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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第92話 アッツ島航空戦【後】

B-25の一個小隊が島を目指している。爆弾を洋上投棄せずに突っ込む気概は認めてやりたい。みすみす逃すわけにはいかなかった。敵爆撃機の迎撃に出た局地戦闘機(又は重戦闘機)は残存機の追い回しに徹する。P-38が差し違える覚悟で阻んできて追加の戦闘機も高射砲の危険空域に入られては手を出せない。




「まったく撃ち漏らしおってからに…」




「世話が焼けると言いたいが、普段は我々が世話になっており、今こそお返しの時だ」




「こちら観測所。照準連動を完了した。いつでもどうぞ」




「照準連動射撃用意! 一発で仕留める。砲弾はマ砲弾を込める」




「いつになったら当たるかわからない。そんな砲弾を使いますか。敵機はそこまで迫っていますよ」




「当てるんだ」




 島の各地に沿岸砲台を兼任する高射砲陣地が構えられた。日本軍の防空体制は対米戦の教訓から強化が相次いでいる。旧式化した高射砲は即席の野砲や対戦車砲に回した。ドイツ製やアメリカ製などを参考に新型を開発したり、既存のデッド・コピーした物を改良したり、海軍の高角砲を流用したり、等々と火砲から変えていく。




 若き技術者たちが心血を注いで作り上げた。最新型の地対空電探と連動する。電探が得た情報を計算に入れることで精度の底上げに寄与した。計算も短時間で済ませるべく、アナログ式コンピュータが使われる。アリューシャン列島の価値にしては豪勢を極めた。島の地下をくり抜いて専用の発電施設が拵えられる。なんと、夜間爆撃にも対応した。




 島の寒冷や強風、濃霧など過酷な自然環境を鑑みる。砲塔を備える立派な砲台形式を採用した。全面が薄かろうと装甲板に囲われて風雨を凌ぐことができる。長時間の待機状態に耐え得る簡易的な発電機を備えると換気も行われた。非常用の携行糧秣まで保管している。万が一に地上戦と陥って連絡が遮断された。最悪の場合も最期まで戦い抜く。そんな配慮が隅々まで行き届いた。




「ついに来たぞぉ。俺たちの出番が来た。魔砲弾を込めて一発必中を期す。連動は来たか?」




「ちょうど来ました。入力します」




「計算機に異常なし。行けます」




「野倉! お前の腕に任せる。俺はボタンを押すだけに専念するぞ」




「任された」




「十二糎高射砲を舐めるなよ。アメさんや」




 空から見るに小ぶりな砲塔である。内部は機器がギチギチに詰め込まれた。高射砲を運用する成人男性も含めれば窮屈この上ない。潜水艦と並ぶ閉所で恐怖症の者は10分も過ごせなかった。彼らは猛訓練と猛勉強の文武両道を極める兵ばかり。そうでなければだ。アリューシャン列島で生きることは不可能となる。




 高高度の爆撃機を穿つは長砲身の高射砲でも最新型が先行投入された。




 陸軍は海軍の八九式十二糎七高角砲を自軍仕様に直す一環に開発を進める。野戦高射砲に括られるが実質的に固定砲台と機能した。その証拠に高性能電気式計算機と自動装填装置、電動モーターの旋回装置が組み込まれる。大口径の高射砲としては驚異的な速射を確保した。




「仰角40! 意外と近いぞ」




「仰角40まで上げます。巻き込まれないよう」




「装填時に魔砲弾を調整する。敵機高度は約3500だ」




「これまた低空を這ってくる。八糎高射砲が先に撃ちそうな」




「あいつらは魔砲弾を持っちゃいない。俺たちだけの特権を振り上げろ」




「仰角固定!」




「装填開始!」




 12cmの砲弾を人力で込めることは旧態依然の権化と切り捨てる。海軍でも高角砲に自動装填を採用することが主流となった。一定程度の人員と電源を確保できる要塞では自動装填の高射砲が設けられる。自動装填装置の利点は一定間隔で砲撃可能なだけでない。大重量の対空砲弾は砲身を下ろした状態でなければ装填できなかった。一発撃った後に次弾装填と第二射まで長時間を要する。敵機は再装填の間に眼前まで迫った。自動装填装置は機械の力を存分に発揮する。大仰角を確保した状態でも円滑に装填できると同時に信管の調整も行えた。




