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第7話 ギルド。



宿に戻った俺たちは、リリアも交え風呂事件(仮)について話し合った。



結論的に言うと、弟子が師匠の背中を流しただけ、というリリアの言葉にフィオが折れ、今回限りは許すということになった。



それでも不満顔なフィオに、理不尽な言葉をグチグチ言われた俺ではあるが、殴られなかっただけマシだと潔く聞いてやった。



さてさて、時間的にはまだ昼前。朝飯を食べていない俺たちは、とりあえず何か食べようと宿を出た。



俺の場合、昨日からほぼ何も食べていない。腹の虫が暴れ回るのを手で撫でながら、湧き出てくる唾を飲み込む。



町の中を歩いていると、もうすぐ昼時ということもあってか、食べ物特有の食欲をそそる匂いがそこら中に漂い始めていた。



「うぅ〜。どこでもいいから早く何か食べたいのぉ」


「・・・・・マスター。解っているとは思いますけど、私たちの残金はほぼ宿代に消えてるんですから、なるべく安そうな所を探してくださいね?」



「・・・・・・なぜこんなにも金がないのじゃ・・・まったく・・・・」



むむ・・・今の台詞は聞き捨てならんな。



俺は嫌味を込めながら呟く。



「・・・・二人のせいだろ?」



そんな呟きを聞いた二人は、あからさまに動揺したような表情を顕〈あらわ〉にした。



「し、仕方ないではないか・・・・・お、おぉ、何かいい感じの店を見つけたのじゃ!」



「そ、そうですね!早く行きましょう!お腹と背中がくっつきそうです!」



俺から逃げるように走っていくリリアとフィオ。



そう。俺が寝ている間に、リリアとフィオは二人で買い物を楽しんだらしい。



その時に、珍しい魔導書を見つけたとかなんとかで、旅の為に貯めていた資金を殆ど使ってしまったらしいのだ。



「・・・・・・魔法オタ共め」



俺は苦笑しながら二人の後を追った。






☆☆☆☆






「・・・・無くなったのぅ」



「・・・そうですね」



フィオが見つけた食堂に入り、メニューを見るとどれも手頃な値段だった・・・・・らしい。



俺はこの世界の通貨などについては全く無知である。


とりあえず注文はリリアとフィオに任せて、満足できるくらいには食べた。



しかし、店を出ると同時にフィオとリリアが肩を落とした。



理由は言わずともわかるはずだ。



そう。残金がほぼゼロになってしまった。



「・・・真剣にこれからどうするんだ?」



店の前で打ち拉がれる二人に問う。このままじゃあ魔王の魔の字に会う前に野垂れ死にかねない。



「・・・・ふむ。ギルド、しかないかのぉ」



「・・・・・・ギルド?」


リリアの言葉に、俺は首を傾げる。



「まぁ、簡単に言うなら依頼者とその依頼を受ける人を繋ぐ場所、ですね」



フィオの説明に、ふむ、と頷く俺。



某モンスターを狩るゲームにも似たシステムがあった。そう考えたらわかりやすいな。



「なるほどな。・・・・・・って、そんな場所あるんなら最初から行こうよ」



俺の言葉にう〜と唸るリリア。



「嫌、なのか?」



「・・・・・・うぅむ・・・・・」



リリアは、あからさまに嫌な顔をする。



「あれですよ。マスターはバカにされるのが嫌なんです」



俺の疑問にフィオが答える。



「バカに、される?」



言葉の意味がわからず俺が眉を顰めると、「行けばわかります」とフィオが苦笑しながら答えた。



「背に腹は変えられぬか・・・・・・」



小さくため息をつきながら、リリアもフィオの後を追う。俺もその後に続いた。





☆☆☆☆






ギルドの建物の前に着いた俺たちは、「やっぱり帰る!」と言い出したリリアを押さえ込み、建物の中に足を踏み入れた。



中は思ったよりも清潔感があり、少し驚いた。



人もわりかし居て、見るからに強そうな人もかなり居る。



俺はキョロキョロ辺りを見回しながら、武器を持つ人や、見たこともない生き物を連れている人を見ながら胸をときめかせた。



これぞファンタジーって感じで、滅茶苦茶ワクワクする。



ドラ○エやファイナルファン○ジーといったゲームが身近にあった世代としては、興奮せずにはいられないシチュエーションである。


「リョウ、恥ずかしいから、もうちょっと自重してくれませんか?」



そんなフィオの言葉にハッと我に返ると、何人かが俺を見て笑っているのに気付き、恥ずかしさのあまり顔を伏せた。



「・・・・ギルドに登録したいのじゃが」



リリアがそう言うと、受付にいたお姉さんが営業用スマイルを振りまきながら、ギルドについての説明をし始めた。



結構すんなりと登録が進んでいく。



俺は恥をかいたものの、リリアが何をあれほど嫌がっていたのか全く思いつかない。



「ギルドはDランクからSランクまであります。最初はDランクから始めて、依頼を一定数こなすか、ギルド指定されている魔物を倒せばランクが上がります。ギルドでは、自分のランクより最高で2ランク上の依頼まで受けることが出来ますが、無理はしないようにしてくださいね」



