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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第93話 古典的な戦い

オーストラリア戦線に彗星が流れた。




「こいつは面倒なやつが現れた」




「中華民国軍を頼りすぎました。陣地は突破されましたが人海戦術より遅滞に成功。現在は立て直しを図っているらしく」




「一応は75mm砲で撃破可能ですが、敵戦車も75mm砲を備えており、のっぽと違って装甲も分厚い。背の高さは相変わらずですが」




「こちらの戦車隊が到着するまで数日を要する。それで対抗できるが戦い方は見直さなければならない。それに将兵の士気が下がっては困る」




「周大佐を信じましょう。彼は帝国陸軍の学校に留学して近代戦を身に着けながら中華の歴史に裏打ちされた巧妙な策を得意とします。きっと、どうにかしてくれます」




「我々にできることは精一杯やる。まずは航空隊に支援を要請する。彼らを見殺しにしてはならない」




 オーストラリアの大地を中華民国軍が走破せん。数万の歩兵は荒れ地を踏みしめた。オーストラリアの大地に米軍の姿を確認できて攻撃は難航を予想する。多彩な火器を柔軟に活用した。敵戦車が出現しても高射砲と野砲を即席の対戦車砲に据え遠距離から撃破する。アメリカのM3軽戦車スチュアートとM3中戦車、イギリスが拵えた軽戦車も大差なかった。




 しかし、直近になって対戦車戦闘の被害が増大して陣地の陥落や突破を許す。オーストラリアの軍隊は祖国を守るために奮起した。アメリカの義勇兵たちも友邦のために知恵を絞る。イギリスも紳士をやめて闘志を剝き出しにしてきた。そんな精神論を差し引いてもおかしい。




 米軍の新型戦車が出現した。




「敵戦車は無駄に背が高い。遠方からでもよく見えた。これは明確な弱点となる」




「こちらの対戦車砲が補足しても撃破できません。無駄弾を吐くどころかいたずらに位置を知らせるだけ」




「位置を知らせて注意を引けばよい。それに耐え得る陣地を作ることができる。我らの先祖は一夜にして城砦を建てた」




「おとぎ話です。大佐は現実を見ることができない…」




「今こそ中国の歴史を見せつける。すぐに工兵を集めよ。歩兵も動員して構わんぞ」




 米軍の新型戦車が出現した報告を受け取るまでもない。最前線で戦う者たちは身に染みた。アメリカ人らしいガタイの良さを誇示する背の高さ、肉厚な筋肉である重装甲、腕っぷしの良い大口径砲がバランスよく纏められる。徒党を組んで迫られては威圧感に押し潰された。




 オーストラリアの大地が機甲部隊の運用にちょうど良いことから対戦車の備えは怠らない。57mm以下の対戦車砲(又は速射砲)を歩兵砲に下げた。75mmと88mmの高射砲と野砲を代替に設ける。敵の新型戦車は遠距離から大口径榴弾を叩きつけて陣地を破壊していった。こちらのアウトレンジ砲撃は有効打を与えられずに接近を許して機銃掃射も始まると潰走を余儀なくされる。




 敵の新型戦車を過剰に恐れる部隊が出る中で周袁雷大佐の率いる部隊は違った。彼らは脅威度を測定した上で地帯戦術を展開する。現地で得られる素材をふんだんに使った障害物を設置して迅速な突破を認めなかった。対戦車の地雷や対歩兵のブービートラップを紛れ込ませることで心理的にも抑え付ける。




「ハッキリと言おう。君たちは死の兵士だ。とても近代的な戦い方ではない。しかし、我ら中華民国の歴史に裏打ちされた。暴虐の欧米人を打ち倒すために古典的な戦い方を用いる。これは中国の目覚めを知らせるための戦いだ」




「爆雷と地雷はどれだけもらえますか」




「欲しいだけ与えよう。日本軍から対戦車擲弾投射機を貰ったが、なんとも使い勝手はすこぶる悪い」




「古典的な戦いなんですよね? それなら近代的な火器は要りません」




「すまない。君たちが中国の歴史に刻まれる。周袁雷の名前で約束した」




 周大佐は一計を案じた。




 まずは敵戦車の速攻を妨害するための障害物を数多も構築していった。彼が死地と指定した一帯に木組みの杭やチェコの針鼠モドキを設ける。安価なコンクリートで作成した竜の歯を並べた。その他の造形物を散らす。普通は数週間単位の作業も夜通しの人海戦術で完成させてしまった。中華民国軍は古典的だが有効的な策を次々と講ずる。




