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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第133話 夜間雷撃専門『ガジュマル攻撃隊』

 トラック海戦の昼戦は終わった。




 米海軍トラック島攻撃の戦力を便宜的に空母機動部隊のミッチャー艦隊と水上打撃部隊のスプルーアンス艦隊に分ける。実際に分かれているため何かと丁度よかった。




 前者はトラック島攻撃を担当して先手を打っている。日本軍は高度な防空体制を構築して艦載機空襲は空振りに終わった。トラック島の施設をいくつか破壊したが飛行場は健在である。港に停泊していた小型船舶を沈めるも毛ほどの影響も与えられなかった。日本空母艦隊の空襲を受けるとトラック島攻撃どころでなくなる。空母を守るために全力を注ぎ、攻撃と攻撃の合間を縫って反撃の槍を飛ばし、空母複数に直撃弾を与えた。しかし、それ以上に空襲は苛烈を極める。謎の無人飛行機の自爆攻撃やジェット攻撃機の高速雷撃など多種多様な攻撃に対処できなかった。インディペンデンス級軽空母が沈没している。エセックス級正規空母も大破炎上が連続した。




 後者はトラック島の夜間砲撃や連合艦隊の抑えに別行動である。戦力の分散というには大戦力だが悪手が呈された。こちらも敵艦載機からの攻撃を受ける。それもミッチャー艦隊を襲ったものとは別個と理解した。スプルーアンスは一時退避を選択したが被害は必至である。巡洋艦以下に大損害を受けてしまった。戦艦は持ち前の装甲で耐えるが高射砲や機銃など一部無力化される。連合艦隊が夜戦を仕掛けて来れば不利が否めなかった。さらに、護衛空母を連れていたが低速が足を引っ張り、脆弱な防御力から次々と爆沈している。




 すでに地獄の様相を呈した。




 いいや、これから地獄の夜戦が幕を開ける。




=空母千歳=




 山口艦隊は空母の数量を底上げるべく改造空母の千歳と千代田を連れた。準一線級の空母のため艦載機は零戦を中心に護衛機や直掩機の母艦に徹する。少数ながら攻撃機も搭載した。表向きは艦隊の対潜警戒機も夜戦の切り札を兼ねる。特別攻撃隊の一種と名称が与えられた。




「ガジュマル攻撃隊発艦せよ!」




「発艦開始! 発艦開始!」




 千歳と千代田から軽い音を立てて小型の艦上攻撃機が発艦していく。目を凝らせば複葉機と見えた。旧型の複葉機を搭載するなんてと思ってはならない。その正体は九六式艦上攻撃機だった。とっくに陳腐化して専ら訓練機と使用されたが、複葉機のため発艦に必要な距離は短く、訓練機並みの操縦性と安定性に注目される。簡易空母や改造空母に対潜哨戒機と運用された。鈍足だが潜水艦に比べれば遥かに高速である。




 その特性を活かして夜間雷撃に使えないか模索した。ヨーロッパではイギリス軍が同じ複葉機のソードフィッシュを夜間攻撃に投じる。敵地の港湾空襲で不動の静止目標を攻撃する点でハードルは低いが研究するに値した。米軍を打倒するには常識に囚われてはならず、非常識な攻撃も歓迎と研究を進めていき、旧式機による夜間雷撃を実行に移す。九六式艦上攻撃機をかき集めて小規模な改修を施した。さらに、夜間飛行に慣れている水偵乗りから希望者を募る。そうして、ガジュマル攻撃隊を組織した。通称は鹿児島県の諸島部の水上機航空隊を元にすることに依る。




「頼むぞ。ガジュマル攻撃隊」




「角田艦隊は艦載機の消耗が激しく連日の航空攻撃は困難と来ています。そして、敵艦隊に挺身攻撃を敢行するとも…」




「何が何だか。いったい、何をするつもりでしょうか」




「いかにも角田らしいよ。角田は大鳳型と翔鶴型の高角砲を主砲と考えた」




「そんなことが!」




「馬鹿な!」




「まだ巡洋艦と駆逐艦を即席の水雷戦隊と切り離すことは結構です。空母を挺身攻撃に用いるなど言語道断では!」




「あいつが決めたことだ。もう止められん。我々が出来ることは骨を拾うことのみ」




 山口多聞は両目を細めて真っ暗な太平洋を眺めた。その先に敵空母が逃亡中である。現に角田艦隊の水偵が捕捉に成功していた。艦隊同士の情報共有は念入りに行われている。山口多聞と角田覚治という猛将だからこそ繋がりは強固だった。日本海軍はトラック島防衛を拡大して米海軍主力艦隊の一挙撃滅を込めたZ作戦を最終作戦とする。




