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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第139話 激闘を終えても

=トラック島=




 トラック島の被害は艦隊に比べれば遥かに軽微だった。停泊中の警戒艇や哨戒艇が沈められて一部施設が破壊されている。しかし、主力の飛行場は健在で港湾施設も大半が使用できた。工作艦を派遣してもらえれば応急修理も可能である。大海戦を終えた艦隊を収容して傷病者の手当や補給など処理に大忙しだった。




「もう勘弁してください」




「ハハハ! すまん。大和でなければ死んでいたな。陸奥には悪いことをしたが何とか勝つことができたよ」




「これでアメリカは1年間は動けません。大西洋に割く戦力すらなくなった」




「わが方も同じだ。山口多聞の艦隊は良いが角田がやられた。雲竜型で穴埋めは利くが二度同じことはできない。ハワイを脅かしてやりたいが石原さんと相談せんとなぁ」




「本土に閉じこもっていてください」




 大和と長門、金剛型の大艦隊が戻って来るなり、古賀峰一は自ら短艇に乗り込み、迎えに向かう。山本五十六とは旧知の仲で親友に等しく無事を切に祈っていた。まさか夜戦に突入するとは思わない。トラック島よりも優先して情報を集めた。特に負傷しておらず元気そうでホッとしたが被害は想像以上である。




 史上初にして最後の戦艦決戦は日本の辛勝に終わった。山本艦隊は陸奥が爆沈して失われている。長門と大和は中破という判定が与えられた。駆逐艦も大なり小なり損害を被る。長門は中破というが二番砲塔が射撃不可、高角砲と機銃はほぼ全損、機関不調など大破に近かった。大和は主要区画こそ無事であるが水上機設備は全損、高角砲と高角機銃は長門同様に酷く、電探も破損して丸ごと交換を予定する。敵艦隊を左右から挟撃した金剛型は大した被害なく大和と長門を守るように航行した。




 本格的な修理は内地の横須賀や佐世保など大型船渠でなければ困難と見積もる。トラック島では傷病者の受け入れと燃料の補給など簡易的に済ませた。応急修理は工作艦を呼んでから。すでに明石や遼寧、大連の派遣を要請した。特急便をお願いしているため明日には到着する。




「それでどうなりましたか」




「サウスダコタ級戦艦2隻は確実に沈めている。アイオワ級戦艦は取り逃がしたな…」




「それならばご安心ください。潜水艦に追撃を命じました。トラック島に余剰がおりましたので」




「気が利くな。独断は不問とする」




「ありがとうございます」




「まぁ、無理に追撃せずとも構わん。どうなっているか。それだけ把握できば御の字だ」




 空母機動部隊決戦は直接に聞けていないため不透明だが勝利は間違いなかった。角田艦隊と山口艦隊の包囲により敵空母艦隊は離脱を始める。基地航空隊や巡航噴進弾、特殊潜航艇という総力戦により大打撃を与えた。正規空母複数隻の撃沈確実である。角田艦隊が夜戦に入ったと聞き仰天した。空母同士の砲撃戦で更に沈めている。その代償は大きく翔鶴が大破と大炎上から収まらなかった。やむなく、撃沈処分としている。瑞鶴は中破して長期離脱を見込んだ。大鳳と白鳳は健在だが艦載機を多く失って補充を求める。




 山口艦隊は角田艦隊の突貫のおかげで特段の被害なく終えた。艦載機を失ったが艦艇と人員に被害は少ない。補給さえ済ませれば再出撃できた。ハワイに戻る艦隊を追撃すると言い出す。それは潜水艦に任せて休養を命じた。トラック島に帰投中の潜水艦に緊急出動を命じている。これは古賀の独断だが今回は不問とされた。




