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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第140話 陸海軍トップ会談

普通は実現しない陸軍と海軍のタイマンと言うべきトップ会談が行われた。陸軍側の代表格たる阿南惟幾と海軍側の代表格たる米内光政が対面する。両者は陸海軍共が全会一致の不仲と知られた。




「お互い苦労しているようですなぁ」




「えぇ、よく苦労しています」




「今日ばかりはお互い様です。進めましょう」




「はい。そうしましょう」




 いつもは犬猿の仲で互いに「名前を出すだけも不愉快」と言うが最終的なところは一致している。日本の真なる勝利とアジア太平洋地域の独立だ。前大戦では認められなかったアジア地域の自主自立を認めさせる。そのために陸海軍規格統一に代表される親和を続けてきた。現場単位では意外と仲は悪くない。むしろ、上層部の不和により最前線の将兵が疲弊した。そんなことがあってはならない。陸軍は石原莞爾が大鉈を振るう。海軍でも仲介役の中将級中心に交流が広まっていった。最後は両名なのだが、どこか、仲が良さそうにも見えてしまう。




「海軍のお仕事お連れ様でした。トラックは守られましたか」




「戦艦3隻を撃沈し3隻も大破に追い込みましたが被害は無視できない。当面は動けません」




「陸軍も動く予定はございません。このままがよろしい」




「ただ、アメリカをビックリさせないと講和は難しい。石原莞爾…奴の策はいかに」




「さぁ、それは私もわかりかねます。いや、わかってはいけない」




「なるほど、実に石原らしい」




「えぇ、本当に」




 非公式の会談だが日本の行く末を決めるものだ。厳粛に行われることが当然の中で颯爽と日本酒が登場する。腹を割った話し合いとはアルコールが求められた。素面であるが故に話せないことがある。このために特製の純米大吟醸がふるまわれた。良い酒と良い肴があって成立する。トクトクと注ぎ合って乾杯した。




「アメリカはどうですか。動けますか」




「いやぁ、まともに動けんでしょう。あれだけコテンパンにされては…」




「我が国の数十倍のパワーです。半年後には再び来るのではありませんか」




「こさせませんよ。そこは陸軍に任せていただきたい」




「情報戦…お願いします」




「まず我々が仕掛けずとも、イギリスとフランスが黙っちゃいない。彼らはノルマンディーに上陸したいと言っています。アメリカの支援なくして決行できなかった」




 直近の海戦は本当にひどい。米海軍はアイオワ級戦艦1隻とサウスダコタ級戦艦2隻を喪失して残りも大破という史上最悪の損害を被った。空母もエセックス級とインディペンデンス級、護衛空母を沈められ、ベテランからルーキーまで人員をゴッソリと抜け落ちる。日本海軍も陸奥と駆逐艦多数を失って航空機も数百機単位で失ったが、搭乗員は救助されて人的な被害は抑えられ、兵器は作れるため何とか戦えそうだ。




 とはいえ、日本とアメリカの国力の差は数十倍に達する。日本が1を作るとアメリカは30を作ってきた。長期化すると差が著しく広がって不利になるという見方が一般的である。先述の通り、大海戦から双方とも約1年はまともに動けないことが報告された。幸いにも、日本は防御に徹すればよい。




「ドイツに漏らすのですか?」




「はい。あえて長引かせることで矢先をドイツに向けさせる。例の最終兵器もドイツに仕向けさせたい」




「阿漕な」




「褒め言葉と受け止めます」




 アメリカがリベンジを仕掛けてくれば弾き返せるかわからなかった。二度と同じ手は通用しない。噴進弾の存在やジェット機、夜間雷撃など秘密兵器は出し尽くした。まだまだ研究中の兵器もあるが出し尽くしは否定できない。これ以上は間に合わなかった。したがって、早期に停戦から講和に持ち込みたい。アメリカのルーズベルト大統領は勝利に執着にした。体調不良の不安が囁かれるも対日戦の勝利を訴えて止まらない。




