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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第103話 あ号作戦の前に

=トラック泊地=




 大和は本土を離れてトラック泊地に鎮座した。




 ここでも大和ホテルかと揶揄されるが石油の備蓄は十分である。




 満州油田の産出量は増すばかりだ。




「諸君らも承知している通り。ギルバート諸島とマーシャル諸島が機動空襲を受けた。陸軍と協議して両諸島の全面的な放棄を決定した。米海軍は環礁を前線基地に変えて太平洋中央部を衝いてくる。オーストラリア政府が事実上の日豪停戦を決め込んだ影響も否めん」




「そこで、決戦圏域を策定しました。こちらをご覧ください」




「こいつは大幅に減ったな。無駄を減じたと言うべき」




「アリューシャンからニューギニア、インドまで広がった。陸海軍は相互協力して連合国軍を撃滅する」




 海軍の方針は政変から大転換を強いられる。ミッドウェー島攻略からハワイ攻略を声高に訴えて実行に移しかけたが、ソロモン諸島をめぐる海戦に主力級が参加できず、基地航空隊と水雷戦隊、挺身艦隊の活躍より辛勝を収めた。山本大将が長官から降りたこと、石原莞爾の口添え(干渉)が強まったこと、広範な海域を維持することは無茶なこと等々が重なる。




 トラック泊地を俯瞰すれば理解できた。米海軍と異なり未だに大艦隊を擁する。世界最強の第一機動部隊も健在という威風堂々だ。戦艦は大和で打ち切られてしまったが、長門型と金剛型は小幅な改修を繰り返して現役を保っており、航空戦艦となった扶桑型と伊勢型も異様を武器にする。空母は大鳳型装甲空母と雲竜型空母など新造艦を迎えて米海軍の新鋭空母に対抗した。




「アリューシャンとインドは陸軍中心に動いています。したがって、海軍は太平洋に集中すればよく。マーシャル諸島とギルバート諸島が狙われました。この次は…」




「ココと言うわけだ」




「その通りです」




「トラック泊地が狙われる以上はコチラから打って出る。連合機動艦隊は米海軍新鋭機動部隊の迎撃に向かう。あ号作戦を発令する予定だ」




「あ号作戦。ついに史上最大の機動部隊決戦が行われる。ミッドウェー島攻撃のおかげで新鋭機の問題を洗い出すことができました。搭乗員の習熟も急速に進んでいます」




「戦艦の改修も完了して防空は鉄壁を誇る。怖いものはありませんな」




「こちらは基地航空隊を大々的に投入できる。不沈空母もいるんだ」




「米海軍は100機を抱える新鋭空母を4隻と高速軽空母4隻を投入しました。これに簡易空母を加えれば一千を超える艦載機が殺到します」




 俄かに盛り上がり始めたところを若い参謀が冷却する。米海軍の用意周到ぶりには驚かされるばかりだ。アメリカンな民主主義と自由主義に基づく両洋艦隊法により正規空母を数十隻単位で計画する。持ち前の国力をふんだんに活用して短期間で正規空母に準ずる戦力を拵えた。軽巡洋艦の船体を流用した急造の軽空母を投ずる。さらに、民間船舶の設計を流用した簡易的な空母である護衛空母を大量建造した。ボーグ級とサンガモン級、カサブランカ級が同時並行である。アメリカンパワーを象徴する「週刊空母」が整った。護衛空母は単体の性能こそ正規空母に大きく劣るが数量を押し立てる。船団を日本海軍の潜水艦から護衛して海路の破壊を封じ込めた。




 米海軍の正規空母の搭載機数も相まって一千を超える艦載機が襲来する。いくらか誇張が含まれている数字だが、緩んだ士官たちを引き締めるに十分が過ぎていた。彼らは島嶼部の基地航空隊を不沈空母と称する。一千の艦載機に襲われた際のことは考えたくもなかった。一瞬にして黙りこくる。米海軍は刃を入念に磨いて零戦キラーのF6Fことヘルキャット、不撓不屈のSBDことドーントレス、復讐者たるTBFことアヴェンジャーが揃い踏みだ。




