表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/156

第87話 アリューシャンの価値

 アリューシャン列島の価値は薄いはずだ。




「アメ公め。南太平洋で勝てないからとアリューシャンを狙ってきた。ここは絶対に渡してはならない。石原閣下の厳命である」




「すでに航空隊が進出して水平爆撃はもちろん、急降下爆撃、反跳爆撃を構えていました。海軍にも支援を要請したところ、小型潜水艦と小型潜航艇が到着、水雷戦隊が待機しています」




「彼らの世話にはならんぞ。我々には新兵器がある」




「えぇ、こいつを試しましょう」




 日本軍はアリューシャン列島に上陸すると悪天候を承知で飛行場を基幹に要塞化工事を進める。南方に比べて価値が薄い上に事故も多発する環境のため懐疑的な声は多い。石原莞爾の命により進出して死守する以上は手を抜くことは許されなかった。下手な島嶼部に比べて充実した設備と人員が配置される。海軍も北方海域の哨戒に価値を見出して一定程度の戦力を割いた。陸軍の要請に基づいて即応戦力のロ号潜水艦に特殊潜航艇を派遣し、精鋭の水雷戦隊が敵艦隊の迎撃に待機することで盤石を期する。




 陸軍のプライドなのか海軍の世話にはならんと独自の防衛線を構築した。各島は連絡を保つために専用の水道が整備され、仮に寸断された場合も直協が連絡機とピストンする。飛行場は双発爆撃機が丸ごと収まってしまう程の大規模から補助用の小規模を経て一見して何の変哲もない草原の簡易飛行場など数多もあった。海軍の水上機部隊も含めると膨れ上がる。




「念のためということもある。本土に増援を頼んでくれ」




「面倒はかけませんよ」




「なに?」




「こういう時もあると石原閣下が特設空母艦隊を用意してくださりました。緊急輸送も輸送船団を構築して近日中に到着を予定しています」




「船団は新型のユ号こと誘導噴射弾の発射機一式を運搬します。米軍が来るまでに間に合うかは…」




「暇な兵士を動員して工事に当たらせろ」




「承知いたしました」




 アリューシャン列島に固執する理由がわからない。石原莞爾が直々に死守を命じた以上は疑義を挟むことはご法度だ。米軍が攻め込む理由は連敗中に小さな勝利を挟み込むことで国威と士気の回復を狙ったのだろう。アメリカ人というのは意外とメンタルの弱い人種なのだ。日本人の不屈の精神たる大和魂は偉大である。




「暴風が吹こうと構いやしない。ここでアメさんを叩く」




~数日後~




「交代制だ! 3時間おきに入れ替える!」




 アリューシャン列島は自然の脅威に晒された。米軍は下準備とダッチハーバーから爆撃機を飛ばそうと試みる。あいにくの暴風と濃霧の前に中止を強いられた。艦隊も濃霧に遮られて遅滞を重ねている。一方の日本軍は輸送を強行して鬼の居ぬ間に洗濯と言わんばかりに物資を次々と揚陸した。多少の強風や濃霧では怯まずに職人技を披露する。




「いいか! 今日中に完成させねば全員が死ぬ! それどころか内地の家族が脅かされるんだぞ!」




「部屋の中でヌクヌクしている甘ちゃんはいない。大和魂に勝るものなしだ」




「石原閣下は精神論を嫌っていますが」




「ものは使いようだ。私も合理的に動くべきと思っているがな。時には、究極的な非合理的は究極的な合理的を上回る。特に戦争という非常時では常時のことが利かなかった」




「間違いありませんね。現に我々も手伝いを買って出ているわけですから」




「苦楽を共にせんとわからない。手と足を動かさない指揮官は嫌いだ」




 中華統一内戦という現場から叩き上げられた。現地指揮官は精神論を振り上げる。精神論は頻繫に非合法的で酷悪と言われるが、時と場合によることに留意を求められた。日本という国がアメリカやイギリスなど超大国に勝利するためには多少の非合理的や無茶苦茶が求められる。もちろん、上位から下位へ一方的に押し付けるだけでは必ず瓦解が訪れた。したがって、指揮官も一緒に汗水垂らして働くのだが、いくらなんでも過酷な環境が呈され、数時間おきに予備と交代する構えが採られる。




