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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第79話 最後の撤収

=ガダルカナル島西端部=




「もはや抵抗はここまで…」




「玉砕の電文を送り…」




「認めるわけがない。大場隊は最後まで戦い抜いた。その経験を次の戦地で活かす」




 ガダルカナル島に居座りを決めた守備隊は当初の三分の一まで落ち込んだ。それも戦車隊と航空隊は壊滅に等しい。非戦闘員を含め入れた生存兵は大場隊と合流した。大場隊はガ島に精強を鳴らす。ゲリラ戦を専門として米軍を各地で苦しめて回り、指揮官を戦死させるほどの戦果を挙げたが、圧倒的な火力の前に削り取られていった。武器と弾薬も底が見え始めて遂に最後を悟る。




 副官らは栄光ある帝国軍人として突貫を主張した。大場隊長は頑と認めない。彼は自分たちの経験が他の戦場で活きると述べて玉砕を厳しく禁じた。絶望的な状況でもくじけることなく西端部まで到達する。ここまで来れば通信一本で味方の船が来てくれるはずだ。




「我らの兵力と残弾は心もとないが必ず生きて帰ろう。祖国の大地を踏むまでは…」




「敵機ぃ!」




「隠れろ!」




「くそぉ。我が物顔で飛んでいる」




 こうしている間も米軍は戦闘機と爆撃機を飛ばす。まさに掃討作戦を展開してきた。地上部隊は罠の数々と狭隘な地形に阻まれたが航空機は何らの支障なく行動できる。空から一方的に爆弾と銃弾を降らした。大場隊も航空機にやられたことが何度もあり、木と草で編んだ擬装を身に纏い、じっと地面に突っ伏して過ぎるのを待つ。空の目とは意外と当てにならなかった。




「味方の航空機も減り始めて本格的な撤退作戦を感じます。私は祖国に残した両親に会いたいです」




「そうだろう。誰もがそうだ。ここで無駄死にすることは許さん。短距離の通信を使えるか」




「出力が小さいので届くかどうか…」




「やらないよりはましだ。平文で構わない。」




「何と送りましょう」




 第二次世界大戦を語るにスターリングラートの戦いとガダルカナル島の戦いは代表を務めた。スターリングラートに比べて規模は小さいと雖も両軍の死闘は語り尽くせない。日本軍守備隊の計画的な後退と自爆、数々の罠は米豪軍を苦しめた。一方の日本軍守備隊も特殊攻撃が採用されて多くの兵士が散っている。史実ほどでないにしろ凄惨は否定できなかった。




「いつ来るか。気長に待とうじゃないか」




~翌日~




 地獄のガ島から1日でも早く解放する。




「ガダルカナル島の守備隊は限界を迎えた。我々は1時間で総員を回収する」




「大淀の仕事が撤収作戦の旗艦とは冗談じゃありませんよ。駆逐艦は魚雷を捨てた」




「輸送船のお守りなんて」




「不服な者は船を降りよ。私一人でも向かう」




 地図に乗るかどうかな小規模な環礁に小振りな艦隊が通信を受け取った。彼らはガダルカナル島などソロモン諸島からの最終的な撤収を担当する。今までは制海権と制空権を確立した中で行われた。今回はどちらもあやふやな中で強行する羽目に陥る。旧式駆逐艦を改造した高速輸送艦が最速で突っ込み、護衛の軽巡洋艦と駆逐艦も可能な限りで収容し、1日どころか1時間で作業を完了するという無理難題を抱いた。




 これに木村昌福少将の水雷戦隊が充当される。最新鋭の大淀型軽巡洋艦を旗艦に据えた最初に撤収作戦は士気を損なった。せっかくの大型軽巡洋艦が陸軍を収容して輸送艦のお守りに愚痴が止まらない。彼らは栄光ある水雷戦隊であるのだ。敵艦隊と差し違えることが一番である。艦隊型駆逐艦が魚雷を下ろしてまで兵士を収容することに納得がいかなかった。




 しかし、木村少将は「一兵たりとも見捨てない」と意思を固める。ガダルカナル島の地獄は想像以上だ。彼らが戦っている間も海上で楽しくできるのはソロモン諸島守備隊の奮闘によるところが大きい。彼らのおかげでトラックなど外洋拠点は安泰を享受した。今度は自分たちが助ける番と言わんばかり。地図と睨めっこして天候の情報を取り寄せた。撤収作戦に失敗は許されないことを行動で示している。




