表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済】悪女だった私は、記憶を失っても夫に赦されない  作者: ゆにみ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/83

エピローグ・アフター「もう、抑えられない」

ユリウス視点、エピローグの続きです。

 まだ、朝は静かだった。

 ミレイナの寝息が、小さく規則的に聞こえる。



 ユリウスは、そのぬくもりを腕に感じながら、目を細めた。

 この胸の中に、彼女がいる。それだけで、心が落ち着く。



 けれど――


 

 (……もう、限界かもしれない)



 昨夜、ミレイナは確かに自分を受け入れた。

 自分から求めてくれた。

 そして、ユリウスもまた、その想いに応えた。



 それは――“心”が交わった夜。



 (それで……充分なはず、なのに)



 けれど今、ユリウスの中に疼いているのは、もっと――

 本能的で、抑えようのない欲望だった。

 


 欲しい。

 もっと触れたい。

 もっと、奥まで彼女を感じたい。

 ただ抱くだけじゃ足りない。

 すべてを、ミレイナのすべてを、自分のものにしたい。



 (……どれだけ想ったら、満たされるんだ、俺は)




 無防備に眠るミレイナが、ふとまつげを揺らす。

 そして、小さく寝返りを打つように、ユリウスの胸元へと身体を預けてきた。


 その瞬間、呼吸が止まりそうになった。


 柔らかい髪が頬をかすめ、吐息が肌に触れる。

 それだけで、全身が熱を帯びてくる。




 (……くそ)



 駄目だ、抑えろ……まだだ……。



 

 「……ミレイナ」


 


 逸る気持ちを抑えるように、耳元でそっと名前を囁く。

 すると、長いまつげがふるふると震え、ゆっくりと瞳が開いた。


 


 「……ん、ユリウス?おはよう......」


 


 寝起きの声は甘く、熱を帯びている。

 その声音だけで、何かが決壊しそうになった。

 


 「......おはよう、じゃない」



 ユリウスは、かすかに息を吐いて言った。


 


 「そんな顔で寄り添ってきて……俺が、何も思わないとでも?」


 


 ミレイナが、瞬きをする。

 寝ぼけ眼のまま、少し頬を染めて口を開いた。


 


 「……ふふ、じゃあ、どうするの?」


 


 その一言で、もう理性は残っていなかった。


 

 ユリウスは、彼女の肩をそっと押し、ベッドへと沈めた。

 そのまま、迷いなく唇を重ねる。


 


 「……もう、我慢しない」


 


 ミレイナの目がわずかに見開かれるが、抗う気配はなかった。

 むしろ、彼女も同じように、望んでくれているのがわかる。


 


 「君が俺を求めてくれたこと、嬉しかった」


 「でも……次は、俺から君を求めさせてほしい」


 


 その声は低く、熱く、そして優しい。



 ミレイナは、何も言わず、ただ頷いた。

 その仕草があまりに愛しくて、ユリウスはそっと彼女の頬にキスを落とした。


 


 「もう一度、ちゃんと……俺のものになって」


 


 唇が、首筋へ。鎖骨へ。

 指先が、ゆっくりとミレイナの髪を撫で、背をなぞる。


 触れるたび、彼女の身体が小さく震える。


 


 「ユリウス……っ」


 


 甘く、震える声。


 その声が、ユリウスの最後の理性を吹き飛ばした。


 


 もう、誰にも触れさせない。

 過去がどうであれ、記憶が戻ろうとも、彼女はもう、手放さない。



 何度でも、深く、深く刻みつける。

 赦せない気持ちも残っている。けれど、愛することは、もう迷わない。




 (もっと……深くまで、君に俺を刻みつけさせて)


 


 「ミレイナ、愛してる……」


 


 そして――



 朝の光に包まれながら、

 ふたりはまた、心と身体を重ね合った。


 その時間は、静かで、熱くて、永遠のように甘かった。



ヒーローの感情激重っていいよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