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第17話 乙女の戦い。

学校始まった・・・・orz



「さて、行ったようじゃの」



涼の足音が遠ざかるのを聞き終えたリリアが呟く。



「あなたたちは、涼君の何なんですか?」



それを見計らったように、憂奈が口を開いた。



その表情は真剣で、憂奈がどれだけ涼のことを想っているのかが窺〈うかが〉える。



「はいっ!私は、リョウ様のメイドですっ!」



そんな真剣〈まじ〉話の空気を断ち切るように、ユウリが宣言した。



「・・・・・メイド、ねぇ」



憂奈は目を鋭くしながら、ユウリを睨む。



「そうです。リョウ様は私のご主人様。私はリョウ様の奴隷、と言っても過言ではありませんっ!」



ユウリの宣言に、“空気が凍った”。



比喩ではあるが、一般の人がこの場にいたら間違えなくガクブルと震えだすだろう。



「・・・・・奴隷?」



憂奈が出した低い声に臆することなく、ユウリはマイペースに言葉を続ける。



「はい!私はリョウ様の命令ならなんでも聞く所存ですっ!それがメイドとしての心得ですから!」



誰がそんなことを教えたんだろうか・・・・と、リリアとフィオは心の中でため息をつく。



まだ会って間もないので、ユウリの過去等はあまり知らない二人。



(とりあえず考えを変えてやらないと、ユウリの身が危ないのぉ)