 仮に障害物を迂回しようものなら多種多様な人工の地形が阻んだ。歩兵はスイスイと通過できる道なき道も戦車にとっては隘路と立ち塞がる。車長の的確な指示と操縦手の機転が利いてようやく突破できるかどうかだ。戦車隊が無事に突破できる頃には夜に入っている。




 もちろん、無事で返すわけがなかった。




「それでは…別れの時だ。諸君の健闘を祈っている」




 死地のど真ん中に送り込まれる。死の兵士たちは中国式の敬礼で揃えた。手を頭に添えない。片方の拳をもう片方の掌に勢いよく打ち付けてから頭を下げた。指揮官が部下に死にゆくことを強いる。どこの戦場でも見受けられる光景だ。ここだけの契りが存在したことは明記しておきたい。




 いつ敵戦車隊が現れるか不明である以上は敵に来させるだけだ。航空偵察から積極的な反攻の傾向を掴むと絶好の撒き餌として騎兵隊を投じる。適度に暴れてもらった。騎兵隊が暴れ回り敵軍の注目を集める。まさに狙い通りと敵戦車隊が現れて現代の騎兵隊が古代の騎兵隊を追いかけた。




「敵戦車を視認! やはり新型です!」




「なにも動じることはない。周大佐に言われたとおり」




「砲撃開始! 弾を惜しむなぁ! 弾も何も惜しんだものから死ぬと思え!」




「気合の入りようが違います。周袁雷は稀代の軍師のようです」




「軍師を着飾るつもりはない。私はいつも兵士を死に追いやるばかり…」




 75mmと88mmの野砲と高射砲は隠匿する。陣地の前面に旧式化した37mm速射砲と47mm速射砲、57mm榴弾砲を並べた。敵戦車の接近に伴い猛烈な砲撃を浴びせる。まったく有効射程距離に入っていない故に『ドアノッカー』が精々だが大地に生じる煙は派手だ。砲弾直撃時に生じる大なり小なりの衝撃は車内に焦燥感を生じさせる。




「罠にかかったな! トラはウサギに変わったぞ!」




「中国の歴史を知るがいい!」




「大中華万歳!」




 敵戦車は対戦車陣地を破壊しようと反撃の榴弾を放つどころでなかった。足元が不安定なため砲撃姿勢から覚束ない。虎の子である極初期型の砲垂直安定装置は労働を放棄した。無理に前進しようものなら履帯を絡め取られて移動不能に陥ろう。戦車は陸地の王者たる風格の割に一度動けなくなると存外にあっけなかった。




「先にいってくる。お前には譲らんからな」




「あぁ、少し待っていてくれ。なんなら先に飲み始めてもいい」




「また会おう。わが友よ」




「すぐに会える。ここで別れは言わんぞ」




 障害物と障害物の間に中華民国軍の死兵が潜伏する。彼らは大地に蛸壺を掘って偽装を施したり、竜の歯をくり抜いて隠れたり等々から息を潜めた。戦車の車内からの劣悪な視界では暴露できない。至近弾の衝撃波と破片が襲ってこようと動じなかった。そうして戦車が至近距離まで近づいた途端に飛び出して肉弾攻撃を敢行する。先の大戦時ならともかくだ。歩兵携行の対戦車火器が充実した時代において、このような肉弾作戦は常軌を逸するが、中華民国軍の強さとは非常識を真っ当に行える。




「これで道連れだ。もう遅い!」




 ドウン!




 ひと際大きな爆発音が耳をつんざいて鼓膜が破れた。今に鼓膜が破れた方が都合が良い。人間の本能的な恐怖心が和らいだ。戦友が散った現実を冷静に受け止めつつ自身も覚悟を決める。両手に対戦車爆雷を提げて時を好機を待った。敵戦車も罠に嵌ったことを理解して機銃掃射を開始する。




「今行くぞぉ!」




 本当に背の高いことで一方的に視認できた。




 相手が気づいても時すでに遅し。




 いっぱいの力で対戦車地雷を磁力で押し付けてから信管を叩いた。




「これが中華の歴史だ! 思い知れ!」




続く

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