エピローグ
朝の光が、静かにカーテンの隙間から差し込んでいた。
薄い光に照らされて、ミレイナはまだ眠っている。
静かな寝息と、昨夜の余韻を残すように乱れた髪。
その寝顔は、どこまでも無防備で、どこまでも美しかった。
この手の中にあるのに、もっと深く、もっと強く、刻みつけてしまいたくなる――
(......重症、だな)
ユリウスは、そっと彼女の頬に触れる。
長く伸びた髪を指に絡めながら、囁くように微笑む。
「……ありがとう」
その声は、届かなくてもいい。
ただ、この胸の奥にある感情を言葉にしたくなったのだ。
赦せなくても、愛していいと思えた。
自分の手で、もう一度この人を――この“ミレイナ”を守りたいと、心から願った。
もし、彼女が記憶を取り戻したら――
きっとまた、傷つけたことを思い出して、自分を責めて、俺から離れようとするだろう。
でも、もう遅い。
それを受け入れられるほど、俺の気持ちは甘くない。
(――手放すつもりなんて、ない)
どんな過去があっても、どれだけ彼女が自分を責めても。
俺は、赦せなくても愛するって決めたから。
何より今の彼女だから、愛している。
それに――彼女が記憶を取り戻しても、前とはきっと違う。
それでも離れようとするなら……構わない。
俺が捕まえる。
ユリウスはそっと彼女の額に唇を落とし、誰にも聞こえないように囁く。
「もう……絶対に離さない」
その言葉のすぐあとで、彼女がかすかに寝返りを打ち、彼の腕の中に潜り込むように寄り添ってくる。
無意識の仕草だったかもしれない。でも、それが嬉しくて、たまらなかった。
朝が始まる。
ふたりにとって、ほんとうの意味での“これから”が。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
本編は一度幕を下ろしますが、書ききれなかったこと、書きたいことはまだまだたくさんあります!
番外編も不定期で更新予定ですので、またどこかでふたりの世界に触れていただけたら嬉しいです。
そして――
もしこの物語が少しでも心に残ったら、感想や評価で教えていただけると本当に励みになります。
読者の皆さんの声が、何よりの原動力です。
改めて、ここまで物語にお付き合いくださったこと、心から感謝します。
ありがとうございました!
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