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妖古書店一話「間違い」

「なあ、知ってるか?」


茹だるような暑さの日、冷房の効いた放課後の教室でいきなり問いを投げられた。

俺の名前は柊碧斗(ひいらぎあおと)。何処にでもいる高校生1年生で、昨日と同じ今日を過ごしている。そして物語の冒頭シーンみたいな事を言っているのが俺の友人である朝霧優(あさぎりすぐる)である。

俺は人とお喋りするのが得意ではないのだけれど、数少ない友人を失う訳にはいかないので、

億劫だが返事をすることにした。


碧人「それで分かる奴は居ないと思う。」

優「噂だよ、あの古書店でお化けが出たって!あまり広がってないみたいだけど、、それで相談があるんだが?、、」

碧人「行かないぞ」

優「却下だな、あんな所に一人で行けってか?冗談言うなよ相棒!時間は今日の20時、俺がお前を迎えに行くから準備しとけよ!」


相棒と呼ばれるのは違和感しかない。さぞ幼い頃から一緒に居たかのように話して来るが、出会ってまだ数ヵ月だ。だがこんな不愛想な俺を友人として扱ってくれる優を無下に扱う事はできない。


碧人「、、、分かったよ、言いたいことは山程あるけどこうなったら聞かないからな、準備しておくよ。」


そう。優は何時も人の言うことを聞かない。

良く言えば言ったことは必ずやる

悪く言えば頑固者

だがそんなところに助けられているので文句は言えない。しかし俺の貴重な家での時間が潰れてしまったのは誤算だ。ゲームしながらのアニメ鑑賞が、日々の原動力だというのに。

その後俺は帰路についた。親に友達の家に泊まってくると嘘をつき、服を着替え、用意されたご飯を食べた。適当に時間を潰していると時間が来たので、外へ出ることにした。

玄関の扉を開け外へ出てみると、優がすぐそこまで来ていて声を上げた。


優「行くぞ!碧斗!」

碧人「分かったよ、今行く」


そうして玄関の扉を閉めようとした時に、母が言った。

母「あら、、迎えに来てくれていたの?ホントに良い子ね。優君は。いってらっしゃい、碧人。気を付けるのよ」


この時に行くのを止めていれば俺は後悔をしなかっただろう。ただ俺に未来を視る力なんて無く、ここで引き返すなんて出来なかった。


夜になると昼の様な暑さは無く、むしろ心地良ささえ覚える。俺が夜の風景を堪能していると、優が話しかけて来た。

優「田舎の夜って落ち着いてて良くね?俺は都会に出たとしても、田舎に戻りてぇってなると思う。」

碧人「それは、、なんとなく分かるよ。外に出るのは少しダルいけど、こうして夜風に当たるのは気持ちの良い物だな。」

優「分かってんじゃん。あと10分くらい歩いてたら着くと思うぜ。」

碧人「え、まだそんなにあるのかよ。俺は歩くのも運動するのも嫌いだぞ。」

優「学校以外で外に出ることのない碧人なら当然かもな。」


道中、俺達はその古書店について優に聞いてみた。


碧人「優、実際に出たって前に言っていたよな?他に何か情報は無いのか?知ってるとは思うが俺はリアリストだからな。常識的に考えてお化けなんてものが居る訳ないって思ってるし、そのお化けを見たって人も信じてない。何かの勘違いだとも思ってる。」

碧人「まあ、そうだわな。俺も少しだけそうじゃないかと思ってる。でもさ、本当にあの古書店で何か不思議な事が起きていて、それに関われるかもしれないって考えたらさ、体がもう動いてたよ。」


俺は素直に思う。本当に行動力がある奴だなと。どこからその活力が湧くのかと。

適当に雑談している内に、噂の古書店に着いた。見た目は結構汚く、ツタが伸びていて黒ずんでいる。手入れがされていない事が一目で分かった。住むどころか、店をやっているかどうかも怪しい。ただ、小さな窓ガラス越しに何かが見える。普通の漫画よりも大きい、古そうな本が並んでいる。なるほど。店がやっていなくても、古書店というのが分かる。店の周りをぐるりと回り、俺は優に言った。


碧人「一応聞くが、ここか?もしかしてこの店に入る気か?、、鍵も掛かってるだろうし、普通に不法侵入だし帰らないか?この雰囲気で何か物音でもしたら、お化けが出たって思うやつも居るだろう。噂は所詮噂。噂が独り歩きして尾ひれか何か付いたんだろうさ。良くあることだ。」

優「まあ俺もそう思う。満足したよ。もう帰ろうか。碧人は泊まるって言ってあるんだろう?だったら最近買ったゲームを一緒にしようぜ」


良かった。「このまま窓でも割って中に入ろう」とか言って来たらどうしようかと思った。内心少しだけ、俺は怖かった。田舎の夜は不気味な程静かだ。スマホの光じゃ遠くまでは見えない。精々足元を照らす程度だ。視界が悪い分、その他の五感が研ぎ澄まされる。特に聴覚だ。「耳が痛いほどの静寂」とはよく言ったものだ。無音すぎるのは辛い。回れ右して帰ろうとしたとき、あのバカはあろうことか、その古書店の扉のノブを回していたのだった。


「カチャ」


勘弁してくれ。不用心すぎる。。帰るモードだったはずのバカはもう居ない。冒険者モードに完全にシフトチェンジしていた。


優「まじか。。!!開いたぞ!これはもう行くしかないね。最悪人に見つかって怒られても大丈夫。俺ら高1だぜ。やんちゃで済む。さあ相棒、一つ夜中の冒険と洒落こもうじゃないか!」

碧人「。。。はあぁぁ。。俺怒られたくは無いんだけどな。。。」


この時、俺の中のブレーキは壊れていたのかもしれない。最悪、人に見つかっても怒られて済むと、高を括っていたのかもしれない。俺達を見つけるのが人だったらどれだけ良かっただろうか。今は知る由もない。俺達二人はその妖しい古書店を、スマホのライトを頼りに散策するのであった。

初めまして、でんりょくと申す者でございます。私は小説を書くの事態が初めてで、至らない点が多々あると思います。そんな素人が書いた物語を見て、少しでも貴方を楽しませられたら幸いです。因みに、「妖古書店」は「あやかしこしょてん」と読んで頂ければと思います。

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