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聖女じゃないのに正常じゃない毎日

聖女じゃないのに正常じゃない日常-聖女じゃない私と黒い森の謎

作者: サッカ9

私はレイラ。

聖女じゃないけど、なんか最近「聖女扱い」されることが増えている。

魔法が少しだけ使えるだけの田舎の平民なのに、なんでだろうね?

私はレイラ。

聖女じゃないけど、なんか最近「聖女扱い」されることが増えている。

魔法が少しだけ使えるだけの田舎の平民なのに、なんでだろうね?


そんな私、今日も畑で働いていた。

冬の間に溜め込んだ土を耕し、夏の準備をする大事な日。


「レイラ! 領主様が呼んでるぞ!」


村の青年が走ってきて、私を呼ぶ。

領主様が呼ぶって、嫌な予感しかしない。


領主館に向かうと、領主様が眉をひそめながら私を迎える。

なんでも、村の近くにある「黒い森」で奇妙な事件が起きているらしい。


「森に入った家畜が戻らないんだ。それに、人も数人行方不明になっている」


「私に何をしろって言うんですか?」


「聖女なら呪いを解けるかもしれない、と思ってな」


聖女じゃないって言ってるのに…。


しかし、村人が困っているのを放っておけないのが私の性格だ。


「分かりました、行きます。でも危険なら逃げますよ!」


翌日、森の入り口で村の猟師ジミーと合流。彼が案内役だ。


「レイラ、あまり奥に行かないほうがいいぞ。

この森は呪われているって昔から言われてる」


「でも原因が分からないと困るんでしょ?」


「そうだけどな…」


森の中は湿っぽく、異様な静けさが漂っている。葉の揺れる音ひとつ聞こえない。


しばらく進むと、地面に散らばった動物の骨を見つけた。

何か大きな捕食者がいるのか?と思った瞬間、背後から低い唸り声が聞こえた。


「ジミー! 後ろ!」


振り返ると、漆黒の毛皮を持つ巨大な狼が私たちを睨んでいた。

その目は血のように赤く、普通の動物とは明らかに違う。



ジミーが弓を構えるが、狼は驚異的な速さで襲いかかる。

私は反射的に魔法を使い、狼の動きを一瞬止めた。

その隙にジミーが矢を放ち、狼を追い払う。


「レイラ、今の魔法、すごかったな」


「ただの気まぐれだよ。それより、あの狼は普通じゃない…」


さらに奥へ進むと、森の中心に不気味な古い祠が現れる。

その周囲には、黒い霧が漂い、生き物が寄り付けない空気が漂っていた。


「ここが原因だな…でも、どうやってこれを解くんだ?」



祠の中を調べると、古びた石板が見つかる。

そこには「森を守るための契約」のようなものが書かれていた。


かつてこの森は精霊たちが住む場所で、村人たちはその恩恵を受けていた。

しかし、精霊との契約を破ったために呪いが生じたらしい。


「これ、どうすればいいの?」


その時、黒い霧が形を変え、人の姿となった。

長い白髪と透けるような体を持つ女性が、私を見下ろしていた。


「契約を破った者たちがこの森を汚した。我々の怒りを鎮めるには…」


精霊は、呪いを解くためには「精霊の心を繋ぎ止める存在」が必要だと言う。

それができるのは「聖女」の力だというのだ。


「いやいや、だから私、聖女じゃないんですよ!」


「だが、お前は他者を想う力を持っている。それが精霊の心を動かすかもしれぬ」


仕方なく、私は精霊たちに語りかけることにした。

森を守りたい、村を救いたい、そして自分にできることはしたいと願いを込める。


精霊たちは静かに耳を傾け、最後に一言だけ呟いた。


「お前の願いを聞き入れよう。ただし、再び契約を破れば次は無い」


精霊が消えると同時に、森を覆っていた黒い霧が晴れる。

先ほどの狼も姿を消し、祠の中の空気が温かく感じられた。


「レイラ、お前、本当に聖女なんじゃないか?」


「違うってば! ただ、精霊が優しかっただけだよ」




村に戻ると、行方不明だった村人たちも無事に帰還していた。

みんなから「聖女様!」と呼ばれたけど、やっぱり違うんだよな…。


「レイラ、お前がいてくれて本当に助かった」


「もう、こういうの勘弁してほしいんだけど」


それでも、困った人を見て見ぬふりができない自分がいる。

だから私は、またどこかで「聖女じゃないけど頑張る」んだろうな。

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