと想ってくれる——そんな人は、きっと月翔しかいなかった。
碧音さんが、優しいことは知っています。
でも……でも。それでも——
僕は、碧音さんのことを信じたいと思うのです。
「はい。ありがとう、ございます」
「それ」
「ふぇ?」
「敬語。やめなよ。私のことも碧って呼んで。敬語もやめて。……呼び捨てで、私に対してだけはため口が、いい……かな」
「あ……」
僕は、碧音さんのその想いに、ぎゅっと拳を握りました。
そして、ふわっと口元をほころばせて言いました。
「……うん、もちろん。——碧」
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