「高速輸送艦4隻を軽巡大淀に駆逐艦6隻で護衛するが大場隊の収容に積極的である。どうやら最近は局所的なスコールが多発して航空機も真っ当に飛べなかった。米軍の蜘蛛の巣を突破することは十分に可能と見積もっている」




「レーダーはいかがなさいますか」




「スコールでは電波は攪乱されて効果を減じられる。我々は日本海の荒波を乗り越えてきた。操艦の技量は負けていない」




「ガ島撤収作戦が技量の見せ所ってわけですかい。アメさんに悟られずに忍び込む」




「そうかもしれないな」




 艦隊旗艦を務めるは大淀だが不相応な役回りだ。不満が出ることはやむを得ない。大淀は艦隊旗艦を務めることを前提に設計された。それも連合艦隊の旗艦を代理できる能力が要求された故に豪勢を極める。海軍の艦隊に限らず陸軍と連携するためにも指揮通信能力は戦艦に匹敵した。主砲は10cm連装高角砲を多数と防空を重視して対艦は二の次と思われようが砲門と速射が猛威を振るう。




 大淀の指揮通信能力は連携を緊密にするにうってつけだ。ガ島の残存兵力が貧弱な通信装備を駆使して助けを求めることを聞き逃しては生涯の恥と知れ。今も劣悪な環境下で懸命に生きた。誰が見捨てることができようかと絶対に救い出す。




「万が一に遭遇した場合は?」




「一度は退避する素振りを見せるが機を見て再突入する」




「おひげの司令官は以外にも諦めを知りませんから」




「二度と来られん。一度きりに賭けた」




「そりゃそうです。何度もやり直せると思っては緩んでしまう」




「仕方がありません。今だけは戦闘を避けましょう」




 大淀だけでなく艦隊型駆逐艦も高い技量を有して精強を誇った。彼らは日本海の荒れ狂う波を踏破している。ソロモン諸島の局所的なスコールは甘ったるいと笑った。米艦隊が渋るような悪天候を味方の隠れ蓑にして突入する。敵味方は電探ことレーダーという切り札を有した。悪天候の中では使い物にならない。どれだけ完璧な包囲網を敷こうとも綻びはどこかに存在した。木村少将は僅かな綻びも見逃さずに突っ込む。




「水偵を事前に飛ばして一方的でも要請を送っては?野淵は台風の中でも飛行できます」




「武器を捨てよ。全くの空っぽであれ」




「水偵に手紙を持参させます。金属の筒にでも入れておけば伝えることは」




「そうしよう。野淵には何時でも飛べるように言っておけ」




「零式水偵で拾い上げるかもしれませんよ」




「それはそれで構わない。誰一人と残すな」




 いつの間にか肯定的な空気に変わると水偵の投入まで浮上した。大淀の野淵という水偵乗りは命知らずと知られる。彼の豪雨の中を突っ切るような度胸に期待した。一方的でも現地守備隊とコンタクトを取れないか模索する。いきなり訪れても向こうが言う通りに動いてくれるか不透明だ。これまで生き延びて来た者達だから理解してくれると信じて到底受け入れがたい要請を込める。




「小銃も拳銃も弾の一発も捨てよ。兵士の命はいかなる砲よりも重かった」




「一昔前ならば陛下より賜りし小銃を捨てるとは言語道断と言われます。命よりも大事と言って」




「石原莞爾が変えてしまった。良い方に変えている。酒の席で仲の良い陸軍さんに戦陣訓を教えてもらったが合理的の塊だ。海軍軍人よりも柔軟で目から鱗が落ちる」




「それほどですか。あいつはいけ好かないので」




「私も全てを肯定するまではいかないが認める所もあろう。今は石原莞爾の柔軟さに感謝した」




 現地守備隊には酷な話であるが物の一切合切を捨てた裸同然で来るようにお願いした。一時間と言う短時間に完了するためには武器すら重荷と化す。本来は諸般の事情から持ち帰ることが好ましいが、一人でも多く収容するために嵩張る物は認められなかった。これが昔ならば自決を強要されるが現在は戦陣訓から柔軟さを得ている。




「さぁ、行こうか。彼らが待っている」




続く

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