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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第123話 総力戦の凝縮

日米による空前絶後の大作戦が衝突した。




 米軍のヘイルストーン作戦はトラック島の機能を完全に削ぐ。これにより日本軍の太平洋の活動を著しく制限した。太平洋を艦隊が遊弋することで間接的に南太平洋の反撃を支援する。南太平洋は陥落したがハワイは健在であり、マーシャル諸島とギルバート諸島を制圧し、連合国軍は確実に前進できていた。しかし、日本軍は南太平洋から退却を始めているらしい。どこか罠の可能性も否めなかった。しかし、本作戦に際して空母9隻と戦艦6隻を用意している。潜水艦も数十隻単位で派遣した。アメリカンなシ―パワーを以てすり潰す。




 日本軍はあ号作戦を展開した。トラック島を千早城に見立てる。このためにトラック島は大工事が行われて一つの小国に匹敵した。連合機動艦隊も新鋭空母と新鋭機を揃える。日本軍が守勢に回る以上は地の利を活かすことができた。米軍の情報源を握り潰すべく潜水艦は徹底的に沈めている。基地航空隊も南太平洋から抽出したベテランを得て粒ぞろいの精鋭が集結した。




 これが最後の作戦になるかもしれない。




「またアメさんの潜水艦だ。これで何隻目かわからない」




「KMX-Ⅴが反応し過ぎて堪りません。爆雷が追い付きません」




「大丈夫だ。陸攻が待機している上に水偵も飛んだ。駆潜艇もウヨウヨしている」




「バレないと良いですがねぇ。なにせトラック島は難攻不落ですが、千早城と称して脆弱をみせかけ、アメさんをおびき寄せる」




「そうだなぁ。潜水艦であれば大丈夫じゃないか。偵察機が来なければ、どうにかなる」




 トラック島の周辺は24時間体制で哨戒機が飛行した。遠洋で仕事を失った九七式飛行艇や二式飛行艇が長時間哨戒飛行を行う。旧式化して手持ち無沙汰な九六式陸攻が対潜爆弾を抱えた。純粋な対潜哨戒機である『東海』や『南海』が磁気探知機を光らせる。




 特に米軍と思われる潜水艦が大量に出現した。今まではゼロでこそなかったが少数である。それが急激に増加した故に攻撃は近いと素人でも理解した。したがって、哨戒機の必要性が増している。本土から東海と南海が優先的に送られた。両機は最新型のKMX-Ⅴをしまい込む。米海軍はガトー級潜水艦を大投入するも低空から悉く感知されて雷撃はおろか偵察も覚束なかった。しかし、対潜哨戒機に攻撃能力は限りなくゼロに近い。敵潜水艦発見を報告して発煙筒を投下すると大まかな位置を伝え続けた。トラック島所属の飛行艇や陸攻、水偵だけでない。近場の駆潜艇が急行して爆雷攻撃を行った。これにより米海軍の潜水艦は瞬く間に損耗している。




「KMXに感あり! また潜水艦が! それも浮上してくる!」




「いや、待て。我々が低空でいるにもかかわらず、わざわざ浮上して来るんだ。あれは友軍の潜水艦だよ」




「し、しかし」




「仮に敵潜水艦でも浮上してしまえば向こうに勝ち目はない。機銃掃射で事足りる」




「わかりました。一旦様子を…」




「やはりな。特殊潜航艇じゃないか。きっと騒乱に驚いて上がって来たんだ。誤射を受けては堪らないと」




 KMX-Ⅴに反応があり再び対潜戦闘に入るところだった。なぜか浮上してくる点より味方への通報は見送る。完全に浮上し切ってから友軍の小型潜水艦である特殊潜航艇と判明した。先の対潜戦闘に驚いて状況の確認を行うと同時に誤射されぬように自ら姿を現したのだろう。




「やぁ、すまなかった。しばらく、そうしておいてくれよ」




「礼儀の良い若者ですね。しっかりとした敬礼ですが若いようで」




「おい、ありゃ、学徒じゃないか…」




 超低空飛行で「すまん」のジェスチャーを示した。特殊潜航艇の出入口からヒョッコリと兵士が頭を出す。まさかの学徒兵だ。日本軍は兵士の不足から志願制から徴兵に移行する。中華民国や南方地域から志願兵を募って充足を進めた。しかし、空前絶後の大作戦を遂行するに大和民族の忍耐強さが求められる。




