表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/26

第16話 誓い。

み、短い・・・・さーせんw



前髪を風が撫でる。



部屋から逃げ出してきた涼たちは、船の甲板に来ていた。



ちなみに、シオンは甲板へ来る途中に目を覚ました。



海の匂いを運んでくる風は冷ややかで心地いい。



前の世界では、海に行くことなんて滅多になかった涼。



外に出るより、家でゲームしてるほうが楽だと考える人種だった。



「楽しそうですね」



涼の横顔をチラリと見ながら、シオンが苦笑する。



「そうだな。・・・・・楽しいよ」



涼は、心の中の靄〈もや〉が晴れたお陰か、何でも楽しく感じるようになっていた。



実際、こんなにスッキリした気分は久しぶりなのだ。


「それにしてもリョウさん。よくあの人たちと旅が出来ますね」



シオンの言葉に、涼は首を傾げた。



そして少し思案した後、シオンがリリアたちの事を言っているのだと気づき苦笑する。



「あぁ、リリアたちのことか。・・・・どうして、そんなことを?」



大体予想はつくが、あえて聞いてみる。



「・・・・まぁ、知ってるとは思いますが僕は龍なんです」



涼は、シオンの言葉に小さく頷く。



「そんな僕を気絶させるほどの人たちなんですよ?・・・・・・あの時のお二人の顔は思い出したくもありません」



少し顔を青くしながら、シオンため息をついた。



お二人、とは、リリアとフィオのことだろう。



「まぁ、ああ見えてもいいとこあるんだよ?」



「・・・・・・そうですか」



シオンはそう呟いてクスリと笑い、続けてこう言った。



「旅をしようと思ったのも、お二人と何か関係があるんでしょうか?僕が世界の意志から聞いた話によると、リョウさんは魔王討伐を嫌がっていたそうですが」


そんなシオンの言葉に頷いた涼は、ゆっくりと語りだした。



最初はあれほど嫌がっていた魔王討伐。



それをやる気になった、とある出来事を。






☆☆☆☆






それは、涼たちが旅立つ少し前のこと。



森で食料調達をしていた涼とフィオは、久しぶりの大物と対峙していた。



少し赤ばんだ毛、細い木の幹ほどありそうな太い腕。


その生き物は、この森の頂点に位置するそれであった。



見た目は、この辺りに多く生息している、グリズリーと呼ばれる熊。



しかし今対峙している熊は、他のより一回り以上大きなものであった。



涼は、ここまで大きなものを初めて見た。



それもそのはず。



この熊は、変種と呼ばれる突然変異種であるため、一生に一度見れるか見れないか、というくらいに遭遇率が低いものである。



さらに言うと、遭遇して生還できる確率はさらに低い。



変種の最〈もっと〉もといえる特徴。



それは、その力の大きさ故である。



生存本能が他よりも強いせいか、その力は黒龍等の上位種に匹敵するほどのものがある。



「グルルルルルルル・・・・・」



口から唾液をダラダラと流しながら、目の前の餌を睨む熊。



フィオを顔を顰〈しか〉めながら、涼に下がるよう手で合図をした。



いくらフィオが強いといえど、黒龍クラスの化け物を相手にするのは多少きつかった。



しかも今は、守らなければならない涼がいる。



守りながら戦うというのは、通常の戦闘より圧倒的に難しいのだ。



「リョウ!マスターを呼んできて下さい!」



「・・・・フィオ、一人で戦うのか?」



そんな涼の言葉に、フィオは微笑みながら熊を睨んだ。



「私を誰だと思っているんですか?・・・・・・・助ける気があるのなら、急いでマスターを呼んできて下さい」



そう言ったフィオは、どこからともなく屶を取出し、熊に斬り掛かった。



涼は少し躊躇ったものの、頑張れ、と言い残しその場を去った。



その後、リリアを呼び、再び熊のとこまで戻ってきた涼は愕然とした。



フィオが、頭から血を流しながらも懸命に戦っていたからだ。



女の子が必死で戦っているのに、自分は何をしているんだ?



そんな気持ちが頭を過った涼は、ギリ、と唇を噛み締める。



それに、フィオとはもう友達だ。



それをこんなになるまで戦わせて・・・・。



「危険じゃから、リョウはここで待っておれ」



リリアから告げられた、戦力外通告。



女の子が二人で必死に戦っている姿を目に焼き付けながら、リョウは一つの決心をした。



この二人を、護りたいと。



今、自分を必死に護ってくれている二人を、今度は自分が護ろう。



心の中でそう誓った。



だから、魔王なんて物騒なものは早々に倒してしまおう。



そう思っていた涼は、今まで嫌がっていた魔王討伐の旅に出ると唐突に言われた時も、すんなり了承できたのだ。



涼は、なんとか熊を倒し、肩で息をしている二人にこう言った。



「二人は、絶対俺が護るから」



「・・・いきなり、なんじゃ?」



「・・・・さぁ?」



二人は、涼の突然の言葉に首を傾げつつも、その頬は微かに赤く染まり、照れたような笑みを浮かべていた。






☆☆☆☆






「なるほど、つまりその誓いを守る為に魔王討伐に乗り出した、と」



「まぁな。・・・・・たぶんシオンに会わなきゃ、誓いを破ってたかもしれないけど」



シオンに会う少し前の心境を思い出して、涼は苦笑する。



「それにしても、リョウさんはこれから先大変でしょうねぇ」



「・・・・まぁ、それはお互い様ってことで」



涼は憂奈のことを思い出しながら、ため息混じりに呟いた。



それから暫〈しばら〉くの間、風にあたりながら他愛もない会話をする二人。



「・・・・見えてきたな」


水平線の向こう側に、島の影らしきものが見えた涼は、ボソリと呟く。



「リョウさんたちは、どこへ行くんですか?」



シオンの言葉に、涼はリリアたちが言っていたことを思い出しながら返答する。


「確か、魔法都市がどうとか言ってたなぁ」



「なるほど、では、僕たちとは船を降りたら別れることになりますね」



「・・・・うん」



シオンが染々と呟いたその言葉に、微笑みながら返事をする涼。



「でも、また会えるさ」



涼はそう言って、島をよく見るために目を細める。



太陽の明るさに、手で影を作りながら見る島は、海の光が反射しキラキラと輝いていた。




涼視線ではなく、作者視線から文を書いてみました。 


・・・楽すぎるw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