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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第90話 戦争にハーフタイムはない

「オーストラリアはじきに落ちる。資源をせしめる工作は完了した」




 日米決戦はオーストラリアへ舞台を移したが意外な程に平穏を保っている。オーストラリアの戦いは東部が占めた。首都キャンベラまで道は切り開かれたが積極的な攻勢を慎む。強烈な圧迫を加えて日豪停戦交渉が秘密裏に行われた。アメリカはオーストラリアを助けたい気持ちはやまやまだが海路は完膚なきまで破壊されている。日本海軍の潜水艦とドイツ海軍のUボートが大暴れした。




 日本はオーストラリアに激烈な要求を引っ込める。温和な停戦から対日戦から手を退くように求めた。オーストラリアに展開中の中華民国軍と日本軍はいつでも撤収できると言う。長期的な安全を担保するために鉄と石炭、希少な鉱物の輸出再開を叩きつけた。実質的に英米仏らを裏切ることを強いる。




 あまりにもな要求だが首都キャンベラは丸裸も同然だった。交渉を無碍にした場合は直ぐに鉄槌が振り下ろされる。空軍基地は奪取されて戦略爆撃機が進出した。最近は低空から砲撃と銃撃を加える凶鳥が出現したらしい。市民の不安は爆発の一歩手前だ。これに原住民族の権利を求める運動が重なって混乱は加速する。




「阿南大将が来ていますが…」




「阿南さん? すぐに出る。丁重に迎えなさい」




「承知しました」




 オーストラリアの地図を見ながらニヤニヤしていた。大先輩にして大恩師の阿南さんが来訪する。今日の予定にはないことだが阿南さんは別格と雑務を配下に押し付けた。辻以外の者共も優秀でか不眠不休の日々を送っている。自身は良く寝る生活ができるものの、ストレスとプレッシャーは尋常ではなかった。何よりの証拠として和菓子と洋菓子を問わない。甘味の消費量が爆増して普通は太るところも糖分は全て頭へ送られて悉く消化された。




「石原莞爾は阿漕だ」




「開口一番が阿漕とは光栄極まれます」




「あぁ、褒めている。オーストラリアに中華民国軍をぶつけたのはどういうことだ」




「どうにもこうにも、彼らが戦いたいと言うなら、相応の舞台を用意したに過ぎません。オーストラリアは大陸です。中華民国も大陸です。日本は島国のため大陸の戦い方を欠片しか知りません。それならば大陸の戦い方を数千年の歴史から熟知する者に任せるが手っ取り早い」




「後世に遺恨を残すぞ」




「オーストラリアという国が遺恨だらけではありませんか。原住民族を押しのけて植民により構成されています。今更何を言うのだと言い返しましょう。それに勝てばよろしい」




「お前は恐ろしい男だな」




 阿南大将から「阿漕」と評されることは侮蔑と真反対に光栄を極める。天皇陛下からの忠臣に認められた。元より先輩と後輩の関係で表向きは複雑な関係と見られる。その裏では表の実力者と陰の実力者と棲み分けが図られた。石原莞爾が全般を支配していると見せかけて阿南が裏から手を回している。




「まぁ良い。お前のことだ」




「恐れ入ります」




「それでオーストラリアを落とした後はミッドウェーとハワイを攻めるのか」




「海軍の言いなりは勘弁してください。彼らの言い分は理解できますが大局的には無駄が多すぎる」




「同感だ。ミッドウェーもハワイも占領したとしても維持は到底不可能と下士官でもわかる」




「海軍には海軍の意地がありますので真っ向から否定します」




「否定するのか」




 オーストラリアは中華民国軍に任せた故に当面の間は後方支援に徹した。海軍はミッドウェー島一撃離脱攻撃により一定程度は消耗を強いられる。陸軍はソロモン諸島決戦とオーストラリア上陸に疲弊した。両軍共に打ち合わせの場で約半年は大人しくすることを確認し合う。米軍も大損害を被って再建に長期間を見込んだ。米海軍は両様艦隊法に基づく新鋭空母が続々と揃うまで米陸軍は新鋭機や新型戦車の登場を待機する。




