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第18話 罪の意識。

なんとか週1更新できそうです。  

学校に慣れないとやっぱきついなぁ・・・・・。そして少しグダグダになった予感ががががが



「うし、そろそろ戻るか」



涼がそう提案すると、シオンは同意を示すように頷いた。



「そうですね・・・・あの人たちに会うのは気が引けますが・・・・・主・・・憂奈様がどうなっているのかも気になりますし」



はぁ、と大きくため息をつくシオン。



シオンは後ろ髪をひかれるような気分で、船内へ戻っていく涼の後ろに続いた。





☆☆☆☆






さて、リリアたちがいるであろう部屋の前まで来たはいいが、そこで俺は身体を一時停止をさせた。



滅茶苦茶嫌な予感がする。


俺の頭の中で、警戒を促すように警笛がなり、冷や汗がダラダラと流れ始める。


嫌な予感がするのはシオンも同じようで、俺と同じようにかなり汗をかいていた。



「・・・・リョウさん。僕は島に着くまでの間、甲板で語らい合っていた方がよかった、なんて思っているのですが」



「・・・・・・奇遇だな。俺も同じ意見なんだが」



しかし、もしリリアたちを待たせていたなんてことになったら更に機嫌が悪くなるかもしれない。



そんなことになったら、どんな仕打ちを受けるか。



俺はゴクッと唾を飲み込み、勇気を振り絞る。



「・・・・とりあえず、様子だけでも見ようか」



「そう、ですね・・・」



俺とシオンは頷き合うと、ゆっくりと部屋のドアを開く。



・・・・・・・・・・・・・・・バタン。



「よし、逃げようか」



なんか憂奈ちゃんとリリア&フィオが、殺る気を身体中に漲〈みなぎ〉らせながら向かい合っていた。



きっとこれは良くないことが起こる。



「そうですね。うん、憂奈様には悪いですが、早々に逃げましょう」



シオンが俺の言葉に大きく頷いた。



俺とシオンは、後ろを顧〈かえり〉みることなく駆ける。



ドゴォォォォン!!



数十秒後、まるで大きな何かがぶつかったような轟音とともに、船が揺れた。



俺とシオンが、息を切らしながら甲板に到着した・・・・・時には全てが手遅れだった。



船が停泊する予定であったろう港を目の前に、まるでかの有名なタイタニック号のように、俺たちを乗せた船は海に沈み始めた。






☆☆☆☆






あの後、船乗員〈クルー〉の人たちの迅速な行動によって、乗客は無事に緊急用の小舟に収まり、誰一人水に濡れたものはいなかった。



その小舟の中で、俺とシオンは二人で旅に出ようと真剣に話し合ったが、いつの間にか同席していたフィオ、リリアの反対に押し切られてしまう。



ちなみに、船が沈んだのは“原因不明”ということになった。



沈んでいく船を見つめながら、絶望したような顔をしている船長を見ると、事実を知っている俺とシオンの心は酷く痛んだ。



「・・・・では、この辺りでお別れですかね」



港がある小さな漁村を抜けて少し行った所に、左右に別れている道があり、そこで俺とシオンは握手を交わした。



イケメンで多少ムカつく奴だったが、別れとなればそれなりに名残惜しいものである。



「・・・元気でな」



「・・・・そちらこそ」



お互いに微笑み合い、俺たちは右の道へ。



シオンたちは左の道へ歩きだす。



しかし、小舟から降りて、ずっと無言を通し続けている女性陣が動こうとしなかった。



気のせいか、憂奈ちゃん側の女性陣が暗い。



何かあったのだろうか?