 ここで情報戦を仕掛けた。石原莞爾が直接管理する情報部門は最新にして詳細な情報を入手している。それはイギリスとフランスはナチス・ドイツを崩すべく、ノルマンディーへの上陸作戦を考えている旨の機密であり、これを敢えてドイツに流そうと言うのだ。ドイツが粘れば粘るほどにアメリカは二正面の大規模作戦を強いられる。イギリスとフランスはアメリカの背中を突っついた。ルーズベルト大統領も野党や市民から追及されて諦めるかもしれない。




 ちなみにであるが、ノルマンディー上陸作戦の察知はイギリス軍の兵器試験から掴んだ。なんだか、よくわからない、ロケット式車輪爆弾の試験は欺瞞情報への誘導と看破する。あのイギリスがポンコツのような兵器を作るわけがなかった。これは紛れもないブラフである。




「ソビエト連邦は?」




「国境線から兵隊が一層も退きました。ドイツを先に殲滅するために」




「ソビエト連邦も大日本帝国も敵は別です。ここで争う意味がない。今のうちにアメリカを落とさねば…」




「石原莞爾は言っていました。ある都市を燃やすと」




「都市?」




「はい。ロスアラモスと…」




「どこだ? 聞いたことがない」




 海軍軍人のため大陸の地理に疎いことは仕方がなかった。阿南も石原莞爾から知らされるまで存在すら把握していない。あいにく、酒の席に大きな地図は持ち合わせておらず、やむく頭の中で地図を広げてもらうが、それでも位置は曖昧だった。




 ロスアラモスとはアメリカ合衆国南部のニューメキシコ州に所属する。メサという荒野の台地に町が築かれていた。アメリカの田舎町という平和な土地のはずが、やけに食料と水の流入量が多く、人口も一時的に爆発的な増加を見せている。何か工場でも建設されたと見る程度では素人だった。アメリカがどれだけ情報を絞っても食料品の流入は隠せない。




「私も石原から知らされたのですが、ロスアラモスに秘密研究所があり、そこで世界終末の最終兵器が開発されている」




「と言いますと?」




「一発で都市が消え去る程の威力を秘めた爆弾です。さらに周囲一帯に毒素を撒いて二次的な三次的な被害も誘発する」




「なんと…」




「艦隊であれば連合艦隊はおろか数個艦隊が消えます。トラック島は丸ごと消え去る」




「噂には聞いていましたが…」




「それを一時的にでも断つことができれば講和に応じざるを得なくなるはず」




 酒を入れた中で話す内容でなかった。本人たちが最も理解している。阿南も米内も黙りこくった。そのような情報を石原莞爾が握り込んでいることを問い詰めたいが余裕がない。阿南はいかにも重そうに口を開くが上手い役者だ。




「この作戦を成功させるため、海軍に陽動作戦をお願いしたく」




「やりましょう。山本がハワイ攻撃を再びと言っているらしく」




「再び何も廃案に追い込みましたが、まぁ、ハワイでは弱すぎる」




「やるなら徹底的にやらねば…」




「パナマ運河攻撃行きますか?」




「行くしかない。それこそ物理的にドイツに向けさせられた」




 今の日本海軍に五体満足で行動可能な戦力は少ないがゼロとはならない。山口多聞の由緒正しい空母機動部隊はすべて健在な上に新造の超ド級空母が間に合った。これらを率いてハワイではなくパナマ運河を攻撃する。パナマ運河は大西洋と太平洋を短絡した。軍事的には米海軍の艦艇は大半が東海岸で生まれる。太平洋に出るためには必ず通った。ここを封じられると危険なドレーク海峡を通らなければならない。仮に封鎖することができれば物理的にドイツに仕向けることができて講和は現実味を帯びた。




 もっとも、そんな拠点なため運河自体が要塞化されている。運河付近には大規模な陸軍航空隊基地とレーダーサイトが整備された。潜水艦の侵入に備えた海軍基地の支所も置かれる。山口艦隊を投入しても成功は困難と言わざるを得なかった。アメリカのプライドをへし折るための特大作戦に係る陽動作戦が精一杯だろう。それで十分でルーズベルトを引きずり下ろすに足りた。




「ともかく、この平穏は大切にしませんと」




「同意します」




 一升瓶があっという間に空となる。




続く

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