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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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141/156

第141話 富嶽飛ぶ

=北海道・厚岸町=




 北国の厚岸町は漁師町でのどかな町のはずが軍が開発を行った。内陸部を開拓して重機が動き回り飛行場があれよあれよと完成している。鉄道を用いた大量輸送と釧路からの海運が使えるため基地建設は比較的に容易だった。そうして基地が建設されるが異常に厳重な警備が敷かれている。飛行場も恐ろしく巨大と見えた。なんでこんな田舎町にと住民は首を傾げる。しかし、軍に首を突っ込まないが安全であり、補償金が支払われ、軍関係の注文が入って潤った。




「やっと寒さが消えて暖かさが出てきました。富嶽が飛ぶに絶好の日です」




「試験は終えているのだろう。何も不安はない。エンジンの換装も完了した」




「極初期型の初期生産がたったの5機です。シアトルのボーイング社工場を爆撃する。いかほどの損害を与えられるかではなく十分に届くかどうかですな」




「第114飛行隊がアリューシャンから往復爆撃に成功した。そこは問題ない。正規量産型が登場すれば西海岸を焼き尽くすことになるだろう」




「待ち遠しいですな」




「富嶽…その姿に相応しい」




 空の士官らしき男は眩しそうに目を細める。その先には世界最大の巨人機が鎮座した。それは規格外の六発機である。日本軍が運用する航空機で最大は鹵獲B-17や深山輸送機、連山爆撃機の四発機が限界だった。他国においても六発機は少ない。その中で大型機開発は遅れを取っていた。非合法的手段を用いてでも世界に追いつき追い越せと努力を重ねる。そして、ついに超重爆撃機たる六発の『富嶽』が誕生した。




 中島知久平社長(現会長)の対米戦必勝策に基づいて挙国一致政策も加わる。陸軍と海軍はもちろん、民間企業、大学が一体となって開発を推進した。その開発は前途多難の連続で頓挫しかける。諜報員が排気タービン式過給機を手に入れたり、ドイツから技術者を招聘したり、種子島少佐がジェットの副産物を持ってきたり、など各員の不断の努力が完成にこぎつけた。




「出てきましたな。贅沢に自動車です」




「そう目くじらをたてんでよい。ただでさえ精鋭な中でも粒ぞろいを選抜した。敵地に不時着した際は切り込みを行う覚悟の勇姿である。本来は不条理な絨毯爆撃を難なく行えた」




「失礼いたしました。評価を正します」




「あぁ」




 その巨人機へ自動車が走る。迎撃機の緊急発進でなければ燃料節約から自動車の運搬は行わなかった。搭乗員は駆け足で向かうべしである。富嶽を操る者達は陸海軍の中から選りすぐりの粒ぞろいを振るいにかけた。帝国軍人の誉と教育を受けて修了している。最悪は敵地に降り立ってゲリラ戦を仕掛ける覚悟を有した。そのような勇士に走れと言うことはとてもできない。




「エンジンが始動します。ターボプロップなので特徴的な音です」




「ほう、耳を澄ませようか」




「是非とも」




「離陸にはロケットを用いますのでお気を付けください」




「わかっている」




 栄えある出撃だが式典は開かれずひっそりと粛々と進められた。流れ作業とスムーズに発進準備が行われてエンジンが始動する。富嶽のエンジンは『栄寿』というターボプロップのため、一般的なレシプロの星形エンジンとは明確に異なった。キーンと金属音が聞こえる。これは1基あたり5000馬力を発揮する怪物エンジンだ。しかし、巨体を飛ばすには困難が残る。離陸補助に使い捨てロケットことRATOを使用した。




 外からわかるように機体全身に機銃が備えられている。空気抵抗を意識した形状に20mmの連装と単装の機銃が張り巡らされた。二式大艇の配置を参考に死角を生じない。さらに、遠隔操作式を採用することで銃手は安全に射撃できて簡易的な射撃指揮装置により精度も高めた。その気になれば富嶽が敵爆撃機を迎撃することもできよう。




