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教会の神父さん

 数日が経った。治癒魔法のお陰もあって、コウイチの腹の傷はほとんど完治した。


「なぁ」


 コウイチはサピエルに話し掛けた。こちらの世界にやってきたときのような距離感を測りかねてるような感じではなく、親しげなクラスメイトのように。ここ数日で二人は会話を重ね、すっかり仲良くなったらしかった。


「なぁに?」


「そろそろ魔法適正?とやらを知るために教会に連れてってくれないか?」


「まだ完治してないでしょ?」


「いや、もうほとんど良くなったよ。」


 コウイチは見せつけるかのようにベッドから降りてジャンプしたり、適当に踊ってみせたりしたが、サピエルは心配そうに見守るだけだった。コウイチはそれを見て、がっかりしたような素振りを見せた。さピエルはいたたまれない気持ちになり、口を開いた。


「じゃあ、神父さんにお願いしてきてあげてもいいけど…。」


 「やった!」と喜ぶコウイチだったが、サピエルは付け加えた。


「くれぐれも、失礼はしないようにね。」


 そういってサピエルは、怪訝そうにコウイチを見た。そうして数分経ったのち、家をでて教会の方へ向かっていったのだった。



 教会のミロ神父は、噂を聞いた。フェルスティナの家に異邦人がいるだとか、そういう話しだった。わかっているのは外見上の特徴だけだった。その特徴を聞いてミロ神父は、遥か遠方の地へ働きに出た商人の記録に登場する、東国人の特徴と一致していると思った。


「ごめんください。」


 教会のドアが開いた。サピエル=フェルスティナだった。


「ああ、ミロさん、いてよかった。普段はあまりいないものですから。」


 教会にではなく、自分に用があると聞いて、普段の祈りではない、特殊な用事なのだとミロ神父は思った。


「えぇ、居ますよ。どのようなご要件で?」


「実は私の家に、身元のわからない男性がおりまして。」


「えぇ、知っていますよ。異邦人だとか言われている人でしょう?」


「ご存知でしたか、その男性が自分も魔法を使いたいと言い出したので、適性検査を行っていただけないかと思いまして。」


「別に構いませんよ。今からですか?」


「いつでも大丈夫です。ただ、本人はなるべく早いほうがいいと考えていると思います。」


「それなら、今やってしまいましょう。その男をここに連れて来ることはできますか?」


「はい。」


 ミロ神父は自身としても少しその男に興味があったので、請け合うことにした。


 数分後、腹に包帯を巻き付け、少しくたびれた服を着たその男、コウイチが教会の扉を開けた。サピエルと親しげに入ってきたその男に、ミロ神父は不思議な感情を抱いた。見た目は聞いていた通り、だが、異邦人特有の、旅行者気分的なものは感じなかった。


 一方、コウイチはミロ神父を見てテンションが上っていた。ミロ神父の見た目はツルツルの頭に、白い筆ヒゲを生やした、いかにもといった感じだったのだ。ファンタジーに憧れを持ちがちな高校生だった彼は、それを見てワクワクしないわけはなかったのだ。


「コウイチ アキムラです。今日はよろしくお願いします。」


「コウイチ アキムラ、私はここの教会で神父をやっております。ミロ=キレウスです。」


 二人はお互いに奇妙なものを感じながら、会合を果たしたのだった。

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