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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第80話 敵艦隊見ゆ

リー艦隊は昼間のうちにソロモン諸島突入を果たした。ガダルカナル島飛行場は未だに使えない代替として改造空母が戦闘機隊を派遣する。一応の防空の傘を携えて突入を果たすと日本軍の撤退を待った。日本海軍の艦隊が出現する可能性も十分にある。これを撃滅した後に輸送船団を襲撃した。




「なんてスコールだ。これでは主砲を撃てんぞ」




「南方の天候は急激に変わります。一時的ですが重巡と駆逐隊の行方が心配です」




「この雨を突っ切ってこれる。日本海軍を侮るな」




「前途多難ですな」




「レーダーはどうなっている!」




「ダメです! まったく効いていません! 島すら判別がつかず!」




「駆逐艦にもレーダーが必要だ。戦艦と巡洋艦に限ってはこうなる」




 リー艦隊は猛烈なスコールに襲われる。南方の天候は急激に変化することで知られた。局所的に短時間の大雨が降ることは日常茶飯事でも予め知ることは不可能である。熟練の海兵を以てしても事前察知は至難の業で勘に頼った。戦艦は巨体を活かせるが石橋を叩いて速度を落としている。重巡洋艦と駆逐艦たちは安定性に欠けて隊列を組むことすらままならなかった。艦隊内で相互に連絡を取り合おうにもスコールが強烈過ぎる。通信の品質は最悪どころか届きすらしなかった。




 敵艦隊の位置を掴むための虎の子であるレーダーも画面にノイズが占める。戦艦たちは最新鋭の機種を積み込んだ。豪雨の中では使い物にならない。重巡洋艦も旧式のレーダーを搭載したが同様の現象に遭遇した。レーダーは大型艦に限定していることに非効率を覚えよう。




「そろそろ終わるはずです。弱まってきました」




「スコールを抜けて直ぐに連絡を取り合え。この状況で乱戦に突入しては洒落にならん」




「やっとこさで抜けます。最悪のフィールドで二度と来たくありません」




「ノーザンプトンが見えます!」




「重巡洋艦は耐え切ったが駆逐隊は厳しい。無理せずに退避もやむを得ない。ハルゼー提督は許してくれる」




 スコールの終わりが見えて切れ目から重巡洋艦のノーザンプトンも姿を現した。戦艦と重巡洋艦は自慢の図体から辛うじて突破する。しかし、華奢な駆逐艦は突破できたのか退避できたのか不明のままだ。リーと幕僚たちは本当に胸をなでおろして安堵する。




「レーダーに反応!」




「よくみろ。あれはサボ島だ。レーダーはあてにならん」




「これだからルーキーは…」




「この環境では致し方あるまい。多少は見逃してやれ」




 レーダーが復旧して直ぐに反応を捉えたがサボ島と訂正した。レーダーが度重なる改良を受けようと信頼性の低さは拭い切れない。リーやハルゼーらは救国の兵器と期待したが現場単位では不信感が残された。レーダーが捉えても見張り員が確認するという二度手間が呈される。




「なんだ? 三本煙突?」




「どうした」




「いや、亡霊を見てしまったようで…」




 見張り員の一人が幻覚を見たらしく両頬をパンパンと叩いた。彼の目にはサボ島からニュっと三本の煙突が生える光景が映る。一本の煙突ならば理解できようが旧式も老齢な三本の煙突は亡霊と認識せざるを得なかった。極度の緊張から大海に沈んだ亡霊艦を勝手に浮かび上がらせる。




「違う…あれは…敵艦! 敵艦だ!」




「くそったれ! こんな時にぃ!」




「進行方向の右側! 2時から3時にかけている! 敵艦が複数隻も!」




「あれは輸送船団じゃないか? 格好の獲物だ。落ち着けよ」




 いいや、見張り員の視覚は狂っていなかった。彼の認めた姿は日本海軍の巡洋艦か駆逐艦と予想したが、中堅は三本の煙突から旧式な老齢艦が高速輸送船に充当され、ガダルカナル島守備隊の収容を目前にしている。こんな激戦地に旧式巡洋艦を投入することは馬鹿げた。米海軍も旧式艦を高速輸送艦に改造する試みを行っている。日本海軍の猿の物真似と判断しても仕方のないことだ。