「あの巨体に20トンの爆弾を積んでいますが軽やかですね」




「それは中島の技術力だ。細かいことは分からんが画期的なフラップと補助翼を持つ」




「たしかドイツの博士から頂いたと」




「非対称機の匠だが設計は大いに参考になる」




「持つべきものは友ですか」




「そうかもな」




「飛びますよ! ロケットでぶっ飛ばします!」




 たった5機の連続離陸だが壮観なもので瞬きは厳禁と言われた。ターボプロップ特有の甲高い音を吹き飛ばすようにロケットが点火される。ロケットは外気に左右されず常に最大出力を発揮できた。富嶽の巨体をグングンと引っ張るが、さすがにの話であり、通常は少量で事足りるところ多量もつける。いかにロケットの価格が安いと雖も塵も積もれば山となった。飛行場の滑走路は十分に用意されたが短距離で短時間に離陸することが最善である。




 極初期型の先行生産型と謙遜する割に勇ましい発進だった。巨体に20トンもの陸用爆弾を積み込んで向かう先はシアトルのボーイング社工場である。石原莞爾が掴んだ情報によるとボーイング社は新型爆撃機を開発中で対日戦に用いる予定なのだ。これを早々に潰したいがアメリカの全メーカーを動員しているらしい。ひとまず中心部のボーイング社を叩いて地帯を強いるのだ。




 20トンもの爆弾を積み込むと機体重量は恐ろしい数値になる。5000馬力エンジンが6発でも足りなかった。出力を増強する以前に軽量化を試みる。機体素材は超々ジュラルミンの改良型を採用して波板構造で強度を確保した。特に車輪が大型化して重荷となり、途中で放棄して軽量化を図る方針だったが、小型車輪を大量に複列にする構造が考案される。これは極めて優秀で軽量ながら富嶽を支えることができた。




「行ったか」




「お気を付けください。ロケットが落ちてきます」




「再利用できたら経済的なんだがな」




「再利用できるようにする。それ自体は可能ですが、むしろ価格が嵩んでしまい、結局は使い捨てが一番でした」




「難しいな。物を作るのは」




「まったくです」




 それはあまりにも静かな旅立ちで寂しさを覚える。しかし、整備員たちは揉みくちゃなって喜んでいた。彼らが日夜手入れしてきた巨人機が飛んだのである。それも世界初のアメリカ合衆国戦略爆撃だ。アメリカに目にもの見せてやれと豪快に笑っている。極初期型のため不具合が多発してエンジンの換装も挟まれて大変な日々を送った。内地で空襲にさらされる恐れはなくて命は安全でも多忙どころでない。それでも充実感はひとしおだった。




「高度1万のジェット気流にのれば明日早朝には到達できます」




「風船が到達するんだから大丈夫だろうよ。その風船も最近は武装化を考えているようだ」




「宣伝から本当の兵器へ」




「それだけルーズベルトが強情だが、奴のルーズなベルトを引きずりおろし、恥を晒してやろうか」




 副官らしき男はポカンとしている。士官は副官を置いていくように粗末な建物へ戻って行った。この作戦が終わるまで緊張は解けないだろう。たった5機とたった60名の作戦は日米決戦はおろか世界史を一変させた。アメリカ合衆国の直接攻撃は数度か行われている。宣伝にはなるが風船兵器は数千単位で着弾してビラを撒き散らした。先のトラック海戦の詳細も知らせることで軍と政府に対する不安を起こす。これをたかだか風船と侮ることなかれ、人の手を介さずに太平洋を横断し、ちゃんとアメリカに到達した。今現在は倫理の観点から宣伝に収めたが、その気になれば爆弾を括りつけられ、病原体を入れた細菌兵器にも変わる。これに富嶽のシアトル爆撃が加わり市民の怒りは最高潮に達するはずだ。




 ルーズベルト大統領の戦時中を盾にした強権も通用しない。大統領から引きずり降ろされることを回避するために対ドイツに集中して対日戦停戦の現実味が増した。そして、歴史的な日米講和から太平洋の安寧が取り戻せる。白人至上主義による統治が終焉を迎える時だ。




「何をしている。カキのかんかん焼きが待ってるぞ」




「はい! 行きます!」




富嶽よ飛べ。




続く

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