 そこで、学徒動員が行われた。学徒動員は悲劇の象徴とされがちだが、アメリカとイギリスでも展開され、何も日本の専売特許ではない。文化系学生を中心に検査を通過した者が最前線へ送られた。理科系学生は本土に残るが軍事研究に専念する。女学生など非戦闘の学生たちは高い精度や経験の必要ない軽作業に従事した。




「学徒の未来を詰むのかよ。お国は何をしているんだ」




「仕方がない。戦争とはそういうものだ。俺だって中学を出て直ぐに軍に入らされている」




「生活のためでもある。職に依りますが恩給は多いとか」




「これ以上の言及は禁ずる」




 哨戒機は特殊潜航艇と学徒兵に敬意を示すべくバンクを振る。彼は満足な物を持っていない故に汗が染みたタオルを回して懸命に応えてくれた。とても居たたまれない。鈍足をフル回転させて現場から離れた。日米両軍のトラック島を巡る作戦は総力戦を凝縮しているよう。




 トラック島を囲むは大海洋だけでなかった。誰でも自由に移動できる大空も囲んでいる。大空は大海洋と異なり日本軍の航空機で満ちていた。空の監視は肉眼だけで足りず電子の眼が光る。こちらも哨戒機が飛行する中で一際目立つは早期警戒機だった。




「何やら潜水艦を巡ってひと悶着ですか?」




「よくわからんが誤射の未遂だろう。よくあることだ」




「よくあったらダメじゃありませんかい。そういうのは排除しませんと」




「無理だ。物事に完全は無い。我らの空対空電探も完璧とは言い難かった。常に目を見開け」




「伊達に人がいるわけではない」




 まだ10機も製造されていない。川西飛行機の早期警戒機こと『積雲』だった。その名称から資料まで輸送機を纏うことで秘匿が図られる。四発機の巨体に電子機器を詰め込んだ。胴体下部に貨物室と見せかけた大型のレドームを備える。超長距離から航空機と艦船の接近を捉えた。長時間飛行と電子機器を動かすためにエンジンは三菱製空冷星型複列18気筒の2200馬力を採用する。最高速は戦闘機の巡航速度よりも遅く、セミインテグラルタンクと低燃費の飛行により、数日間の無補給飛行を可能にした。もちろん、単独で監視網を敷くことは不可能であり、飛行艇や陸攻(哨戒仕様)と協同が前提になる。




「敵機大編隊を捉えたら間髪を入れずに緊急法を発するんだ。俺の許可はいらん。仮に誤報で終わっても構わない。燃料の備蓄はタップリなんだ」




「満州油田の様様ですよ。油槽船も待機しています」




「地上のタンクが破壊されても地下にタンクがある。油槽船がいれば尽きることはなかった」




「もっとも、燃料のタンクが破壊されないよう、航空隊の戦闘機に期待している」




「噂をすれば何とやらですぜ」




「お、訓練中じゃないのか」




 積雲は高高度を飛行していた。レドームが敵機を見下ろす格好である。一機も護衛機を携えていないが超遠距離の範囲で感知した。敵機を感知次第に急報を発しながら高度をさらに上げる。少なくとも、米海軍の艦載機が高高度迎撃を行えるとは考えられなかった。しかし、味方に通用することでないよう、訓練中の局地戦闘機が挨拶に訪れる。




「赤鼻の雷電か。流石に速いぞ」




「違います。なんだ、あれは…」




「エンジンが前にない。エンジンが後ろにある!?」




「あれが新型機!」




 大洋を囲うように下方から上方へ通過していった。それはエンジンが機体前部にあるという定説を覆す。エンジンが機体後部どころか尾部に設けられた。エンテ翼という独特にして特異な翼も注目を集める。あまりの異形に画面から視線を外してしまった。機長も驚きを隠せなかった故に叱責は慎む。




「あれなら期待以上だ。トラック島を守り通せる」




続く

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