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第25話 最後の一時。

えぇ、そうですね。               すんません!!  



この話が最終といいながらも、まだ続くという罠。             大丈夫です。次、次こそはまとめます(`・ω・)キリッ



「魔王様のお通りだぁ!」


俺が魔王側に来てからはや二週間。



親衛隊の皆とも少しは親しくなり、だいぶ魔国に慣れてきたある日。



俺は魔国の中を歩く御輿〈みこし〉の上から、下の方で手を振っている魔族の人たちに手を振り返す。



なんと、今日はルルちゃんの18歳の誕生日らしい。



国をあげてそれを祝い、俺も参加させてもらえることになった。



まぁ、御輿に乗って魔国内を動き回りながらパレードじみたことをするだけであるが。



俺としては、御輿を見上げながらルルちゃんに手を振るのもいいかなぁなんて思っていたんだが、どうしても隣に座ってほしいと懇願されてお言葉に甘えることに。



でも、魔王の隣に座るって俺どんだけ偉いんだよ。



なんかとてもいたたまれない気持ちになる・・・・・。



「おいっ!しゃきっとしろ!」



そんな俺の横腹を、親衛隊のムマちゃんがつつく。



なんとムマちゃん、親衛隊の隊長らしい。



人は見かけによらないな。


こんなガサツな子が隊長なんて部下が不憫でたまらない。



「うん。わかってるよ」



俺は返事を返し、しゃきっと表情を引き締めた。



「・・・・うっ・・・・・・や、やれば出来るじゃないか。ルル様の隣にいるのだから、しっかりやってくれよ」



うっ・・・てなんだよ。



そんなに真面目な顔似合わないかなぁ、俺。



「大丈夫だよムマ。お兄ちゃんはあたしの旦那様なんだから好きにしてて」



おい、待て待て待て。



「なぁムマちゃん。俺、旦那様?」



「そうだよ。おばばが早く孫の顔が見たいって言ってたし、あたしはお兄ちゃんしか男の人知らないから。だからお兄ちゃんがあたしの旦那様」



見かけによらず、ちゃんと歳相応の知識があるらしいルルちゃんは頬を微かに染めながらそんなことを言った。



くっ・・・・おばばめ余計なことを。



ちなみに、おばばというのはルルちゃんの教育係のばあちゃんである。



見た目は40代くらいの気のいい主婦って感じだが、実年齢は500ほにゃらら歳らしい。



いやぁ、魔族ってのは色んな意味で恐ろしい生きものだ。



「ルル様!あのおばばは冗談が好きですからあまり気にしてはいけません!ルル様がそんな・・・・男と契るなど・・・・・・えっちなのはダメですよ?」



ムマがそう言うと、ルルちゃんはプクッと頬を膨らませた。



「お兄ちゃんなら大丈夫だもん!・・・・・・・たぶん」



「ほらルル様。たぶんなんて中途半端な気持ちで契りなど交わした日には後悔することになりますよ?」



「・・・・・・・・あたしは行き遅れたくないもん」


「・・・・・・ルル様。少しお話ししましょうか」



そういってはしゃぐ二人を見ながら、俺は苦笑する。


こいつら、今パレード中ってこと忘れてるんじゃねぇか?



