第二話 悪党登場
島を囲むは、白い砂浜。
寄せてけ、反ってけ、輝け、波々。
青い海ゆく波は白く砕けて。
砕ける激しい波は、天然の防犯装置。
泡立つ青くて広い海は、世界樹を抱く小島を守る。
「やたらと強い公爵とその執事は、いまなら留守だ。ドラゴンに乗って飛んでったのを見たからなっ!」
船の甲板で小島を眺めながら、やたらと鼻のデカい男が得意げに言った。
「へへへっ、船長。今なら世界樹の実、採り放題っすね」
子分の小太りの男が、薄ら笑いを浮かべていった。
「何言ってんだい。あの島には、もっといい物がたくさんあるぜ? 宝石に貴重な聖水。呪いのかかった財宝もあれば、呪いを解く財宝もある。貴重なポーションの作れる薬草が、雑草みたいに生えているし。それに人魚もいる」
船長の言葉に、子分が手を叩いて嬉しそうに言う。
「あー、人魚。攫ってくれば高く売れますね」
「そうだよ。人魚は鑑賞用としても売れるし、薬としても売れるからな」
海賊は悪い笑みを浮かべた顔を見合わせて、ニヒヒと気味の悪い笑い声をあげた。
寄せてくる波は高く、船縁に反り上がっては白く砕けていく。
小舟なら転覆してしまうだろうが、ドクロの旗を掲げた大きな海賊船なら、激しい波で泡立つ海も簡単に超えられる。
「いざという時のために、新しい船を作っておいてよかったぜ。船体は丈夫だし、燃料で動くエンジンもある」
「この船なら荒波も楽々ですねぇ、船長~」
「ああ、逃げ足も速いぞ」
「流石です、船長~」
手下におだてられて、船長は大きな鼻を更に膨らめた。
その海賊船がザザーと砂浜に突っ込んでくるのを、シャーリンとドラ美はヤシの木の陰に隠れてながら見ていた。
「どうしよう、どうしよう、セージョちゃんっ。悪い人たちが、来ちゃった」
アワアワするドラ美の横で、シャーリンは少し考えるように鮫の頭を傾けた。
「どうしましょう。聖女ちゃん、あの人たちで遊びたい」
「ダメだよ、セージョちゃん。大人がいないときに勝手なことをしたら」
爛々と目を輝かせて海賊を見るシャーリンの隣で、ドラ美は困った様子で眉を下げた。
そうしている間にも、二人が見守る先では、海賊船から続々と人が下りてくる。
「でも、大人が帰ってくるのは、もうちょっと後だよ?」
シャーリンは鮫の顔をドラ美に向けて言った。
ドラ美は青ざめ震え、シャーリンの言葉を聞いているようで聞いていない。
「あぁ、どんどん降りてくるよぉ……。パパとママがいれば、すぐに追っ払ってくれるのに」
海賊は、背の高いのもいれば低いのもいるし、太っているのも痩せているのもいれは、筋肉モリモリのマッチョもいた。
男もいれば女もいるし、年を取った者もいれば、未成年と思しき年若い者もいた。
「女の人もいるよ」
「男女平等だね」
ドラ美が意外そうに言うと、シャーリンは覚えたての言葉を口にした。
二人の前で海賊船からは、海賊が次から次へと降りてくる。
始めて見る人数の人間に、幼いドラゴンはピンクの体を青くして震えた。
「あぁ、どんどん増えるよぉ。セージョちゃん、どうしよう?」
「このままココにいるのは危ないね。ヤシの木を超えて、もっと奥に行かないと」
シャーリンは鮫の顔をキリッとさせて島の奥を指さした。
ドラ美は、さらに青ざめて震えあがった。
「えーダメだよ、セージョちゃん。子どもだけで世界樹のほうへ行っちゃダメって言われてるでしょ?」
シャーリンは丸くてウルウルした目でドラ美を真っすぐに見ると、小さな手をポンポンと親友の両肩へとそれぞれ置いた。
そして静かに言う。
「ドラ美ちゃん。それは去年までの話でしょ? 聖女ちゃんたちは、もう五歳。立派な大人よ」
ドラ美も、丸くて澄んだ青い瞳でシャーリンを見た。
「あたちたちは、大人……」
「そうだよ、行こ」
シャーリンが小さな手でドラ美の丸い手を掴むと、ピンク色したドラゴンはコクンと頷いた。