「我々は負けていない。地の利を最大限に引き出すんだ。機動的な防御を展開する」




「あ号作戦は海軍内の艦隊と基地航空隊の連携が重要です。敵はトラック泊地を狙うはずがラバウルやブーゲンビル、マリアナ、グアムを狙う可能性も捨てきれず。暗号解読や通信傍受など鋭意務めています。お互いに欺瞞情報を塗布し合っていますので、候補を複数個に絞り込むことが精一杯でした」




「それだけ敵空母の機動部隊は強力ですか。もっと叩いておけば…」




「米豪遮断作戦を強行されたことが痛かった。あれが無ければ攻略せずとも艦隊を沈められたのだが…」




「悔やんでも仕方あるまい。島嶼部の孤立は避けられた。副次的に敵新鋭戦艦を行動不能に追い込んで戦列復帰は間に合わない。これだけでも十分じゃないか。物事は前向きに捉えねば落ち込んでしまう」




「それであ号作戦の概要は定まりましたか。我々すら入れない会議では如何ともしがたくありました」




「すまん、すまん。こればかりは情報漏洩を恐れてしまってな」




 ギルバート諸島とマーシャル諸島を放棄した以上は決戦圏域の突出部である。トラック泊地が次の標的に設定されることは自明の理と言えた。日本海軍の大拠点を潰さねばグアムやフィリピン、東インドを奪還することは難しい。仮に奪還しても被害は甚大なものと見積もられた。したがって、トラック泊地を無視することはできずに無力化が必須になる。米海軍の大機動部隊を迎えるのではなく、機動的な防御と称し、自ら打って出るのだ。




「西村君に引き続き大和を預けるが分離しない。このまま連合機動艦隊に組み込むつもりだ」




「連合機動艦隊…良い響きです」




「西村君と角田君なら上手く指揮して見せよう。第一機動部隊は山口君を続投する。その他の艦隊に関しても適性を鑑みて配置の転換を考えた」




「あ号作戦に関しては」




「いかん、いかん。ズレてしまったな…」




 あ号作戦の内容は最上級の秘匿情報である。大和の会議室に封じ込めた。日本海軍も遂に情報戦の重要性を理解する。陸軍から幾度となく突っつかれてきた。米軍捕虜を尋問した際に暗号解読を知る。日本人特有の建前と本音を巧妙に織り交ぜるだけでなく、本当に秘匿すべき対象はメモの端切れに書き記すと手渡しだ。最後は焼却炉で塵と帰す。




「大和を総旗艦に防空巡洋艦と防空駆逐艦を纏う。機動部隊は大鳳型と雲竜型を配置した。我々は敵主力と真っ向から勝負を挑むが本命は別働隊の航空戦隊である」




「まさか、連合機動艦隊が囮とは思わない。米軍は我々の分析を誤った」




「ホテルと化していたことが変に作用しました。大和の出番がなかっただけと言うのに」




「それも考えものだが、まぁ、良い方向に働いてくれた」




「しかし、先手必勝です。こちらが先に発見しなければなりません。偵察機は間に合いますか。基地航空隊に司令部偵察機と飛行艇がいると雖も自助を疎かにすることはいけません」




「新型艦上攻撃機は偵察機を兼ねる。もちろん、中島の艦上偵察機が揃うぞ。あれは海軍機の中でも最速だ。司令部偵察機には負けるが、艦載機としては十分も十分」




 米海軍が準備を整えたのなら日本海軍も整えなければ無礼に該当した。いかに無法の戦争でも礼節を弁えることは忘れていない。新造艦が次々と揃うことに限らなかった。既存の大正期から運用される戦艦も含めて大なり小なりの改修が施される。艦載機もマイナーチェンジを繰り返して延命を図ることを止めた。かと言って、後継機を開発しては頭打ちが待っている。艦上偵察機を新規で設けるなど新規を惜し気もなく投じた。古き伝統に拘って動いては必ず負ける。温故知新を大切に古き伝統を保持しながら新機軸を知ることが重要なのだ。




「現在は調整の段階だが引き上げに伴い生じた余剰の人員を艦載機に転用したい。新兵を叩き上げるよりも遥かに早かった」




「なるほど、名案です」




「私だけが案を出してもつまらない。今日は缶詰だ。何でもいいぞ」




「それでは…」




 今日は大和で缶詰となろうではないか。




続く

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