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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第89話 怪鳥ガンシップ現る

「あれがオーストラリア大陸を焼くってのか。爆弾で事足りるんじゃないのかね」




 たった3機の重爆撃機はポートモレスビーとケアンズを経由してタウンズビルに到着した。オーストラリア上陸作戦は成功して東部三都市を制圧次第に空軍基地を接収して整備すると航空隊を進出させる。米豪軍の逆上陸や反攻に備える格好だが米豪遮断作戦はとっくに完成済みだ。




 米軍はどれだけ物資を送ろうと中継拠点は壊滅したどころか海洋に潜水艦がウヨウヨと遊弋である。それもドイツ海軍Uボートが戦果を水増しせんと勝手に沈めてきた。オーストラリアは大陸のため籠城戦に耐え得る。アメリカの支援がピシャリと封じられる中では心許ないはずだ。




 日本軍もオーストラリア完全制圧は端から放棄する。オーストラリアと単独の停戦ないし休戦という脱落を見込んだ。そのために海軍は特別攻撃隊を動員してゲリラ的な奇襲を繰り返し精神的な圧迫を加える。陸軍は中華民国軍を主力にジワジワと攻め入って継続的に圧力をかけた。




「いわば爆弾は一過性だが砲撃と銃撃は当分は継続的らしい。敵地に打撃を与えつつ市民に恐怖心を植え付けるわけだ」




「嫌なことをする。石原莞爾の親父の差し金だろうよ」




「違いない」




 下手に粘られては消耗を加速させるために短期決着を志向する。オーストラリア政府を揺さぶる材料にビラ撒きの中に「禁忌の毒ガス使用未遂」や「米豪兵の残虐性」を誇張を通して流布した。すでにオーストラリアの対米感情は悪化の一途を辿っている。市民感情が自国政府にも向くように情報戦略を仕掛けた。政府不信を一層も過熱させるべく悪魔の一手が撃ち込まれる。




 重爆撃機は立派な四発機だ。実際に戦略爆撃機を素体に有するが胴体はやけにゴツゴツしている。重爆撃機が戦闘機の迎撃から逃れるために防御火器を充実させることは一般的でも物事には限度が存在した。爆弾の搭載量や燃料タンクの容量、そもそもの重量配分から贅沢は敵と言える。もっとも、双発爆撃機に機銃を満載して護衛機とする試みは各国で存在した。




「空中戦艦だな」




「空中戦艦が敵都市を焼き払う。無慈悲だ」




「戦争に慈悲もクソもないわ。俺の同期はとっくに死んだ」




「あぁ、慈悲を持った方が負けるし死ぬんだろうな」




「俺たちは幸運だ。あいつらは心を捨てて無慈悲に…」




 彼らの見つめる先で巨人機は静かに止まる。




 その見た目に反して華麗な動きに美を見出した。




 搭乗員が下りるなり整備兵が駆け寄って調整が行われる。オーストラリアは今までと環境が大きく異なった。沿岸部は比較的にマシでも砂塵は故障を招致する。オーストラリアと若干似通う中華の大地で試験を行うことで未然の防止を図った。やはり、現地の知見を入れるが吉と見る。日本における大型機の運用は未熟が拭い切れなかった。




 整備兵はエンジンから手入れに入ったが早速と頭を抱えてしまう。当然のように分厚いマニュアルを両手に抱えて睨めっこだ。巨体を飛ばすためのパワーはモンスターでなければならない。重爆撃機を専門にする者ですらため息を連発する程だが大日本の勝利を信じて不休の作業を覚悟した。




「ポートモレスビーから飛んできた。かなり消耗しているはず。なんせ2500馬力の化け物をぶん回している。エンジンは4つじゃないぞ。こいつのエンジンは合計で8つだ」




「そう脅しちゃ作業できんでしょうに。すいませんね。うちの機長は興奮しきりでご迷惑をおかけする」




「あなたが言います? 誰よりも低空飛行を愛する」




「お前だって10cm榴弾砲をぶち当てるとか言ってんじゃないか」




「愉快だよ。俺たちは此奴に選ばれて気分が舞い上がっている。重爆撃機の比じゃないがよろしく頼みたい」




 機長は先までの勢いを損なわずに頭を下げる。整備兵はぽかんとして反応できなかった。すぐに意図を汲み取ると「お任せください」と笑う。なかなか癖の強い面々だが芯は強く通った。航空兵の全員ではない雖も横柄な者は少なからず、こういう特異な機体を操る場合は顕著だが、しっかりと教育が行き届いているようである。