「ふむ、さっそく依頼を・・・・・」



「あれ?えっと・・・・・・リリア・ダーカムーン様ですよね?」



受付のお姉さんの一言にリリアが固まる。



「ち、違うのじゃ・・・・わ、我の名前は」



「あれ?リリアの本名ってそれで合ってるんじゃ」



リリアが否定したことに疑問を抱き、質問してみる。


「う、うるさい馬鹿者めッ!!」



すると、リリアが顔を赤くして怒り始めた。



俺が首を傾げていると、受付のお姉さんがにっこりと満面の笑みを浮かべ、一枚のカードを差し出してきた。



「長い間ギルドの方へ身分証〈ギルドカード〉が保管されていましたので、少しは手続きが必要になると思われますが簡単に済むと思いますよ。では、お連れの方はこちらの紙に詳しい事項を記入してください・・・・・・クスクスッ」



そう言って微かに笑いながら奥の方へと去っていく受付のお姉さん。



リリアは悔しさのあまり目に涙をためながら、俺とフィオが渡された紙より簡易になっているソレに文字を書き散らかす。



「どういう事なんだ?」



答えてくれないリリアから視線を逸らし、フィオに質問してみる。



「実はマスター、先代から幼少期にギルド登録をさせられて、その時に体力作りだと言って草むしりの仕事ばかりさせられたらしいんですよ」



フィオは苦笑しながら語る。



その時、たまたま来訪していた何処かの国の王様が、そんな幼気〈いたいけ〉なフィオに“草刈りの御娘〈くさかりのみこ〉”という称号を与えたんだとか。



当初こそ本人は喜んでいたが、年を重ねるにつれ流石に恥ずかしくなっていたらしい。



しかも、ギルドカードにもしっかりとそれが記載されているんだとか。



・・・・なるほど、なんとなくギルドに行きたくないと言っていた理由がわかった気がする。



確かに、“草刈りの御娘”なんて田舎臭い二つ名より、厨二的な二つ名の方がよっぽどマシだ。



なんせリリアは魔法使いだからな。



俺はフィオの話を聞いて苦笑しながらも、小さい頃はリリアも苦労してたんだなぁ、と、リリアが我儘〈わがまま〉な理由をなんとなく予想することが出来た。



きっと、子供の頃に我儘が許されなかったが為に、今その反動がきているんだな、と一人納得する。



しばらくして戻ってきた受付のお姉さんに紙を渡し、それから数分後にはギルドカードが完成した。



俺は少し熱の籠もった目でそれを受け取ると、不覚にも、ニッコリと笑みが零れるのを抑えきれなかった。


だって、誰かと一緒に何かを作るなんて初めてだったから。



作るものが、ギルドカードというたくさんの人が共有しているものであっても、誰かと一緒に同じものを作る、とか、友達がいなかった俺としては、有り得ない、それこそ夢みたいなものなわけで。



笑みを抑えようと思っても、制御がきかない。



「・・・・・むむぅ・・・・リョウの顔を見ていたら、我の二つ名なぞどうでもよくなってきたわ」



ギルドカードを受け取ったリリアが、ボソリと呟く。


フィオがそれに同意するように頷き、今だにニコニコしながらカードを見つめているリョウを見てつられたように笑う。



「二つ名があるだけでも名誉なことなんですから、いつまでも気にしちゃダメですよ、マスター」



「うむ。覚えておこう」



二人は互いに笑みを交わすと、トリップしているリョウを放置して、手頃な依頼がないかを受付のお姉さんに問うのであった。






名前 リョウ・ユリシマ

性別 男

ランク D

称号 なし

所属チーム なし




名前 リリア・ダーカムーン

性別 女

ランク C

称号 草刈りの御娘

所属チーム なし




名前 フィーネ・オリシェール

性別 女

ランク D

称号 なし

所属チーム なし




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