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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第122話 あっけない最期

辻から報告を受ける。




「そうか。マウントバッテンは本国に逆らい切れなかったか。虚栄心は何処へやら」




「いかがいたしましょうか。巡航噴進弾や地中貫徹爆弾のお披露目が…」




「適当に消費すればいい。兵器は使ってこそ意味があるんだ。マウントバッテンはどう逃げるのだね」




 イギリス軍インド方面総司令官のルイス・マウントバッテンは帰国の命令に従った。チャーチルの命に従うことは癪であるが、出世のために一旦は従わざるを得ず、再起を図るために中東へ向かうらしい。日本軍はインドの戦いは実質的に勝利を収めた格好でも消化不良が否めなかった。連合国の一角であるイギリスを完全に脱落させるためにマウントバッテンを屠らねばならない。




 彼のことだから前線まで出張してくると読んだ。前線司令部に新兵器の巡航噴進弾か地中貫徹爆弾を適材適所で運用する予定が崩れている。兵器は用意してしまった。適当に消費するがよろしい。本当の問題はマウントバッテンをどのようにして暗殺するかに置かれた。




「情報部門の動きからして輸送機です。中東までなら中継により迅速かつ安全に退避できます」




「マウントバッテンらしい。やつはこの作戦に数百の輸送機を用意した。その大半を撃破してやったがな」




「我々の戦闘機は追いつけます。しかし、手足が届きません」




「わかっている。情報部門が絞り込みをかけるはずだ。それを基に策を講ずる。なにこういうことも考えてあるんだ」




「お任せいたします」




「石原莞爾の名前で屠ってやるぞ。マウントバッテンよ」




 石原莞爾の悪い笑みに辻は期待を膨らませる。




~空軍基地~




 マウントバッテンの姿は空軍基地にあった。彼の後方にはタラップが付けられた状態のアブロ社ヨーク軍用輸送機が出発を待つ。イギリス空軍の主力輸送機でチャーチル首相も移動に使用するなどVIPに活躍した。




「最初から最後まで迷惑をかけた。すまなかったな」




「何を仰いますか。私の補佐が不足しておりました。敵将はイシハラに補佐はツジという悪魔の組み合わせです。私が悪かったのでしょうから、閣下はどうかご無事でいてください」




「私が元帥になった時は必ず迎えに行くぞ。それまで待っていてくれるか」




「もちろんです」




 現地には副官を残している。マウントバッテンが帰国に従った理由に副官に責任を擦り付けた。なんという非情だが当の本人は謝意に満ち溢れる。実は副官そのものが発案した。ルイス・マウントバッテンという将軍が未来を断たれては堪らない。それならば自身が背負うと言い始めた。マウントバッテンは紳士の精神から拒絶するも自身の出世意欲は溢れんばかり。各方面と口裏を合わせてから退避を決定した。




 ドイツとの戦いで功績をあげて元帥になり上がる。それまでは我慢を強いることになった。元帥にまで昇りつめた暁は副官を必ず助け出すことを約束する。ダイヤモンドよりも強固な握手を交わした。それから輸送機へ搭乗するためタラップを駆け上がっていく。彼としては一刻も早くこの場を離れたかった。




「中東まで頼んだよ」




「はい。操縦手たちはボマー出身のベテランです。それに護衛戦闘機も付けました」




「ボーファイターとライトニングか。日本軍が来ても大丈夫だな。安心できる」




「彼らも精鋭です。護衛と言いますがお見送りでございます。日本軍の戦闘機が遠くまで飛べると言いますが遥か内陸の基地でした。ここまでは来れません」




「そうだったか。やれやれ、心労から頭も鈍っている。休ませてもらう」




「どうぞ、ごゆっくり」




 ヨーク輸送機はインド戦線で大量に用意される。VIPの軍用輸送機は内装が変更されて快適な空の旅が約束されていた。マウントバッテンは肉体的と精神的に疲労が蓄積している。中東までの数時間を紅茶と共に過ごしたいが、日本軍に襲われる可能性もゼロとはならず。護衛戦闘機として自軍のボーファイターと米軍供与のP-38ライトニングが付随した。どちらも双発の重戦闘機のため長時間の長距離を帯同できる。日本軍の戦闘機が襲い掛かってもヨーク輸送機を守り通すためにパイロットは粒ぞろいのエースだ。




