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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第120話 我に追いつくアメコウなし

「米海軍機動部隊動く」




 この報告を受けて日本海軍はトラック泊地を千早城に変えて大規模な迎撃を試みる。すでにマーシャル諸島とギルバート諸島から撤退している以上は内海に引き込んで撃滅することが一番だ。しかし、あの米海軍がそう簡単に罠に嵌るわけがない。むしろの真反対に各個撃破されかねなかった。




 したがって、何よりも情報が重要である。ただ単に敵艦がどう動くだけでは不十分が呈された。敵艦隊を率いる将軍がハルゼーかフレッチャーかキンケイドかの人員配置に始まる。各艦隊が何を標的にしてどう攻撃してくるのか、そもそもの陣容はどうなっているのか、等々の多岐にわたった。現在情報部門が総力を挙げて情報収集と取捨選択、分析に精を出している。何と言っても、肉眼が頼りと現場は無茶な偵察作戦をぶち上げた。




「今日はメジュロ環礁を覗いてやるぞ。うちの罠を突破したところでだ。眠れない夜を過ごさせてやる」




「潜水艦が限界がありますからね。彩雲が見透かしてやりましょう」




「爆弾でも持ってきたかったが増槽に取られちまった」




「そりゃポンペイ島と往復するんです。零戦はおろか陸攻も大変なこと」




「敵機に捕まったら増槽を切り離して逃げの一手だが撮れるもんは撮っておけ」




「任せてください。愛用のライカを持ってきました」




 トラック泊地の前方に位置する。ポンペイ島の前線基地から艦上偵察機(陸地仕様)が飛び立った。米海軍機動部隊が本土やハワイ、ミッドウェーから出撃したと言う。まさか、トラック泊地まで一気に駆け寄る真似はしなかった。おそらく、駆逐艦や軽巡など広義の護衛艦と合流すべくマーシャル諸島に寄るはず。マーシャル諸島には艦隊が停泊するに適したメジュロ環礁があり、日本軍も守備隊を配置して重視していたが、前述の通りで戦略的な撤退から放棄していた。




 メジュロ環礁の放棄に際して機雷の敷設、障害物の設置、地雷の撒き、手榴弾のブービートラップなど罠の限りを尽くす。米軍はこれまで幾度となく痛い目に遭ってきた。素足で上陸することなく事前に除去作業に邁進する。機雷除去も板についてきた。あいにく、浅瀬に感圧式や磁気式の機雷が難を逃れている。陸地の地雷やブービートラップも健在だった。いざ作業を開始すると舟艇は次々と沈められ、工作用重機は対戦車地雷に吹っ飛ばされ、工兵たちもブービートラップに巻き込まれる。




 日本軍と直接的に戦わずして無視できない損害を被った。それでもアメリカンなパワーで無理に押す。安全を確保次第に大艦隊が停泊できる工事を突貫で行った。さらに、自衛のための飛行場も短期間で完成させている。多大な出血を支払いながらも万全を期して大反撃の先鋒を迎えた。




「ノックは2回だったか? 3回だったか?」




「4回じゃありませんか?」




「4回!? あれ、そんなだったな」




「さぁ、アメさんに聞いてみます。マナーってやつをね」




 そんなメジュロ環礁を殴り込みと言わんばかり。日本海軍が世界に先駆けて送り出した。中島飛行機の誇る高速偵察機の彩雲が強行偵察に出かける。友軍潜水艦がメジュロ環礁を包囲した。潜水艦は足が長くても速くはない。米海軍の対潜の技術と戦術は磨き上げられた。雷撃の機会すら与えられずに逃避行が日常と化そう。前線基地から偵察機が強行偵察する以外に姿を暴く方法はないのだ。




 彩雲は陸軍の戦略偵察機に触発されて艦載機として開発される。すでに主力機動部隊で運用された。艦上攻撃機を偵察に割かなくてよかった。無駄に考える必要がない。攻撃力を低下させずに済む点で評価された。各国の戦闘機は高速で重武装にひた走る。敵戦闘機に捕捉されるような脚ではいただけなかった。これに中島飛行機は自前の大馬力エンジンに軽量な機体というコンセプトで応える。