「海軍の仕事は終わりでしょうか」




「いや、まだ残っている。アメリカが諦めるとは考えられん。まだ足りなかった」




「しぶといですな…」




「あぁ。しかし、駒が無いわけでもあるまい。大和型戦艦を空母にした超弩級空母が待機した」




「はい。ただ投じるのは時機を見ませんと」




「もちろんだ」




 一連の戦いを経て日米海軍は主力級に大穴が生じる。日本は狭い国土で一生懸命に修理するが、アメリカは広大な国土で大量建造を続けており、エセックス級の残りや護衛空母が待機した。日本も超弩級空母を用意したが数的不利は変わらない。一見して苦境に入るようだ。いいや、アメリカは特有の問題に直面している。アメリカは太平洋戦線と並行して大西洋戦線ないしヨーロッパ戦線を見た。ナチス・ドイツとの戦いはソ連が押し込んでいるため進みそう。大西洋を介しているため海上移動が必須だった。さらに、フランスやオランダの解放が急がれる。空母と戦艦、巡洋艦、駆逐艦が無くては進められなかった。この戦いで主力級が多く失われて修理もある。新造艦だけで戦うこともできなかった。解放は大幅な遅延が見込まれて立場は危うくある。現にイギリスは日本と単独停戦からドイツ打倒に集中した。




「しばらくは落ち着いていられる。その間で懸命に考えよう」




「はい。そうしてください」




「世話になるよ。風呂に入りたい」




「かしこまりました。大浴場を開けます」




「兵士も入れるようにしてくれるか。頼みたい」




「わかっていますよ。言われなくても、準備はしておりました」




 とはいえ、大仕事を終えて疲弊し切って日本人の心と風呂に入ろう。トラック温泉という大浴場を整備しておいた。将校はもちろん水兵まで皆が汚れと疲れを洗い流す。風呂に階位は関係なく平等に与えられた。




「それじゃ、一風呂浴びて来る」




「お気を付けて」




 勝利後の風呂は格別間違いなし。




 それはさておき、海戦の結果を問わず、本土は非常に忙しそうだった。特に群馬県の中島飛行機は軍から納入を急ぐように言われている。日本らしい無茶な要求だが、相応に資金を増額されて人員も確保でき、国家を挙げて厚遇してもらっている以上、まったく文句を言えなかった。それに自社の会長も必勝策を建前に掲げて本音は戦後世界で大型機を支配することを仄めかす。




 したがって、昼夜問わず研究と開発、試験、製造、改良に明け暮れた。これに携わる者達は缶詰め状態で疲弊し切っているが満足気である。なぜなら、本日ついに真っ当なエンジンが出来上がった。規格外の超大型機を飛ばすだけでなく、高度1万メートルでも出力を損なわず、低燃費で大出力という無理難題に応える。そのために寿命を燃やしてきた。




 世界最高峰のエンジンたる『栄寿』が生まれる。




「ついにできた。あとは量産体制に入るだけだが…」




「本社の限定生産に絞り、誉などは満州飛行機に委託しましょう」




「そうだな。それが良い。誉は傑作だが進化は速すぎる。これからはジェットだ…」




「まぁ、富嶽みたいな大型機はターボプロップですよ。しばらくは活躍できます。民生用にデチューンすれば国際線の旅客機に使えますから」




「あぁ。種子島さんと物理学者に感謝といかん」




 世界の航空機の歴史に名を刻んだ。栄寿は必勝策のZ機計画に際して開発されたターボプロップエンジンである。当初は従来型を素体に拡大する方向だったが冷却など問題が噴出して難航どころでなかった。そこへブレイクスルーとターボプロップやジェットが切り開かれる。さらに、挙国一致の一環として帝立大学研究所から学者と学生が参加して学術的なメスが入った。




 かくして、史上最強のターボプロップが出来上がる。その出力は馬力換算にして約6000馬力のモンスターだが堅実的にデチューンから5000馬力程度に抑えられた。エンジンが完成すれば主翼や胴体にかかる設計を見直して本格的な製造に入る。モックアップは完成済みで製造体制は整備を完了した。Z機に集中すべく国策の満州飛行機に一部を委託して余裕を設けている。




「世界最強の爆撃機はもう間もなくだ。これでアメリカ本土を爆撃する」




続く

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