「それでは離陸いたします。ご注意ください」




「さらばインド。再び舞い降りる時は総領となっているだろう」




 副官など現地に残す部下たちの見送りを目に焼き付ける。インドに戻ることがあれば軍人ではなく政治家として大地を統べた。マウントバッテンの名前はインドに轟くことが必然とする。忌々しい日本軍と暫くは会わないことに喜びを覚える反面に謎の寂しさも感じられた。これが矛盾というものか。




「紅茶をどうぞ」




「気が利く。最高のタイミングだ」




「最高級品を淹れております。ご要望ならばスコーンも」




「あとでいいかな。まずは楽しみたい」




「承知いたしました」




 彼を労わってか紅茶が差し出された。スコーンの用意もある徹底ぶりに感涙が禁じ得ない。すでに高度は中高度に達して大地は広がるばかりでよく見えなかった。今日の空は清々しい程に青く透き通っている。ルイス・マウントバッテンという男が再起を図るに丁度よかった。中東に向かう予定だがヨーク輸送機の航続距離の兼ね合いでトランジットを予定する。インドの大地はあまりにも広大なのだ。




 単調な飛行が続いて眠気を誘ってくる頃に慌ただしくなり始める。先ほどから搭乗員たちがヒソヒソと話し合った。護衛の戦闘機もエスコートを外れている。護衛機の交代にしてはタイミングがズレていた。何か良からぬことが起こっている。さすがに問わざるを得なかった。




「どうした」




「日本軍です。我々の動きが読まれていました。しかし、ご安心ください。ボーファイターとライトニングが向かいました。さらに、近くの飛行場からスピットファイアを呼んでいます」




「なんだと。筒抜けだったのか」




「レーダーに捕まった可能性があります。どちらにしてもご安心いただければ」




「わかった。私はこうしている」




 どこから現れたのかわからない。日本軍の戦闘機が襲い掛かってきた。早々にボーファイターとライトニングが迎え撃つ。ヨーク輸送機を守る騎士が消えた。近隣の基地と飛行場に非常の動員をかけている。イギリスを救ったスピットファイアが一気に上昇してきた。インパールを巡る空戦にて激烈な空戦を繰り広げた末に制空権を喪失したことに一抹の不安を覚える。しかし、自身にはどうしようもないため、椅子に座っているしかなかった。




「窓を閉めて! 狙い撃ちにされます!」




「そ、そうだな。閉めるよ」




「はい。万が一がございます。最も安全な区画へ!」




「あ、あぁ」




 日本兵は目の良さに定評がある。輸送機の窓から僅かに見える大将軍を見逃さないはずだ。ヨーク輸送機の元が重爆撃機といえど輸送機である。VIP仕様でも防弾は期待できなかった。スピットファイアが到着して周囲を固めて尚も怖さは消えない。最も安全な区画へ避難を強いられた。




(なぜだ! なぜわかっていた! イシハラは悪魔だ! そうに違いない!)




「て、敵機だぁ! 太陽に隠れていた!」




「避けろ! 避けるんだ! 閣下だけは逃がす!」




「どうしてだぁ! なぜだぁ!」




 その直後にヨーク輸送機は木端微塵と変わる。機関砲の掃射にしては威力が桁違いだ。スピットファイアのパイロットが言うには「大量にロケット弾が向けられた」とある。日本軍はヨーク輸送機を重爆撃機と誤認して局地戦闘機を飛ばしたと理解するが手っ取り早かった。そして、ルイス・マウントバッテンは悲劇的な最期を迎えたこともわかる。




 敵機が木っ端微塵となったことを視認次第に空域から離脱を図った。スピットファイア如きに追いつかれては恥と晒される。銀翼を翻す際に太陽光を反射させて自然と格好をつけてしまった。余計に憎悪を煽るような動きだが逃げの一手で追いつきを認めない。




「あっけないな。これが敵将の最期なんてね」




「まったく、同情すら出てきます」




「まぁ、妥当と言えば妥当でもある。この異端の零戦が役者となれて喜ばしい限りだ」




 銀翼に日の丸を刻んだ。




 その戦闘機はまさしく異様である。




 まるで零戦と零戦が連結しているよう、いわばツイン・ゼロだった。




続く

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