 そして、こういう時は決まって自慢を始めるものだ。




 機長を筆頭にペラペラと語り始めるが仕事の邪魔になる。グルッと見回した末に認めた馴染みの戦闘機乗りに押し付けた。彼は一式軽戦闘機の隼を専門にする生粋の軽戦闘機乗りらしい。隼は爆撃機の護衛に適した長大な航続距離を有する故に爆撃機護衛任務に従事するばかりだ。つい先日も高速爆撃機を護衛中にP-38の迎撃を引き剥がした末に撃墜している。




「俺たちは『阿蘇』って呼んでいるが、まぁ、化け物という言葉が似あうんだ」




「なんでか聞きたいだろう?」




(何も言っていないが乗ってやるのが気遣いってこと)




「まずは胴体下部に10cm軽榴弾砲が1門に始まり、機首に40mm機関砲1門と20mm機関砲2門、右と左に20mm機関砲2門ずつ、後部に13mm連装機銃だぞ!」




(言っちゃうのかい)




「これで敵の空軍基地を焼いてやる。くれぐれも民家に当たらないにな」




(どうだかな。石原莞爾の私兵はドイツの親衛隊と同義だぞ)




 阿蘇と呼ばれる怪鳥は翼を休めて出撃の時を待った。




~翌日~




「スピットファイアが敗れ、フライングフォートレスも無敵神話に終止符が打たれ、敵は首都の眼前まで迫ることができた。ここが落ちれば命脈は完全に断たれる」




 オーストラリアの空軍基地はイギリス製とアメリカ製が占める。イギリスはナチスドイツと決戦に臨む都合で支給を減らした。アメリカ製の戦闘機と爆撃機、飛行艇が代替を為す。イギリス救国の戦闘機であるスピットファイアは早々に日本軍の戦闘機に敗れ去った。アメリカの誇る空飛ぶ要塞は被撃墜数が増加傾向で無敵は崩れている。




 空軍基地が陥落せずとも無力化されれば、オーストラリアは必然的に首都のキャンベラは丸裸同然であり、まるで大阪城の戦いのようだった。それでもP-40とP-38の戦闘機は健在である。B-17だけでなくB-24、A-20、B-25、B-26といった爆撃機は纏まった数で残存した。日中軍が本格的に攻め入ろうものなら存分にお相手いたそう。




「空襲警報! きたかぁ!」




「敵です! 低空から忍び寄ってきたぁ!」




「低空に限らんぞ! 低高度と中高度、高高度の三段構えだ! 敵ながら見事な策であるよ」




 現地の司令官は極めて冷静を維持したまま指示を飛ばした。瓦礫に埋もれるつもりは毛頭もない。副官に促されるままに避難所へ向かった。地下の避難所は通信と指揮の諸機能を備える。仮に基地機能が損なわれても地下から抗戦を訴えてゲリラ戦を展開できた。普段の訓練通りに急いで地下避難所へ向かう途中の通路の壁が突如として崩れてくる。




「敵機がそこまできているのか! 戦闘機は何をしている! ジェームス! ジェームス!」




「ご武運を…」




「ちきしょう! あいつらは…」




 副官は瓦礫の下敷きになっているが彼を助けようとは思わなかった。彼も望んでいないことだが望みは嘲笑の末にかき消される。司令官が見上げる先に巨鳥が飛んだ。幼い頃に母から聞かされる。おとぎ話に出てくる怪鳥と一致した。忌々しき日の丸を刻んだ怪鳥が見下してくる。敵機が低高度を飛行中でも肉眼で正確に知ることは不可能だ。この時ばかりは死の宣告を受けて覚醒したのか将又は不明でもハッキリと1門の大砲がこちらを向いている。




「なんとしてでもキャンベラを守れぇ! これは最後の命令だぁ!」




 オーストラリア首都のキャンベラまで空の道が開かれた。




続く


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