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旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます  作者: 竹本田重郎


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第100話 山本大将の大作戦

「南太平洋で海戦が起こる前にオーストラリアを落としたい」




 つい先日に連合艦隊司令長官を降りた。山本五十六大将は予備役に編入されるわけがなく、かと言って、内地で年金を受け取るだけの隠居生活もいただけない。彼は最後の奉公として自らが艦隊を率いて米海軍を叩くことを宣言した。




 米海軍はハワイや本国に引き籠っている。母国の潤沢な資源と人員を活かして訓練に明け暮れた。新型機を多数受領してリベンジを誓う。正規空母は5本の指で数えられる昨年から本年は一転して大所帯に変わった。現地に潜む諜報員は新鋭空母のエセックス級とインディペンデンス級の到着を報じる。




「ニュージーランドの北島を拠点に潜水艦が南部まで浸透して通商破壊作戦は徹底されています」




「大陸国家は丸ごとが要塞をなしている。持久戦はドンとこいだ。陸軍に期待せざるを得ない」




「はたして、石原に期待できるのかと言いたいところ」




「オーストラリアは一時保留とする。石原曰く一週間もあれば落ちると言ってきた。ダメだったら大笑いするだけ」




 オーストラリアの状況はニュージーランド電撃制圧から好転し始めた。いかに大陸国家と雖も首都も空襲の脅威に晒されては堪らない。アメリカからの輸送は市民の目の前で潜水艦の雷撃に撃沈された。市民の不満は爆発して一刻も早く和平を結ぶべきと突き上げる。




 海軍はニュージーランドの北島に潜水艦母艦を含めた小艦隊を配置して通商破壊作戦を強化した。基地航空隊を進出させることができれば完全無欠の包囲網が完成する。陸軍のキャンベラ総攻撃と合わせてオーストラリアを脱落させた。南太平洋を掌握すればハワイひいてはアメリカ本土を窺える。




 しかし、アメリカ海軍は新鋭空母を贅沢に抽出した。南太平洋の制海権奪還を諦め切れない。ソロモン諸島の海戦から新鋭戦艦とリー少将、アリューシャン列島の海戦から旧式戦艦とキンケイド中将を長期離脱に追い込まれた。圧倒的な国力を振り上げて空母を多数も揃える。空母艦隊を率いるべき将兵という人材の発掘と育成も怠らなかった。さらに、ゼロファイターを圧倒できる新型艦上戦闘機、艦隊防空を破壊する新型艦上爆撃機、敵艦を確実に沈める新型艦上攻撃機の三拍子が揃い踏み。




「敵は南太平洋で試そうというわけですか。侮られたもので怒りすら覚えます」




「そうだな。我々の空母は精強を保っている。軽空母や簡易空母の喪失は痛かったが、新鋭の大鳳型装甲空母と雲竜型空母が登場しており、赤城と加賀、蒼龍と飛龍の大改修を終えた」




「改造空母の工事も順次完了しています。簡易空母は陸軍の特TL型も含めれば…」




「基地航空隊もある。大艦隊を動員しようと不沈空母の前に敗れ去りましょう」




「その意気だ。我々は負けん」




(いけないな。嫌な空気が漂っている。ピリッとした喝を入れたいが材料に欠ける)




 山本大将と参謀たちの楽観ムードは直近の新造艦の登場ラッシュに酔った。特に航空母艦は贅沢を極める。最新鋭の大鳳型装甲空母の一番艦と二番艦が登場した。イギリス海軍イラストリアス級と共通する装甲空母である。飛行甲板は木材ではなく装甲に覆われた。急降下爆撃に対して堅牢を誇る。大枠は翔鶴型を踏襲することで短縮を図るも飛行甲板の装甲化によって大幅な変更も否めなかった。大鳳型は搭載機数を減らした代償に重装甲とダメージコントロールを両立している。最前列の空母に置いて攻撃を敢えて集中させることで被害担当を与えた。大鳳型が攻撃を受けている間に既存と新規の空母は悠々と攻撃隊を発進させられる。




