表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済】悪女だった私は、記憶を失っても夫に赦されない  作者: ゆにみ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/83

56、いってきます

 両親と向き合ってから、数日が経った。

 あの日から、私は少しずつ、自分の気持ちと向き合っていた。


 鏡の前で呟いた「ちゃんと伝えられた」という言葉は、まだどこか不安定で、でも確かに“第一歩”だったと思う。


 


 いまの私は、まだ未完成で、不安もある。


 けれど、それでも――向き合いたいと思った。


 


 あの日、逃げずに言葉を伝えられたから。


 だから次は、過去に向き合う番だと思った。


 リシュアン様に、会おう。


 かつて私に執着し、そして今も過去に囚われている彼とーーきちんと終わらせるために。



 早速、私は手紙を書く。




 

 リシュアン様


 突然のお手紙、失礼します。


 建国記念パーティーでは、ありがとうございました。

 最後は、あんなふうになってしまって、ごめんなさい。


 あなたときちんと話がしたくて、

 お会いできる機会をいただけないでしょうか。



 ミレイナ・エルフォード





 手紙を送った後、返事を待ちつつ、私は心の準備をしていた。





 そして、ある日――

 手紙の返事が届いた。

 緊張で胸が高鳴るけれど、どこかほっとした気持ちもあった。



 部屋を出て邸の廊下を歩いていると、角を曲がったところで誰かとぶつかりそうになった。



 「……あら」


 柔らかな白銀の髪に、穏やかな眼差し――レオナルドお兄さまだった。


 兄は足を止め、じっと私の顔を見つめた。



 「おまえ、なんだか……変わったな」


 「……そう?」


 「表情が、違う。前より……ずっと、いい顔をしている」


 

 その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなる。


 


 「ありがとう、お兄さま」


 


 私は小さく微笑んですれ違いざまに呟いた。

 そして、振り返らずにまっすぐ前を見て言った。



 「――いってきます」



 背中に、何も言わずに見送る気配があった。

 きっと、お兄さまも分かっている。


 

 これは、“私自身の決着”だということを。


ブクマ&評価ありがとうございます!

とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