「まだまだ。ぎりぎりまで引き絞る」




「八糎高射砲が砲撃を開始!」




「低空だから意気揚々と撃ち始める。ちょうど良い。敵機の進路を固定してもらう」




「八糎が撃墜できるかっての。見せてやれ」




「撃て!」




「てぇっ!」




 主力の八糎高射砲が先走ったのか射撃を開始する。ドイツのクルップ社製88mm高射砲を鹵獲とデッドコピーした。かの有名なアハト・アハトとは別物らしい。設計は簡素なため容易に複製できた。簡便なことも相まって主力高射砲に定まる。ほぼ全ての戦地において確認されたが、野戦高射砲の扱いでも野砲や対戦車砲の代替も務め、あまりの使い勝手の良さに独自の改良が施される。高高度を飛翔する爆撃機は届かないが中高度以下は絶大な威力を発揮した。




 彼らが一斉に射撃を開始しても全く動じない。高射砲の対空戦闘は基本的に当たらなかった。とにかく数を稼いで爆撃を阻止できれば御の字と言われる。敵機の撃墜は砲手が豪運の持ち主でなければ難しい。今回も当たらない対空砲弾をやたらに撃った。敵機は爆撃姿勢に入った中で対空砲弾の炸裂に包まれる。これでは下手に動けないはずだ。




「第二射用意! 弾は変えるな!」




「マ砲弾込めます!」




「電探より修正が来ません!」




「まだ荒削りか。勘でやるしかない」




「必要ありません。当たります…絶対に」




 砲手の絶対の自信はどこから芽生えるか。




 答えは対空砲弾のマ砲弾にある。マ砲弾の名称自体は通称だ。正式名称でないが端的で言い易い。己の特性から魔法の砲弾ともてはやされた。実際は碌に命中しないことで「まったく当たらない砲弾」からきている。これらを皮肉も含めて「マ砲弾」と一纏めにした。




 なんら根拠なき自信だが今回は環境が違う。電探と連動してアナログ式コンピューターを介した。料理と通ずるところがあるかもしれない。食材は念入りに下準備しなければ灰汁を出したり、角を立てたり、触感を損なったり、最後の出来栄えに影響した。




 4発の12cmマ砲弾は高初速に乗って曇天を貫徹する。




「どうだ」




「観測所より報告! 直撃しました! 敵機直撃です!」




「落ち着け。直撃は半分正解だがもう半分は不正解だろう」




「はい。B-25の1機は完全に主翼をもがれて墜落し、もう1機は機首が折れて同様に墜落を始め、最後の1機は運よく逃れましたが八糎が止めを刺しました」




「よし!」




「やったぞ! マ砲弾さえあれば勝てる!」




「魔弾の射手。我とえたり」




 砲塔形式の装甲板で覆われる。直接視認することは叶わなかった。島内の無線で監視所兼観測所の報告を待つばかり。有効打を与えられなかった場合に備えて第二射の手筈を整えた。地対空電探が送る情報が遅延した故に手動の勘頼りである。幸いにも、取り越し苦労に終わった。無線は興奮に満ちた声でB-25爆撃機の3機を一挙に撃墜したことを告げる。




 12cmのマ砲弾は飛行中のB-25付近で炸裂した。敵機の周囲一帯に黄燐とゴムの焼夷弾を散らす。米軍の重装甲で鳴らす爆撃機を効率的に破壊した。いかに堅牢な防弾も灼熱の焼夷弾の前にはクズ紙も同然だろうに。B-25は米軍内部でも堅牢で安定性に優れた傑作と評されたが永遠とは続かなかった。




「恐ろしい砲弾を手にしてしまった。これが八糎と七糎半にも広まり、海軍さんが使うようになれば、米軍機はおろか世界中の航空機が近づけない」




「報告書を送りますか?」




「あぁ、一刻も早く量産すべきと綴る。電探連動と電算機の組み合わせは必須だが対空戦闘を一変させるぞ」




「第一号は貰いました。それだけで満足できます」




「我こそが魔弾の射手…」




 島と海に残骸を残す。




続く

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