 それはさておき、千歳と千代田を発した九六式艦攻は6機ずつ計12機だ。元より少数精鋭の水上機部隊から抽出して必然的に一層も少数精鋭とならざるを得ない。航空雷撃の威力は絶大なため12機でも足りた。大重量のM魚雷やS魚雷は吊架できずに一般的な九一式魚雷改7型を携行する。その炸薬量は初期型から約3倍に増加した代償に射程距離は極めて短いが航空雷撃には足りていた。真珠湾など浅瀬での運用は不可能でも太平洋の海では全く問題ない。




「敵さん驚くでしょうなぁ。時代遅れの複葉機が雷撃してくるんですから」




「あぁ、目ん玉をひん剥くだろう。すでに対空砲火の光が見えている」




「奴ら素人ですか。自ら位置を暴露するようなものです」




「まぁ、この暗闇だ。だいぶ先だがな」




「水偵からブツブツしてますが交戦中と入っています。敵艦隊は夜間戦闘機を飛ばしています」




「アメさんも死に物狂いだ。よ~し超低空を這って進むか」




「お願いします」




 水偵が接触を続けているため最短経路で向かうことができた。九六式艦攻の航続距離は新型機の半分しかない。最高速も魚雷を吊架すれば鈍足に鈍足を重ねた。敵艦隊という移動する目標を捉えるに味方の支援は欠かせない。味方の水偵は対空砲火と妨害電波だけでなく夜間戦闘機の迎撃を受けた。米海軍はヘルキャットに電探を搭載して夜間戦闘機仕様を投入する。




 敵味方が奮闘している様子は闇夜に強烈な光源を提供した。ただでさえ何もない海洋である。遥か遠方からでもドンパチの閃光が見えた。そこへ真っ直ぐ向かえばよい。敵艦隊の電探の電波に捉えられないように超低空飛行に移った。安定性に優れる複葉機ならではでスムーズに雷撃姿勢に入ることもできる。




「見えたぞ! 敵空母だ! 対空砲火が来るぞ!」




「照明弾が終わるまでに決めませんと!」




「戦闘機はいません! 行けますよ!」




「わぁっとる! 騒ぐんじゃない!」




「2時から3時方向の敵空母が曳航を受けていますよ! 狙い目です!」




「いよっしゃぁ! 行くかぁ!」




 彼らは出撃前にヒロポンを摂取して覚醒状態に置かれた。眠気は吹き飛んで一時的だが極限の集中力を発揮できる。帰投後に猛烈な疲労に襲われるが敵空母を仕留めることができれば御の字だ。




 彼らから見て3時方向に駆逐艦に曳航される敵空母を認める。母艦を上回る大型艦でエセックス級と予想した。重巡か軽巡らしき艦艇が懸命に対空砲火を放ってくるが前方で炸裂している。どうやら九六式艦攻が遅すぎて設定を誤っているようだ。




「こいつは儲けものだ! このまま突っ込む!」




「主翼がビリビリですが飛べますよ!」




「羽布張りで助かったな!」




 それでも20mmか12.7mmの機銃弾が機体を包み込む。主翼がビリビリに破けるが羽布張りのため飛行に支障はきたさなかった。しかし、長時間の飛行は困難に陥って帰還も絶望的である。米海軍の防空体制は夜戦にも対応してきた。これは敵ながら天晴れと褒めたい。しかし、大和魂を侮ってもらっては困った。




「悪いが命を貰うぞ」




「はい」




「最後の通信を送ります」




 操縦席から見る計器類は狂っている。被弾から碌に計測もできなかった。どうせ海面に突っ込むならば魚雷投下と肉弾攻撃の合わせ技をお見舞いする。すでに家族とは別れを告げた。ヒロポンのおかげで恐怖心は消えて怖いものはない。ただ目の前の敵軍を討つのだ。




「投下ぁ!」




「大日本帝国万歳!」




「うわぁぁぁぁ!!」




 深夜に一際大きな爆発が生じる。




 敵も味方も狂っていた。




 その象徴が夜間雷撃に続いた世界初である空母機動部隊の突貫攻撃である。




「全艦突撃せよ! 使える兵装を総動員する! 砲撃戦用意! 目標は敵空母のみだ!」




 空母機動部隊同士の夜間砲撃戦が勃発した。




「大鳳に続けぃ!」




続く

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