「洋上の友軍も同様だ。この中を突き進んでいる。いつ敵軍と刃を交えるか」




「皆が等しく同じ境遇にある。忘れてはなりません」




「隊長! そんな重い物を持たなくても!」




「ワシを舐めるな! 昔は人力で野砲を運んでいた! この噴進弾の発射機の一つや二つを運んでみせる!」




「無茶せんでください。専門の工兵がいます故に」




「ならん。我々は一心同体だ」




 守備隊の総力を挙げて建設作業に従事した。石原莞爾の肝入りたる日本陸軍の新兵器を組み上げる。島嶼部の防衛に特化した設計が敷かれた。輸送船団が部品ごとに分解と分担する。現地で容易に建てられるよう配慮が行き届いた。それを差し引いても自然の脅威を前に作業は困難を極める。一応でも寒冷地用の工作用車両も動いたが焼け石に水が否めなかった。それでもアメリカを打倒するために一秒も休まずに身体を動かす。




 地上で肉体労働に従事する者がいれば洋上で見えない敵と心理戦を繰り広げる者もいた。アリューシャン列島に増援を送るため輸送船団がピストン輸送である。米軍はこれを阻止せんと最新鋭の潜水艦を贅沢に動員した。南方の防御が固すぎるため北方に獲物を求める。どうにも侮られたようだ。輸送船団は二等駆逐艦と海防艦に護衛される上に対潜哨戒機もいる。




「敵潜水艦を発見!」




「ダメだ! こちらからじゃ撃てない!」




「援軍を要請!」




「対潜哨戒機がいる。ドカッと構えていればいい」




 輸送船団を率いる長は慌てふためく部下と対照的に椅子に座り込んだ。二等駆逐艦と海防艦が全速力で走る光景に緊張を覚える。つい先ほどに探信儀が反応して即座に対潜戦闘に突入した。敵潜水艦の追跡を逃れるための之字航行を放棄してまで速達性を重視したことが裏面に出る。




 敵潜水艦の雷撃を阻止するために向かうが間に合わなかった。敵潜水艦は今にも雷撃しようという。上空に航空機が出現すると即座に急速潜航を始めた。反応が少しずつ遠のき始める。米海軍が最新鋭の潜水艦を動員しようと空の目からは逃れられなかった。




「陸軍の簡易空母から発進した襲撃機だ。対地はもちろんのこと対艦と対潜も行える万能機らしい」




「は、はぁ」




「なに沈める様子を眺めていればいい。回避の構えだけは怠るな」




「はい」




 輸送船団の間接的な護衛に陸軍の簡易空母こと特TL型が展開する。油槽船を基に空母へ簡易的な改造が行われた。最短10か月という短期間で安価に建造できるため大量建造が急がれる。搭載機数は20機弱だが対潜哨戒任務や航空機運搬任務には足りた。今回はありとあらゆる場面に幅広く対応するため万能機の襲撃機を搭載する。陸軍の襲撃機は過酷な環境でも満足に飛べるよう設計された。簡易空母でも何ら問題なく運用できる。




「そら飛び込むぞ」




「緩い角度から対潜爆弾を投下する。鮮やかな手つきです」




「100kg爆弾6発は物足りなく思える。潜水艦が相手には過大と言える」




「アメさんの潜水艦乗りが気の毒に見えます」




「そうだな」




 九九式襲撃機は主翼に100kg爆弾6発を携行した。対地攻撃には不足気味だが潜水艦相手には過大と評価しよう。100kg対潜爆弾は陸用爆弾を素体に感圧信管を備えた。一定の深度まで到達すると炸薬が猛烈な衝撃波を生じさせる。6発も一斉に炸裂した際の破壊力は洒落にならなかった。潜水艦は恐怖の対象になる割に脆弱で7.7mm機銃の掃射を受けるだけで潜航不能に陥る。




「さぁ、どうかな」




「油の混じった水柱です。撃沈できずとも雷撃は不可能に落とし込みました」




「これで暫くは安泰だな。島へ急ごう」




 海面に浮かぶ残骸には目もくれず島々へ急行した。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