「誉を唸らせる。突っ込むぞ!」




「頼んだ!」




「お願いします!」




 エンジンは空冷星形複列18気筒の『誉』を搭載した。言わずと知れた傑作エンジンである。史実に比べて余裕を持った設計と雖も海外製に比べて細身で軽量に纏まった。満州油田から産出された高オクタン価のガソリンを燃やせば2000馬力をヒョンと超える。さらに、推力式単排気管ことジェット排気を用いることで約400馬力の向上を見込めた。




 誉の寸法を正確に測ってから極限まで絞り込んだ胴体を設計した。空気抵抗を減らすことが高速化の鍵とは周知されている。戦闘機よりも細い胴体は心配になるが十分に考え尽くされた。主翼はZ機でも採用予定の層流翼を与えている。それは従来よりも25%も空気抵抗を減らした。神秘翼を自称するP-51の主翼よりも効果的である。それぞれの部品点数は零戦以下に抑えられた上に軽量が意識された。




 その最高速は条件次第だが700km/hに迫る。試験飛行では650km/hの突破を連発した。テストパイロット曰く「こいつは速すぎる。目が追いつかない」と言わしめる。とはいうもの、どれだけ高速でも短距離が限界では偵察機の意味がなかった。特に広大な海洋を往復するのだから。




「対空砲火!」




「当たる気がしないな。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってか」




「戦闘機は上がってこないな。写真が撮り放題」




「おい! 深澤! どうせ暇だろ!」




「あぁ! 暇だな!」




「写真はいらん。メモに書き起こせるか!」




「あい、わかった!」




 主翼の80%をセミインテグラルタンクとすることで増槽なしで最大3000kmを飛行可能な航続距離を確保した。防弾性は脆弱と言わざるを得ない。そもそも、偵察機に防弾を求めることがおかしい話だ。それ以前に持ち前の快足より敵機を引き剥がすのみ。ただし、ポンペイ島からメジュロ環礁は往復でちょうど3000kmだ。さすがに往復は難しいと胴体下部に大容量の増槽を追加する。増槽は重荷だが一度空になあれば切り捨てた。




 それに伴い武装も貧弱を極めて固定武装は皆無である。後部座席に旋回式の7.7mm機銃を持つが気休めが精々だ。敵機に追いすがれた際に豆鉄砲をパラパラと撒いてけん制しよう。これの出番がなければ偵察員の補助として肉眼で捉えた景色の内容をメモに書き起こした。高射砲の砲撃に怯むことなく両目をかっ開いている。これまで何百回と危険な偵察任務を行ってきた。高射砲の砲撃程度では怯むわけがない。




「なんだ! グラマンじゃない!」




「識別表にないか!」




「まて! 今探している!」




「速いな。これに追いつこうとするか。普通は追いつけなくてダメと諦めるんだが」




 今日ばかりは米海軍も負けていなかった。味方の高射砲はあてにならんと猛然と上昇してくる。彩雲は高高度を飛行する機体ではなかった。中高度から低高度を飛行する故に捕捉されやすい。熟練された偵察員は見慣れない戦闘機を捉えて離さなかった。ワイルドキャットやヘルキャットのグラマンとは明確に異なる。




「あの主翼が曲がったのはコルセアだ! 新型じゃないがグラマンよりも速い!」




「そりゃそうだ。彩雲に食いついてくる」




「それも冷静に対処しているぞ。機銃を撃ってこない」




「12.7mmを理解している。ベテランだ」




「どうだ! 撮れたか! 書けたか!」




「ちょっと足りないが仕方ない! 司偵に任せよう!」




「よし! ぶっ飛ばすぞ! 増槽を切り離す!」




 それはメジュロ環礁の米海軍海兵隊が運用した。F4Uことコルセアである。全く新型機ではないが艦載機としては不都合な設計から陸上機として過ごしていた。海兵隊の戦闘機と運用されてメジュロ環礁に配置される。自慢の逆ガル翼を翻して偵察機狩りに興じた。飛行艇の強行偵察を撃退するだけでなく撃墜する戦果もあげる。あいにく、彩雲は甘くなかった。




「ワハハハハハハハ!」




「ありゃダメそうだ。おいつけない」




「なんといいますか?」




「ワレニオイツクアメコウナシ。これで送ってくれ」




「わかりましたぁ!」




 帰投して直ぐに怒られたことは必然である。




続く

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