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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第134話 今こそ差し違える

夜戦は第二段階に突入した。




 ミッチャー艦隊は夜間雷撃を辛うじて掻い潜ったかに見える。駆逐艦が曳航したエセックス級が沈没した。その他空母も被雷と肉弾攻撃を被っている。これで逃げられると安堵する間もなく照明弾が打ち上げられた。もちろん、味方の物でない。




「高角砲射程圏内に収めます!」




「大鳳とはなんだ! 翔鶴とはなんだ! 戦船である! 今こそ差し違える!」




「右舷高角砲は大型空母! 左舷高角砲は中型空母! 各々に撃て!三式弾も零式弾も火災を誘発できる!」




「全艦突撃せよ!」




 角田覚治は空母による攻撃の究極系と砲撃戦を選択した。昼間の攻撃時点で艦載機の収容と再出撃を効率化するために彼我の距離を縮める。敵艦隊は退避を試みるが大鳳型と翔鶴型は最速33ノットを発揮できた。一方でエセックス級とインディペンデンス級も最速33ノットを出せる。すべての空母が大なり小なり損傷を負っていた。陣形という足並みを揃えるために最速は出せない。いつの間にか肉眼で捕捉できる距離まで迫った。




 大鳳型空母は最新鋭と九八式10cm連装高角砲を装備する。長砲身の新型高角砲は威力こそ5インチ(127mm)に劣れど射程距離や初速は優った。翔鶴型は旧来の八九式12.7cm連装高角砲を継続したが十分に強力だろう。大鳳型と翔鶴型は決死の突貫攻撃を敢行した。




 そんなことをせずとも、明日以降は山口艦隊やトラック島航空隊に任せればよい。ただでさえ貴重な正規空母を捨てるような真似は厳に慎むべきだ。まだ日米決戦は終わっていない。万が一にも決戦に次ぐ決戦が待っている場合は勝利を確実とすべしだ。いいや、角田の闘将は生半可を許さない。アメリカの工業力を理解しているが故に完膚なきまで叩きのめすと砲撃戦を繰り出した。




「全砲門撃て!」




「砲術の気合が入っとる。護衛艦に通達する。これより空母護衛の任を解く。即席の水雷戦隊を構築して護衛艦を引き剥がせ」




「すでに突撃を始めました。あとは任せたと言っています」




「すまんと返してくれ」




 大鳳型と翔鶴型は前方の米空母に向けて砲撃を開始する。徹甲弾の数は少ないが空母の脆弱な装甲は零式通常弾や三式弾でも貫徹できた。あわよくば、開放式を貫いて格納庫内部で火災を誘致できれば最高である。右舷と左舷に並ぶ高角砲は空を撃つものだが今日だけは角度を持たずに平射に等しかった。あろうことか、大口径と中口径、小口径の機銃まで射撃を開始する。射程距離はもちろん有効距離にも収まっていないが光源を提供できた。




 敵空母も黙ってはいられないと高角砲を動員する。5インチ砲の数は優った。40mmのボフォース機関砲も装備する。砲の数では負けていなかった。各艦を混沌が支配している。結局のところ、兵士の質で圧倒的に劣った。自衛の砲撃ぐらいと散発的でいただけない。日本空母の鬼神の如き追撃は統制された。一斉射撃によりエセックス級もインディペンデンス級も挟み込まれる。




「翔鶴に火災発生!」




「火種が燻っていたか。消火活動に努めながら砲撃を続行せよ! 大鳳と白鳳を前に出す!」




「了解!」




「浪速以下が交戦を開始しました!」




「防空巡洋艦と防空駆逐艦が戦っているぞ! 空母が負けて良いのか! 機関全速!」




 この異常事態に敵駆逐艦は冷静に空母を討ちに転進した。彼らの相手は空母だけではない。角田艦隊の護衛艦は量産型の防空巡洋艦と防空駆逐艦だ。前者は旧型5,500t軽巡の船体に10cm高角砲と8cm高角砲を満載する。後者は秋月型を簡素化して生産性を高めた。その装備は艦隊防空を重視して艦隊戦の優先度は低いはず。10cm高角砲は高初速に加えて速射が利いて十分に戦えた。8cm高角砲もドイツのアハト・アハトを参考にして対艦砲撃に耐える。




 日本海軍において水雷戦隊は華なのだ。二水戦には遥かに劣る以前に組織の時点から水雷戦隊ではないと指摘が入る。あくまでも、現時点に限定された即席の水雷戦隊に過ぎなかった。彼らは対空戦闘は辟易している。大空にあまり当たらない砲弾を撃ち上げるより、敵艦に対して肉薄攻撃を敢行する方が遥かに華があった。ここで沈んでも本望と言わんばかり。大物を狙いたいが先に目の前の敵駆逐艦を食い荒らすことにした。




