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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第88話 対米決戦必勝策『Z』

~満州飛行機・大工場~




 若き天才技師は国家の威信を賭したプロジェクトに人生を注いだ。




「誉が軌道に乗り始めたばかり、タンデム結合を試すか」




「時間がない。日本が勝利するために四の五の言っていられなかった」




「現実的な22気筒3000馬力でどうにかならんのか」




「大社長は5000馬力堅持で譲らない。石原莞爾の目もある」




 大日本帝国は英米仏蘭etcと戦争状態だが実質的に日米決戦と見る。大東亜に真なる民族自決として「亜細亜の亜細亜による亜細亜のための政治」を確立するために立ち上がった。日本は列強に数えられる強豪国でも超大国の米国を相手に真っ向勝負を挑んではジリ貧が否めない。現在は北方から南方にかけて勝利を重ねるも緒戦のような圧勝は見られなかった。ソロモン諸島に仕掛けた壮大な罠により米軍に痛撃を浴びせた反面に自身も相応の損害を出している。中華民国の助けを得て豪州を脱落させることで時間稼ぎに励んだ。




 日米決戦の事実上の総司令官である。石原莞爾は全てを時間稼ぎに据えた。南方地帯を制圧して希少資源を確保することも長期戦に臨む準備に過ぎない。その表向きは米国内部に厭戦気分を蔓延させて日米講和に持ち込むことだ。米国の情報戦略は流石の一言に収まる。風船宣伝兵器がビラを撒こうとそれ以上に市民に反日を徹底して扇動を許さなかった。石原莞爾は米国の心臓である市民に止めを刺す切り札を求めた末に幻の航空機をぶち上げる。




「三菱さんや日立さん、瓦斯電さん、皆様と国家を挙げている。ありがたいこと、ニッケルやコバルトの希少金属を用いた新合金を住友さんが努力してくれた。これを背にして妥協できますか?」




「どうなんだ。中川さんとやら」




「誉をタンデム結合した36気筒を基本路線に進めます。海軍の種子島さんから新式発動機の資料を貰いましたので同時並行です」




「つまり?」




「新式発動機と従来型の複合で進めます」




「無茶苦茶だぞ」




「欧米人をアッと驚かせるためには無茶苦茶を真面目にやります。2000馬力級を小型かつ軽量に収めました。これで満足しては前に進まない」




 会議場の満州飛行機は日本国内の航空機メーカーの製品を委託製造した。中華民国の工業化推進の一環と行われる。その実際は広大な大地に巨大な工場を建設して秘密兵器の研究と開発を進めた。日本国内では土地が限られる上に労働者の数も足りない。さらに、ドイツやイタリアなど敵国の敵国から亡命を受け入れて技術を入手し易かった。




 中島飛行機を中心にした一大プロジェクトのZ計画が進行中である。同社の中島知久平社長(現会長)の掲げた対米戦必勝策に基づいた。B-17や新型爆撃機(後のB-29又はB-36)を圧倒する超大型爆撃機を開発する。日本から太平洋を越えてアメリカを襲う渡洋爆撃を敢行して講和に持ち込むのだ。石原莞爾の思惑と一致する部分が多い。中島知久平は社長時代に石原莞爾に直談判すると条件付きでも見事に採択を得た。




 石原莞爾は国家の策として中島飛行機に限らせない。好敵手の三菱重工業、飛行艇の経験がある川西飛行機、ドイツと結びついた川崎航空機、その他中小企業の力を終結させた。前代未聞で奇想天外の計画な故に万能な言葉である『挙国一致』を適用する。




「今年中には仕上げてみせます」




「中川に任せる」




 中川良一は天才らしいが非効率な徹夜に突入する。




一週間後




「やぁやぁ、お待たせして申し訳ありません」




「こちらも戦争中で忙しい時にありがとうございます」




 中川は自身の力では無理と早々に理解して素直に周囲に助けを求めた。世界最高峰のエンジンを作るという意思は誰しもが一度は夢見たことがある。ライバルの三菱が自社の試作品を持ち出すぐらいに熱狂した。しかし、更なる外部に助力を要請せざるを得ない。




「中川さんは頑張り屋さんだ。クマがとんでもないことになっていますよ」




「見えますか。お恥ずかしい」




「それだけ努力されている。その努力に見合うかわかりませんが、ジェットではなく、非常に興味深い論文をご用意しました」




「はい。これは?」




「ハンガリーの学者か技術者が考案したものです。私らはターボプロップエンジンと呼んでいます」




「ターボプロップ…」




「なんといいましょう。ジェットではなく、レシプロでもなく、全く新しい」




 彼は軍に協力を求めた。石原莞爾の必勝策である以上は陸軍と海軍の参画はもちろん、全面的な協力は当然と広大な試験場や試験機、パイロットなど融通を利かせる。今日は海軍出身ながら陸軍にも通ずる種子島少佐を訪ねた




 種子島少佐は必勝策に含められた技術系の軍人である。日独連絡の一環に先進技術を吟味して回収する重大な役割を与えられた。特にジェットエンジンとロケットエンジンに注力する。Z計画においては補助機関として活用できないか模索した。中川から助力を求めると「もしかしたら」と資料を取り出す。




「試作品ですが小ぶりな物は空技廠が作成しました。よかったら、持って行ってください。うちじゃお遊び程度ですから」




「ありがとうございます」




「ターボプロップは川西飛行機とH7Y1向けに進めています。どうです。Z機には使えないかもませんが…」




「これは使えますよ」




「まだ読んでいないのに」




 ターボプロップエンジンという新型機関を提示された。ジェットエンジンでもロケットエンジンでもない。従来のレシプロエンジンにも属さなかった。いわゆる、ガスタービンエンジンに括られる。現時点では広く普及していなかった。ハンガリーの企業から生まれるも軍には見向きもされない。種子島少佐が発見すると格安で特許ごと掬い取った。空技廠で独自に研究を進めて永野氏が小型の試作品を製作している。




 ターボプロップエンジンは従来品に比べて環境次第だが低燃費を得られた。大出力を志向する際は小型で軽量、簡便に収まるという利点も有する。低速域では若干不利だが大出力を志向すれば十分に無視できた。ジェットエンジンの爆発力は持たないが圧倒的に効率的である。ちょうど良いところを衝いてきた。とはいえ、まだ浸透し切っていない故に疑問視もできよう。




「そのH7Y1ですが進捗はいかがでしょうか」




「エンジンを除けば順調ですよ。二式飛行艇の改良を兼ねていますから」




「Z機に反映をお願いしても」




「もちろん、部下には全面的に協力するように言っています。仮に渋るようなことがあれば直ぐに仰ってください。私が直々に資料や資材を運搬しましょう」




「何から何まで恐れ入ります。こちらの目途は立っていませんが必ずや実現してみせますので」




「その意気でお願いしますよ。あぁ、忘れるところだった。新型過給機もついでに持って行ってください。部下に手配させます」




 空技廠は時代の最先端を走ると言わんばかりだ。川西飛行機と新型飛行艇を開発中である。ターボプロップエンジンと従来型を贅沢にも同時並行した。ターボプロップが駄目なら従来型に切り替える。




 種子島少佐に会うことに時間を割いてよかった。ガスタービンのブレイクスルーを得られただけでない。空技廠から従来型でも活用できる新型過給機(排気タービン式過給機)の試作品提供、大学を卒業した物理系の派遣など至れり尽くせりの豪華特典が目白押しだ。軍人個人や組織特有の変なプライドから妨害する真似はあり得ない。




「これなら本当に5000馬力を実現できる」




 天才の頭脳が暖機運転から最大出力の運転を開始した。




続く

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