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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第107話 インドの通り魔

イギリス軍はアメリカ軍義勇部隊から引き継いだ航空団を投入した。インドからビルマにかけて制空権と言う傘を差さねば常時爆弾の嵐が降り注ごう。地上部隊が主要都市に到達する頃には装甲の服は破れて皮膚は焼け爛れた。




(奴らは連日の空襲で疲弊している。戦闘機も爆撃機も地上で休んでいるはずだ。昼間爆撃から地上撃破できれば楽なことはない。夜間爆撃も考えたが難しい)




「あぁやって、いっちょ前に言うがよ。俺はビルマの地獄を経験した。日本軍は手練れだ。絶対に待ち構えている。俺は生きるぞ。爆撃機なんて重荷だからな」




(B-25は固いが落とされるときは落とされる。俺たちが守ってやる。ベビーシッターだな)




「馬鹿みたいなことを言っていやがる」




(そろそろ見えて来るぞ。気を引き締め…)




「敵機ぃ! 下だ! 突き上げて来る!」


 


 イギリス軍は事実上の停戦中も空軍戦略を着実に蓄える。チャーチルに掛け合って欧州戦線優先方針は崩さずに一定数の確保に成功した。アメリカのレンドリース法に基づき爆撃機と輸送機を大量に供与されている。特にA-20とB-25は高い安定性と堅牢性から好評だ。戦闘機も最新鋭のP-47を与えられたが、救国のスピットファイアやハリケーン、ボーファイターが揃っている。欧州戦線で経験を積んだ最強のP-51も控えたが、主に中高度から低高度で多湿な環境下では全力を発揮できず、一旦はブリティッシュの主力に任せた。




 特にインパールの航空戦は激しい。スピットファイアは自慢の高速性と格闘性を活かして襲い掛かった。日本軍の航空隊はビルマから鍛えられた精鋭である。中高度に新型機を配置して互角の戦いを繰り広げた。パイロットが不利を悟って一時退避のため低空へ降りたところに古豪の従来機が待ち伏せる。低空の格闘戦は旧型の独壇場とバタバタと撃墜された。それでも、バトル・オブ・ブリテンの執念を見せて新型も旧型も撃破する。




「ビルマの通り魔! こいつはバケモノだ!」




「悪魔の集団だ! 爆撃機を守れぇ!」




「こんなの! 自分の身を守るだけで精一杯だ!」




 これは壮絶な消耗戦と思われたが日本軍の圧倒的な有利を呈した。なぜなら、インドとビルマは中華民国と連結している。地理的な話はもちろん鉄路が敷かれていた。ビルマを電撃的に制圧してインドを部分的に掌握すると直ちに鉄道建設工事を開始する。長大な鉄路の建設は長期間を見込んだが中華民国から動員した大量の工員に捕虜を加えて人海戦術を展開した。かくして、鉄道輸送が確立されると中華民国の工場から貨物列車が発車して最前線まで製品を送り届ける。燃料とオイルの消耗品からジュラルミンの素材単位まで潤沢を極めた。




 イギリス軍は消耗戦が不毛であることを理解して一気に殲滅することを決める。アメリカ謹製のB-25とA-20を惜しげもなく投じて飛行場の破壊と航空機の地上撃破を目論んだ。この事前に日本軍のレーダー監視所を重砲が砲撃して無力化している。早期迎撃を封じ込んだ。スピットファイアを護衛機に付けて備えは怠らない。単発機の群れが迫っても動じなかった。




「通り魔だけじゃない。トージョーとフランクまでいやがる。最悪の迎撃じゃないか!」




(レーダーを潰したんじゃ!)




(ゴタゴタ叫ぶなぁ! 戦え! 奴らを叩き落せ!)