俺は、あの3人が放つ雰囲気にさらされるシオンに少し同情しながら、そのまま足を進める。



「・・・・・涼、君」



と、不意にそう呼ばれて振り返ると、憂奈ちゃんが俺に抱きついてきた。



「なっ・・・・・・!?」


突然のことに唖然とする俺。



他の女性陣も、それぞれ唖然としていた。



「憂奈は、本当に涼君のこと大好きなんだからね?」


憂奈ちゃんが俺の耳元に口を寄せ、そう呟いた。



途端、俺の背筋が、こそばゆさのあまり少し震える。



「なっ・・・・何をしておるのじゃ!」



リリアが、今にも飛び掛からんと言わんばかりの形相で憂奈ちゃんを睨んだ。



「憂奈は、確かにあなたたちに負けたよ?けど、だからって涼君を譲る気なんてないんだから」



憂奈ちゃんはそう宣言するとともに、10cmもないくらい至近距離まで顔を近付けてきた。



「涼君、憂奈に、ちょうだい?」



憂奈ちゃんはそう言うと、頬を赤らめ、目を潤ませながら俺の顔に自分の顔を少しづつ近づけてきた。



俺はそれに抵抗することもせず、ただただ少しづつ鮮明になってくる憂奈ちゃんの顔を見つめる。



誰かの悲鳴にも似た声が聞こえたが、ポーッとなっている現在の俺の頭では、何も考えることが出来なかった。



唇に他者の温もりを感じ、胸の奥で何かが疼〈うず〉く。



その感覚は、例えるなら“悲しい”時に感じるそれと同じようなものであった。



ゆっくりと俺から唇を離した憂奈ちゃんは、ふぅ、と息をついて、抱きつくため、俺の首の後ろに回していた手を緩めた。



「憂奈の初めては、やっぱり涼君じゃないと」



コクコク、と何かを納得したように頷く憂奈ちゃん。


「・・・・涼君パワー充電完了だね。憂奈、今なら魔王にだって負ける気しないかも」



憂奈ちゃんは冗談っぽくそう言うと、タタタタタ、と立ち止まってこっちを見ていたシオンの所まで駆けていき、そのまま歩きだした。



動きを停止させていた銀髪姉妹も、慌てたようにそれを追う。



その場に残されたのは、今だにファーストキスの余韻に浸っている涼と、親の仇〈かたき〉を見るような目で勇者ご一行を睨んでいるリリア、フィオ、ユウリ。



そして、そのリリアたちの心の中に残った、本人たちでもよくわからない“黒い感情”だけであった。






☆☆☆☆






「リョウ様。・・・・なんで、ですか?」



あの後、誰からともなく歩き始め、とても気まずい雰囲気になっていた。



そんな中、意を決したようにユウリが涼に質問をした。



涼は、かなり曖昧なその質問に首を傾げつつ、慎重に言葉を選ぶ。



「なんでって・・・・何がだ?」



「・・・・・・さっきの、キスの件ですよ。リョウ様なら、あの程度の相手なら簡単にあしらうことが出来たはずでしょう?」



「・・・・・・・まぁ、な」



涼は、肯定の言葉を口にする。



「なら、なぜそれをしなかったんですか?」



ユウリの言葉に、涼は黙った。



(なぜ憂奈ちゃんのキスを受け入れた・・・・?)



涼の頭に疑問が浮かぶ。



(俺は憂奈ちゃんが好きなのか?・・・・・・違う)


嫌いか、と聞かれれば、NOとはっきり答えることが出来る涼。



元親友の妹だということも含め、涼自身憂奈ことはわりと好きである。



しかし、それは恋愛対象としてでなく、ただ友達としてのそれだと涼は思っていた。



それなのに、なぜあんなすんなりとキスを受け入れたのか、涼本人もよくわかっていなかった。



少し前まで、人と深く関わることをしなかった反動なのか。



涼は自分の変わりように、少し恐怖すら覚えた。



「・・・・・・・・・・・・なんだっていいだろ?」


結局、何も思い浮かばず、適当なことを口にする涼。


その言葉を聞いたユウリは、怒ったように目を鋭くした。



「確かに、リョウ様は私のご主人様ですから、私はリョウ様が何をしようと口を出す権利はないと思います。」



涼は、歩きながらユウリの言葉に耳を傾ける。



「それに、私とリョウ様が出会ってからそれほど日も経っていませんし、私はリョウ様のことをあまり知りません」



リリアとフィオも、無言ながらユウリの言葉を聞き漏らさんとばかりに、耳に意識を集中させている。



「けど、私はリョウ様が優しいことを知っています。だから、あの時のキスには、そういった優しさから生まれる何かがあったんじゃないでしょうか?・・・・・・・・・だってリョウ様、今にも泣きそうです」



そう言われて、涼は自身の変化に初めて気付いた。



顔は妙に強張っていて、心がジワリと痛む。



今にも涙が溢れんとするのを、必死に耐えている涼がそこにはいた。



涼は立ち止まり、何がこんなに悲しいのか考えた。



リリアたちも立ち止まり、涼が答えを出すのを静かに見守る。



(・・・・・・・・・・・・そうか、そう、だよな)


涼は自分の中で、かなりあっさりと答えが出たことに苦笑する。



(罪滅ぼし・・・・かぁ)


ため息を一つつき、空を仰ぐ涼。



涼が出した答え。



それは、憂奈が自分のことを思っていることにつけこんで、裕也に対する罪の意識を拭おうとしたのだ。



人を傷つけた罪。



確かに涼も傷つきはしたけど、それと同じくらいに裕也も心に傷を負ったはずなのだ。



涼はそれに気付き、憂奈のやりたいことを自分がしてやることによって、少しでもその罪が消え去るんじゃないか、と思い実行した。



しかし、残ったのは、半端な気持ちで女の子のファーストキスを奪った、というさらなる罪悪感。



ユウリが言うように、この閖島涼という男は優しすぎたのだ。



心の中にたまった罪悪感から押し潰されそうになるのを、必死で耐える涼。



「・・・・・ほれ」



そんな時、リリアが不意に手を差し出してきた。



「我は、リョウの師匠じゃからの。多少の重荷は手伝ってやる」



そんな不意討ちをくらって、涼はわざとらしく鼻をすすって笑った。



「・・・・じゃあ、任せた」



無理に笑うでもしないと、本気で泣いてしまいそうだったのだ。



涼はしっかりとリリアの手を握り返し、その温もりを心に刻む。



ギクシャクとしていた二人の仲は、いつのまにか前以上のものになっていた。



そんな二人を見たフィオとユウリは微笑み、涼へと手を差し出す。



「・・・・しょうがなく一緒に支えてあげます」



「私はリョウ様のメイドですからね。リョウ様のものは私のものですっ!」



そんな二人の手を、リリアの手とともに包み込み、リョウは心の奥底から笑顔を見せた。



「ありがとう」



その言葉と涼の笑顔は、彼女たちの心の中にしっかりと刻み込まれた。




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