男は皆、狼なのだから。



昔母親に言われたことを思い出しながら、リリアはそう決心した。



「・・・・・やっぱり、どうにかしないと」



突然、憂奈が黒い雰囲気を纏った。



その目は据わっていて、兄である裕也がヤンデレだと言っていたのが事実だとわかる。



どうやらユウリが一番の敵だ、と認識したらしく、憂奈はフラフラとユウリに近づき始めた。



「ゆ、憂奈様落ち着いてくださいっ!」



銀髪ショートの方が憂奈の前に立ちふさがるが、憂奈が一つ睨みを効かせるとおずおずと後退した。



「涼君は、憂奈だけのものなんだから。・・・・・誰にも渡さないよ?」



その言葉に反応したのはリリアとフィオ。



「その言葉は聞き捨てなりませんね」



「確かにの。少なくとも、リョウは誰のものでもないと思うが」



二人の言葉を聞いた憂奈は、据わった目でリリアとフィオを見る。



「・・・・・・涼君から知らない女の人の匂いがしたけど、どうやらあなたたちみたいだね」



憂奈はそう呟くと、右手を前に突き出した。



「来たれ、光」



憂奈が何かを唱えると、憂奈の右手に光が少しづつ集まり、形を成していく。



それは1mサイズの剣になって留まった。



「・・・・・・やるしか、ないようだの」



リリアは、こっちの方が解りやすいと言わんばかりに微笑み、魔力を体に満たし始める。



「そうですね。少し根性を叩き直してあげましょうか」



フィオも同じく微笑むと、どこからともなく屶を出現させた。



「あ、あわわわわ!!わ、私も及ばずながら加勢しますっ!」



焦りながら、リリアとフィオに倣〈なら〉って戦闘体勢を整えるユウリ。



それを見た憂奈のお供二人は、軽くため息をつくとそれぞれ構えをとる。



「憂奈様ったら・・・・・・・まぁ、仕方ないですけど」



銀髪を後ろで二つに結んでいる方の女の子は、結んでいた髪を解いた。



すると、女の子の銀髪がゆっくりと金髪に変化し始めた。



「ほぉ・・・・・その変化、エルフかの」



リリアは、エルフ等の精霊に近い種族が魔力を発する際に身体的に変化が起きるということを思い出し、納得したように頷く。



「お姉ちゃん・・・・・憂奈様の為とはいえ、無闇に力を振るうのはどうかと思うんだけど・・・・仕方ないか」



銀髪ショートの女の子の方も、髪が金色に染まった。


「・・・・・死んでよ」



憂奈の口から冷たい言葉が漏れる。



狂気に支配された憂奈は、一番強そうなリリアをまずターゲットにした。



涼の話から察して、師匠と呼ばれているリリアをまず倒しておかないと後々厄介になると考えたのだ。



「ふむ・・・・狙う順番を間違えたようだの。普通、弱者を狙うのがセオリーじゃ」



「うるさいっ!」



憂奈が剣を振り下ろすとタイミングに合わせて、リリアは指を弾く。



すると、パチンッという軽快な音とともに、憂奈の剣が“歪んだ”。




「・・・・ッ!!」



憂奈はすかさず後ろに飛び退き、剣を一度消した。



「光・・・・・元素の枠から外れた魔法だの。我がこの魔法を見たのは“二度目”じゃ」



リリアはそう言うと、ニヤリと不敵に笑った。



「もちろん、その対策も研究済みじゃよ」



そんなリリアを余所に、憂奈は勿論、銀髪・・・・現在は金髪の姉妹も驚きを隠せないようである。



それもそのはず。



光、闇等の元素外の魔法は使える者が限られている。


それこそ、勇者の中にその力を持つ者が現われるのも稀で、今まで確認されているだけでも歴史上30人といないくらい稀少な力なのだ。



それを見るのが二度目、というのは、宝くじで一等を当てるよりも低い確立である。



「よそ見してて、いいんですか?」



フィオの声にハッとした三人は、その姿が先ほどいた場所にないことを確認するとお互いの背中を護るように身体を寄せ合う。



「お姉ちゃん!」



「はいっ!」



金髪姉妹の二人は、息を合わせるように声を掛け合うと、同時に呪文を唱えた。


「「精霊よ!我らに力を!」」



すると、憂奈を含め、三人を護るように青く輝く光がピラミッド型に展開される。



ガキッ!!



鈍い音とともに、フィオの屶が光にぶつかった。



「硬い・・・・です、ねっ!」



フィオはどうにかしようと力を籠めるが、少しヒビを入れる程度の効果しか顕〈あらわ〉れず後退した。



それを見たショートカット・・・・妹の方が頬を引きつらせる。



「・・・・・・これ、一応龍の攻撃くらいなら簡単に凌げるんだけどな」



そう言って表情を引き締めた金髪妹は、今だに何もしていないユウリがこの中で一番弱いと予測し、狙いを定める。



姉の方もその意図に気付いたのか、妹とほぼ同時に駆け出した。



憂奈はというと、何も出来ない自分にイライラを募らせつつ、リリアとフィオを標的にする。



本能的に、この二人が涼に特別な感情を抱きつつあることに気がついたようだ。


念の為、どう思っているのかと聞いてみることにした憂奈は、静かに声を発した。



「あなたたちは、涼君の何なんですか?」



その言葉を聞いたリリアとフィオは少し思案し、微笑みながらこう答えた。



「大切な・・・・弟子、だの」



「・・・大切な、同僚です」



若干、“大切な”というところが強調された。



二人とも、無意識のうちにそう言ってしまったことに苦笑する。



「・・・・・・・やっぱり、あなたたちはなんとかしないと」



憂奈はそう言って、自分が持てる限りの全力で目の前の敵を殺そうと専念する。



それに応じるように、リリアとフィオもそれぞれ体勢を整えた。



今自分達が船の上にいる、ということは、既に三人の頭の中から消えていた。



そんな一触即発の三人を余所に、ユウリは姉妹を相手に善戦している。



涼が馬鹿力だと感じただけあって、姉妹はユウリの圧倒的な力に苦戦していた。



獣人の殆どは魔法を使うことが出来ない。




そのせいか、獣人は魔法耐性がかなり高いのだ。



姉妹が放つ魔法も、ユウリにはかすり傷一つつかない。



「では、行きます!」



ユウリは宣言とともに、姉妹へ突っ込んだ。



身の危険を感じた姉妹は、先ほどのピラミッド型の魔法を展開し身を護ろうとするが・・・・・・・それは呆気なくユウリに破壊された。



「う・・・そ」



金髪妹の口から驚きの声があがり、姉の方は恐怖のあまり動きが停止した。



それもそのはず。一番弱いと思っていた人物から、姉妹が誇る最強の防御呪文が崩されたのだ。



動こうとしない二人の前に立つそのメイドは、作ったようににっこりと笑った。



「どうやら、私の勝ちみたいですね」



今のユウリの目は、瞳孔が細くなり、まさに猫を彷彿とさせる。



いつもののほほんとした雰囲気は霧散し、ユウリが纏っているのは獣人特有の好戦的なそれであった。



姉妹はペタンと床に膝をつくと、諦めたように両手を上にあげる。



するとその時。



ガチャ、と不意にドアが開き、先ほど出ていった涼とシオンが顔をのぞかせる。



二人は部屋の惨劇をしばし見つめた後、無言のままドアを閉め、その場から全速力で逃げ出した。




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