「無茶言いやがる。通り魔から逃げるだけで燃料を使う。爆撃機なんか守れるか」




 イギリス空軍の威信は容易に打ち砕かれる。彼らがどれだけ入念な準備を施そうとインドからビルマにかけて魔境が連続した。欧州戦線で最凶を誇ったモスキート偵察機は高温と多湿にやられて碌に飛べない。航空偵察の索敵能力を減ぜられて隠匿された小規模なレーダー監視所を見逃した。大爆撃隊を感知すると即座に迎撃機が発進する。飛行場は空にすべく予備戦力も飛び立って第二陣と構えた。戦闘に関与しない輸送機や偵察機は近場の飛行場に退避する。




「来る!」




「ミッチェルがやられた! どこからだ!」




「下だ! あいつら斜め機銃を使っている!」




「ドイツの真似事をしやがる」




「戦闘機も気を付けろ。自分の後ろを取られたら終わりと思え!」




「あいつら偵察機を戦闘機にしやがった!」




 迎撃機は双発の重戦闘機と見えたが、目を凝らすと、まさかの戦略偵察機と判明した。偵察機は戦闘に巻き込まれても逃げの一手が通常である。自衛用に機銃を装備することはあれど牽制程度に収まった。空中退避していたら偶然に接触したこともあり得ない。なぜなら、敵偵察機は大口径の機関砲を撒いてきた。




 スピットファイア隊は抑え込みに入るが彼我の速度差が段違いである。偵察機は高速でなければならないが、日本陸軍が運用する戦略偵察機はまったく追い付けず、コードネーム以外に「地獄の天使」や「通り魔」と恐れた。双発機のハイパワーエンジンと洗練された流麗な機体形状が驚異的な上昇力と速力を手繰り寄せる。実際に爆撃機の迎撃に適性を見出されて機関砲を搭載する現地改造が行われた。かなりの戦果を挙げたことに加えて新技術が確立されたり、2000馬力級エンジンの安定供給が始まったり、新型機が万能機故に突出していなかったり、諸般の事情により戦略偵察機を素体に戦闘機型や襲撃機型、爆撃機型と公式が改造を始める。




「37mmがズレているぞ」




「堪忍してください。主翼の端切れでも当たれば一発なので」




「それをアレに当てられるか?」




「無理ですね。37mmの弾速は遅いので」




「そうか。20mmで十分か」




 日本陸軍が現在も運用する百式司令部偵察機は登場当初から完成されていた。連合国軍も褒め称える。デザインも含めると世界最高峰と言って差し支えなかった。あまりにも優秀なため後継機が登場しても従来型は改良が続けられている。敵勢力圏を悠々と飛行できる性能は圧巻に尽きた。エンジンを換装して武装を追加すれば立派な戦闘機の完成である。




 現地改造の一環として行われた武装追加を公式に認め、機首に20mm機関砲2門を配置し、後部座席に37mm斜め機銃を与えた。斜め機銃の威力は絶大と敵機の後方と下方から痛撃を浴びせられる。敵爆撃機が遁走しようと持ち前の快速で追い付いた。仮に敵機が上昇しても司令部偵察機時代から高高度性能に秀でる。今日もB-25を下方から突き上げて37mm砲弾を主翼にぶち当てた。B-25の頑丈さは彼らも認めているが37mmの一発は主翼をへし折る。




「む、食らいついてくるか」




「適当に剥がしましょう。B-25はバラバラになりました」




「そうだな。鐘馗が行っている」




「百式に追い付けるものなら追い付いてみろって」




 斜め機銃を操作する後部座席から緊張感無く観劇できるほどの余裕は憎たらしさを覚えた。スピットファイアが仲間であるB-25の敵討ちと言わんばかりに猛追してくる。百式司偵は軽快に動けると雖も双発機に括られた。単発機で華麗な機動のスピットファイアから逃れることは難しい。しかし、エンジンを2000馬力級に変えたことで直線の最高速は時速670キロに到達した。




 フルスロットルで逃げに入ると「ダメダメ」とジェスチャーを見せながら置いてけぼりにしていく。スピットファイアのパイロットが呆気にとられる時にはインタセプターの鐘馗が食らいつくと同時だった。鐘馗も比較的に旧式の戦闘機だが高い上昇力と急降下に耐える機体はパイロットが物にした時こそ真価を発揮する。ベテランよりもルーキーが操縦した時に戦果を挙げた。当初は新兵を預けられないと言われたが、今は経験の浅い者が好き好んで乗っており、新兵だから預けられる名機と覆している。




「そらイギリスの旗が落ちていきます」




「アメさんも落ちていくわな。ありゃダメだ」




「どうしてです? 脱出すれば生還は…」




「怒り狂ったインド人に滅多打ちにされるさ。大人しくやられる方が楽かもしれない」




 インドの通り魔は次々と切り裂いた。




続く

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