「被弾!」




「損害知らせ!」




「五番高角砲が全損!」




「敵さんも本気だ。手を緩めるな! やられたらやり返す! 大和男児の意地を見せよ!」




「敵中型空母大炎上!」




「いよっし! 引火したな! 追撃だ!」




 角田中将は前のめりの格好で指揮を執る。参謀が抑えにかかるが振り払った。そんな余裕があれば指示を飛ばせと叱責する。誰一人として暇を許されなかった。士官も弾薬運搬や応急修理など何らかの形で貢献を見せる。角田以下の首脳陣は懸命に頭を働かせた。特に敵艦の中でも落伍しかけている空母を優先的に狙った。




 大鳳も多く被弾している。装甲空母のおかげで比較的に耐えられた。しかし、高角砲1基が全損して攻撃力を削がれている。高角機銃も銃座ごと吹き飛んでいた。何十名の兵士が失われている。それでも勝利を目指して損害度外視の突貫を継続した。ここで攻撃を続けることが弔いを兼ねる。




「噴進砲!?」




「どこの馬鹿が撃ちやがった!」




「やめろ! その班も戦闘に参加しておるのだ!」




「し、しかし」




「無駄でも大いに結構! その闘志が擲弾となって襲い掛かる!」




 スピリチュアルな話になったが噴進砲まで砲撃戦に参加した。簡易的な照準器しか持たない。平射はそもそも想定しれていなかった。ロケット弾に炸薬がギッシリと詰められている。一発でも当たれば敵兵を死傷させることができた。噴進砲担当の班員は眺めているだけを嫌う。本音は応急修理や弾薬運搬に回るぐらいならば持ち場で戦いたかった。




「あぁ! 冬雲が!」




「火達磨になった…」




「されど歩みは止めん。大和男児よ…」




 即席の水雷戦隊は米駆逐艦と壮絶な殴り合いを始める。10cm砲と5インチ砲の砲弾が飛び交った。戦時中の量産設計のため艦隊型のような単騎の強さは持たない。良質な火砲と高練度な兵員が差を埋めた。照明弾が不要な程に炎上中の敵艦がゴロゴロと転がっている。とはいえ、こちらの駆逐艦も滅多打ちにされて溶鉱炉と化してしまった。




 こんな海戦が起こってはならない。敵味方が入り混じって空母同士が航空機を捨てて副砲で撃ち合った。日米決戦は空母の近代的な航空戦に始まり、空母の原始的な砲撃戦に終わる。両国の大戦争が戦艦の時代を終わらせた。そして、空母の時代を開拓したはずが、空母による撃ち合いは原点回帰だろうか。それは筋金入りのマーク・ミッチャーが理解していた。




「史上最悪の海戦だ。我々は汚名を背負うことになるだろう」




「提督! 今なら逃げられます! ヨークタウンⅡは最速を出せます!」




「ここで見捨てると言うのか!」




「シャーマンかモントゴメリーに任せましょう! 両名ともに健在です!」




「ご決断を…」




「ヨークタウンⅡは離脱する。機関が振り切れるまで回せ」




 一刻も早く地獄から抜け出さん。ミッチャー座乗のエセックス級ヨークタウンⅡは微小な損害で済んでいた。したがって、主機関は全速を超えて稼働できる。ミッチャーだけでも脱出すればリベンジの機会が与えられた。分艦隊のフォレスト・シャーマンとアルフレッド・モントゴメリーは健在である。




「敵駆逐艦が肉薄! 燃えながら突っ込んでくるぅ!」




「回避だ! 奴らはロングランスを仕込んでいるぞ!」




「回避ぃ! 回避ぃ!」




 ミッチャーの絶叫むなしくヨークタウンⅡは大きく揺さぶられた。その駆逐艦は広義の秋月型に括られる。防空駆逐艦だが意地悪く魚雷発射管と酸素魚雷を備えた。四連装63cm魚雷発射管と一斉射分の63cm酸素魚雷を有する。誘爆の危険から防空担当には載せないことが一般的だ。日本海軍の駆逐艦から誉を取り上げることは何事か。さらに、魚雷発射管は最新型で自動装填装置を備えると水雷班が全滅しても動き続けた。朦朧とする意識の中で発射のボタンを押す。必殺の63cm酸素魚雷4本が距離1000を切った目標へ放たれた。




「ここは地獄だ。我々は負けたのだ」




 ミッチャーは永遠の闇に沈んでいく。




続く

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