 蒼龍と飛龍を適切に簡素化した量産型空母の雲竜型も登場した。こちらは満州の造船区画で建造される。中型空母の完成形と適切な簡素化を徹底した。1年から2年という短期間の集中建造を可能にする。被弾に対する脆弱性や搭載機数の減少など欠点は指摘できるが数量で補った。主力の大鳳型と赤城、加賀、翔鶴型など正規空母を補佐する。




「信濃と土佐は未だ工事中ですが、1944年には間に合うでしょう。それまでに大規模な作戦が行われないことを切に願い…」




「失礼します! ギルバート諸島守備隊およびマーシャル諸島守備隊より!」




「これが先だ」




「敵艦載機の空襲あり、我が方の被害は軽微、敵空母艦隊は確認できず」




「意外な所を攻撃してきました。オーストラリアから注意を逸らす妨害の意図が読み取れます」




 太平洋中央部に位置するギルバート諸島とマーシャル諸島が敵艦載機の空襲を被った。現時点の被害は軽微で収まっているが意識外の奇襲攻撃にピリッと辛味を覚える。オーストラリア救出と南太平洋の制海権奪還に訪れると思いきやだ。大和の卓抜された指揮通信能力は現地守備隊の発した急報を確実に受け取る。




「おそらく、新造艦の試験も兼ねているはずだ。本格的な攻略は考えていないとも」




「前哨戦にも満たない。ただの準備として攻撃してきた」




「マーシャル諸島は陸軍の守備隊さんがいる。海軍が独断で動くことはできない」




「見殺しもあり得ません。何らかの動きを見せませんと」




「わかっている。石原さんに連絡を取れるか」




 ギルバート諸島とマーシャル諸島の価値はアリューシャン列島よりも低かった。海軍陸戦隊と陸軍が守備隊を務めて小規模ながら水上機基地も整備される。ウェーク島と連携して米軍の動きを監視した。目の上のたん瘤を切除することに加えてオーストラリアから注意を引こう。ハワイから近いこともあって新造艦の実戦を通じた最終試験を行うに丁度良かった。




 山本大将は連合艦隊司令長官から降りた以上は艦隊を勝手に動かせない。マーシャル諸島は陸軍の担当だ。本格的な攻略とは思えないが微動だにしないことも考えものである。まさに板挟みの恰好だが陸軍との連携は必須事項に挙げられた。彼を大和まで呼び寄せたい。陸軍のプライド以前に時間がもったいなかった。本艦の指揮通信能力を最大限に発揮しよう。




(お待たせいたしました。石原莞爾です)




「石原さん。報告は聞いていますね」




(もちろん、マーシャル諸島の守備隊には関東軍もいますから)




「単刀直入にお伺いしますが、どのように対処されますか」




(電話口で怖いですが、輸送用潜航艇を用い、守備隊の撤収を考えています。日本にとってマーシャル諸島の価値は失われた。タダで明け渡すことも癪です。工作は入念に敷きまして遊撃作戦も行います)




「陸軍が空母艦隊を攻撃できるのですか。海軍を素直に頼っていただいても」




(えぇ、頼るべき時は存分に頼りにさせていただきます。ギルバート諸島も同様に退くが吉です。オーストラリアはじきに落ちますので無駄な出費を避けるがよろしい)




「戦わずに去れと」




(数百名の将兵も立派な戦力です。ウェーク島に移せばよいのでは?)




「わかりました。太平洋の中央部から南部にかけて大規模な海戦が起こりえる。海軍は『あ号作戦』を発令します」




(よろしいでしょう。陸軍の出番はありませんので観戦させていただきます)




 ギルバート諸島とマーシャル諸島は放棄する方針に同意した。現地守備隊は放棄を転進と言い換えてウェーク島へ移る。敵艦載機の空襲が継続することを鑑みて水上艦ではなく潜水艦による輸送を予定した。




 単純に放棄しては癪なため破壊工作は入念に行おう。マーシャル諸島は陸軍の管轄に置かれた。陸軍はガダルカナル島に代表される焦土作戦を好む。さすがに島々を吹き飛ばすことは非効率なため古典的な罠を仕掛けた。




(それとメジュロには近づかないように厳命してください)




「メジュロ?」




(はい。米軍はメジュロを狙って来るので…)




 石原莞爾は全てを見透かしている。




続く

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