「日本の輸送船団を撃滅する。敵艦隊の出現に備えよ」




「主砲よりも副砲ですな。5インチの雨を…」




「敵艦隊! 駆逐艦が多数! 高速で接近中!」




「しまった…待ち伏せか!」




「雷撃に備えろ! 速度を落としてロングランスを先行させる!」




 今こそ激突の時ぞ。




~サボ島~




 第二水雷戦隊は米艦隊の動向を注視した。




 サボ島に待ち伏せる。




「敵さんはスコールに突っ込むようですが…」




「偶然だよ。艦隊が意図して突っ込むことはあり得ん。我々ならともかく」




 米艦隊の動きは潜水艦が監視し続けたが追跡は遂に途切れた。イザベル島の水上機部隊が一定範囲を捜索する。スコールに突っ込む直前の敵艦隊を捕捉した。水上機乗りが精鋭と雖もスコールに突っ込み接触を続ける危険は冒せない。水偵の情報提供から敵艦隊の動きを予想した。




 暫くは待機が続くも一計を案じる。水雷戦の切り札と用意された重雷装巡洋艦に一個駆逐隊を付けた上で本隊よりも先行させた。重雷装巡洋艦は旧式軽巡のため特徴的な三本煙突が健在である。敵艦からすれば旧式が立ち塞がる格好も輸送艦と誤認することに期待した。すでに魚雷発射管に空気式の二式魚雷を装填している。




 日本海軍の魚雷は酸素魚雷のはずだ。自他共に認める世界最強も高価でお財布に厳しい。現場は微細な調整に手間取って真っ当に扱うことは熟練を要した。重雷装巡洋艦が数百本単位で抱えるに何かと面倒が多い。田中司令は酸素魚雷の大量投入を疑問詞して空気式魚雷へ変更することを決めた。最新の二式空気式魚雷改を大量に導入している。威力自体は弾頭に高性能爆薬を詰め込むことで大幅に増強された。




「空気式魚雷の雷跡を敢えて見せることにより回避機動を固定させる。北上と大井が二度を時間差で撃ち込む。あとは本隊が食らうだけ」




「空気式魚雷でも使い捨てることは勿体無く感じますが」




「まだ外れると決まったわけではあるまい。40発が4度にわたり迫る光景を想像するんだ」




「1発は当たって欲しい」




「そこは全弾必中よ」




 二水戦は昼間から夕方を朗らかに過ごしたが夜に入って一変する。熟練見張り員が両目を見開いた。艦載の小型電探も電子の目を展開した。島嶼部では島だけでなく岩場にも反応する。旧来の見張り員の肉眼が頼りなのだ。日本海軍の熟練見張り員は如何なる索敵を凌駕する。本当に何もない海上で光源が皆無だろうと肉眼が正確に看破してみせた。




「敵艦隊見ゆ。サウスダコタ級戦艦かノースカロライナ級戦艦」




「やはりスコールを抜けて来た。重雷装巡洋艦と作間隊に突撃を許可する。二水戦本隊は敵艦隊の動きをみる。探照灯や照明弾は撃つな」




「探照灯を使う馬鹿がいますかね」




「わからんから言っておく。自らの位置を暴露するだけの愚行だ」




 敵艦隊を認めてからは非常に素早い。先行する重雷装巡洋艦2隻と作間駆逐隊はサボ島から全速力で飛び出した。敵さんは戦艦3隻と重巡洋艦1隻で駆逐艦の防壁は確認できない。スコールの豪雨を突破できたことを称えて魚雷の贈り物を贈呈した。




「次発は低速で発射する。時間差を設けるんだ。敵の回避先を固定することで本隊が肉薄する好機を提供する。あいにく、北上と大井は貧弱が過ぎて戦えんからな」




「この戦いが終われば輸送艦に改造されてしまう。最後に華を咲かせましょう」




「おうよ。うちの魚雷をたらふく貰いやがれ」




「敵が撃つ前に発射を終えなければならん。魚雷到達は見届けず、一目散に退避するが、戦況次第では肉弾攻撃を敢行する」




 北上と大井は決戦に備えて61cm四連装魚雷発射管を10基も有する。最新の魚雷発射管は次発自動装填装置が追加された。人力で押し込まずとも自動的に装填する画期的を秘める。日本海軍は雷撃の質を磨くことに妥協しないが精鋭でなければ効果的に運用できなかった。米海軍が酸素魚雷の雷撃に散々も苦しめられてきたことを理解する。




「第一波放てぇ!」




続く

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