こんな、見た目は人間たちとなんら変わりのない魔族ではあるが、やはり人間たちとは相容れないらしい。


・・・・・・俺は別として。



何度平和に話し合いを、と提案したことか。



俺はリリアたちとは戦いたくないし、戦っても勝てる気がしない。



けど、長年の遺恨というのはなかなかに残り続けるものである。



多くの魔王が、勇者、つまり人間たちに殺されているのだからその気持ちは察することは出来る。



きっと俺なんかじゃ理解できないくらい、魂レベルで人間を恨んでいる魔族がたくさんいるだろう。



だからどうしても人間と魔族は争いを止めれない。



さて、どうしたもんか。



俺は足りない頭で、必死に考える。



もう、時間がない。



わがままかもしれないけど、誰も死なない方法を考えよう。






☆☆☆☆






「う〜んと、リョウってば弱いからこれくらい貸してあげないと面白くならないよねぇ」



世界の意志は、父が作った最強の剣を抱き抱えながら微笑む。



この剣は昔、多くの勇者が倒せないほど強大な、暴君と呼ばれた魔王を倒すべく、神である父がとある一人の勇者に贈ったものである。



それは勇者を召喚した国の奥深くに眠っていた。



警備がどんなに厳しかろうと、世界の意志である彼女に行けない場所は、この世界にはない。



「これがあれば、きっといい勝負をしてくれるよね。・・・・・・楽しみだなぁ」



世界の意志は、本当に楽しそうに、そして無邪気に笑うのであった。






☆☆☆☆






魔王の誕生祭から二週間がたった。



今日で、俺がこちら側に来て1ヶ月になる。



世界の意志から受け取った剣を腰に下げ、俺は魔王の城から外を眺めていた。



魔国を守るようにして生えている木々が次々と倒れていく光景が目に入る。



いよいよ、決戦の時だ。



「じゃあリョウ。期待してるからね〜」



そう言って俺の肩を叩くのは、“元”世界の意志。



なんでも、神様から家に帰ってくるなと言われたんだと。



しかも、世界の意志としての力はほぼ封じられてしまい、今は少し魔法が使える程度の女の子とそう変わらないらしい。



本人はあまり気にしていないように振る舞っているが、この国に来たときはだいぶ落ち込んでいた。



「私が一体何をしたって言うの・・・・・」なんて愚痴がちらほら聞こえてたからな。



妙なフラグを立てないように、気をつかいながら励ますのはかなり骨が折れた。


まぁ、そのかいあってか、今では前の元気をだいぶ取り戻しているみたいだ。



「・・・・まぁ、やれるだけやってみるさ」



俺は緊張を含んだような笑顔で答え、気を引き締める。



実際、緊張していないと言えば嘘になる。



これから俺は、この世界を守りたいというエゴの為に、沢山の勇者を手にかけるのだから。



ーーーーーーー大丈夫、俺なら出来る。いや、やってみせる。



自分にそう言い聞かせ、俺は足を踏み出した。



「・・・・・・危ないぞ?」



そんな俺の横に、ぴったりとついてくる世界の意志。


ルルちゃんは今、大事な会議を開いておりこの場にはいない。



「大丈夫大丈夫。それに、何かあってもリョウが守ってくれるでしょ?」



そんな世界の意志の言葉に、俺は苦笑する。



この魔国へ来た当初とは違い、だいぶ人間らしい感情を見せるようになった世界の意志。



神に近い彼女がそうであることがいいことなのか悪いことなのか、俺にはわからない。






☆☆☆☆






「やっぱり、この国に来て正解だったなぁ」



世界の意志は、独り言のように呟き、そして微笑む。


唯一安心して身を置ける地がこの魔国であることは、元世界の意志である彼女にはよく理解できていた。



他の国ではだいぶイタズラもしたし、場所によっては指名手配なんかもされてたりする。



(お父様が私を追放した理由、少しわかった・・・・・かな)



懐かしむように少し前の自分を振り返り、子供だったなぁと感傷に浸る世界の意志。



「・・・・・・だからこそ、だよね」



ついさっき、会議の部屋に入っていった彼、リョウのことを思い出しながら世界の意志は笑う。



落ち込んでいた自分を励ましてくれた彼。



どんなに辛く当たっても、大丈夫の一言で許してくれた彼。



そんな彼を、自分がまいた種であるとはいえ、つまらない戦なんかで死なせたりしたくない。



世界の意志は、神である父から教わった言葉を口にしてみる。



「一番大事なのは、力でも権力でもない。世界を変えるのは、小さな愛とそれに伴う勇気。そして笑顔で人を許せる優しさだ・・・・・・かぁ」



昔は理解出来なかったその言葉も、いまならわかる。


リョウの優しさに触れて私は変わった。



愛ってのはよくわからないけど、リョウに対するこの気持ちが、私を変えた。



うん。大丈夫。



私は、世界の意志としての力がなくても、きっとリョウの役に立てる。



そう誓った世界の意志は、父しか知らないあのことをリョウに伝えようと決心する。



(私の、本当の名前。世界の意志としてじゃない、私が私であるためのたった一つの名前・・・・・・にゃはは・・・・)



神の娘である世界の意志がその名を教えるということは、結婚のプロポーズのそれとほぼ同じ意味である。



(・・・・負けない為には、誰よりも早く既成事実を作らないとね)



リリアやフィオの悔しがる顔を思い浮かべながら、笑みをより一層深くする世界の意志。



世界の意志はリョウが会議室から出てくるのを心待ちにしながら、鼻歌を口ずさむのであった。




はい。次回がラストです。

そして中途半端に終わらせたい病が発症しかかっています。                     助けてえーりん!

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