「はい。まったく不要の無策ですから。本年は暫く現状維持に努めます。しかし、イギリスは約束を反故するようで…」




「イギリスはそう言う民族の国だ。舌の枚数が足りん。して、ビルマはどう守る」




「ビルマは守りません。インドを攻めます」




「現状維持は崩れたぞ」




「インドをきっちりと解放します。元よりインドは大東亜を構成しています。これは補強に過ぎません」




「屁理屈を言う…」




「すでにインドの一部を制圧していますから。これに呼応した自由軍が放棄して内側から切り崩す」




 二人の話題はインド方面へ変わった。




 インド方面は日英秘密交渉から英軍の全面的な撤退を約束される。自由インドなど現地勢力が独立を勝ち取るはずだ。しかし、イギリス人は二枚舌を使うことで知られる。インドから撤退したと思われたが本国からの移動が確認された。ドイツ海軍のUボートや仮装巡洋艦の被害数が増大している。これで信憑性は増した。ドイツと連携する道はあり得ないが「敵の敵は味方理論」を適用できよう。欧州情勢に関知せずの中立を上手いこと扱った。




 インドとビルマを結ぶ交渉の要衝は制圧済み。これを奪還に来る可能性が高いと見た。ビルマ防衛に専念することが懸命と言う。石原莞爾は「打って出る」と宣言した。先に矛を収めると言ったばかりにもかかわらず、インド方面に出るとは矛盾を指摘する間もなく、彼は自由インドなど現地勢力の一斉蜂起を示唆する。日本軍は現地勢力の支援に動くだけだ。




「イギリスはアメリカやオーストラリアよりも手ごわい」




「よく理解しています。我々の電撃戦を経験している以上は対策を講じている。制空権の確保に全力を注いでくるでしょう」




「どうするんだ? 勝算はあるのか?」




「ラクシュミー・バーイーを立てれば自ずと兵力は集まります。これを契機にセイロン島や周辺の環礁も制圧して大西洋を睨むことができる。海軍の潜水艦は大西洋に出てアメリカ主要都市を脅かすことが…」




「わかった、わかった」




 彼は天才と称されると同時に話の通じない変人も兼ねる。こちらの聞いたことにズレた回答をすることは日常茶飯事であり、一を聞いただけなのに百と千を返すこともあった。一応の同期たる阿南は石原莞爾という奇人変人を理解して扱い方は熟知の域に達する。




「この作戦には機甲部隊を大々的に投じます。オーストラリアに出られなかった師団が待ってましたと言わんばかりに突貫して食い荒らす」




「例の重戦車に中戦車だな。本当に使えるのか不透明だが任せる」




「ありがとうございます。ぜひとも、阿南閣下は説得に動いていただきたく」




「書面上の同期だからと便利に使いおって」




「申し訳ございません」




 そんな石原莞爾も阿南のことを頼れる兄貴分と認識した。石原は唯一の頭の上がらない人物と尊敬を欠かさない。そのような人物のため対外的な役者と働くことが占めた。海軍と調整することも連絡の士官に任せずない。御自らが出向く程の気概を有した。海軍の好敵手にして犬猿の仲である米内光政を以てして「人間の格が違う」と言わしめる。今日も今日とて、周囲を説得する役割を担わされたが存外と快く思った。




「敵将は掴んでいるようだな」




「はい。敵が情報戦を重視してくれたおかげで掴みやすく。敵将はルイス・マウントバッテンと判明しました。我々における東亜方面軍司令官のような」




「誰を送る」




「誰かを送る前に河辺と牟田口は候補から外しています。私は宮崎繫三郎が適任者と見ています」




「宮崎か。ノモンハンの陰なる功労者を引っ張り出す。よろしい。私の方で友達人事と言わんれように根回しする」




「ありがとうございます」




 ビルマを超えた先のインド方面はどうしてか忸怩たる想いが否めない。




 絶対に成功させるのだ。




 二の舞を演じるな。




続く

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