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第13話 真実を知った彼の心はどう動くのか。



昼休み。いつものように裕也と昼食をとる。



場所は誰もいない屋上。



人がいるとこは嫌だと言ったら、裕也がこの場所にしようと提案してくれたのはもうずっと前のことだ。



ふと、裕也と楽しく会話をしている自分を見ると、それだけで泣きたくなってきた。



胸の中を、黒い何かがグルグルと渦巻き始める。



仲良くなればなるほど、その別れが辛くなるなんて少し考えればわかることじゃないか。



なのに・・・・なのにこの時の俺はどうしてこんなーーーーーー。



「おい、おい涼ってば・・・・何ぼぉっとしてんだ?」



「ん?・・・いや、ちょっと考え事をね」



「・・・・・ふ〜ん。おっと、そのおかず貰いっ!」


「お、おまっ!?それ、今日のメインなのに!」



楽しそうに笑う俺と裕也。


うん。この時は本当に毎日が楽しかった。



俺は裕也に出会って色んなことを知ったのだ。



学校に通う楽しさを知った。



友達と笑い合った時の、心の温もりを知った。



放課後に誰かと寄り道をする、なんて誰もが経験していることを初めて体験できた。



全部、全部裕也が教えてくれたのだ。



今、この時がずっと続けばいいと何度思っただろうか。



「そういえばさ」



裕也が、俺の弁当のメインだった唐揚げを租借しながら呟く。



「涼、俺以外に友達出来ないって言ってただろ?」



「・・・・・うん」



「俺が思うに、それはみんなが涼のこと嫌ってるわけじゃなくて、少し近寄りがたいだけだと思うんだよな。実際、涼と友達になりたいってやつ、何人かいるだろうし」



俺は、裕也の言葉に苦笑した。



「それはないって。だって、裕也以外に友達がいた試しないし」



「んん〜・・・・。そうかなぁ」



「そうだよ。俺が裕也と知り合ったのも奇跡的なもんだったし」



裕也の妹が不良に絡まれてて、その場にたまたま居ただけの俺も何故か絡まれて、それでゴチャゴチャとあったのだが、まぁ、あの時は必死だったからよく覚えてない。



気がついたら裕也と二人で不良グループをボコボコにして、いつの間にか友達になっていたのだ。



あの時、俺があの場所に行かなかったら起きなかった奇跡。



「大袈裟だなぁ。俺は、あんなことがなくても涼とは友達になってたと思うぜ?」



「・・・・・言ってろ」



その後も、俺と裕也は昼休みが終わるまで語らい続けた。



この後どんな出来事が起こるかなんて知らないもう一人の俺・・・・・閖島涼は、教室に戻るまでずっと笑顔だった。






☆☆☆☆






放課後、俺は掃除当番を早く終わらせるため手早く掃除を開始した。



淡々と掃除をする俺は、校門前で待ち合わせしている裕也を待たせてはならないと一人で作業を進める。



他のクラスメイトは適当に掃除をしているだけで、それぞれ友達同士談笑している。



まぁ、箒でゴミを集めるだけだしぶっちゃけ一人でやった方が捗〈はかど〉るんだが。



俺は塵取りにゴミを集め、ゴミ箱に捨てる。



そしてゴミ箱を抱えると、校舎裏まで運ぶ。



この作業が一番めんどいわけだが、まぁ、慣れてるからね。



他のクラスメイトは、「悪いな」と一言残して掃除用具をそれぞれ直しはじめた。



「手伝おうか?」と声をかけられるも、「・・・・いい」と拒否。



こんな態度をとるから無愛想とか言われるんだが、俺の中で他人というのは、それくらいどうでもいいものなのだ。






☆☆☆☆






「そろそろ・・・・か」



俺は色々と思い出しながら、校舎を出た。



もうすぐで裏切られるあの場面に遭遇するはずだ。



それを知るよしもない閖島涼は、せっせとゴミ箱を運ぶ。



すると・・・・・「っ!?嫌だ!俺にそんなこと・・・・・・・いつに、何の関係・・・・んだ!」



とても聞き覚えのある声が聞こえてきた。



その声は、目的地である校舎裏から途切れ途切れ聞こえてきて、校舎裏に近づくたびにはっきりと聞こえてくる。



「・・・・あいつには、関係のないことだからな」



俺・・・・・いや、閖島涼が見たのは、とある体育教師と何か話している友達、裕也の姿だった。



裕也はすぅっと息を吸い込むと、はっきりとこう言った。



「閖島涼?あいつは俺の友達なんかじゃねぇよ。ただあいつが俺に付きまとってくるだけなんだ。誰が好き好んであんな臆病で根暗なやつなんかとーーーーー」



閖島涼は、そこまで聞くと走りだした。



手に持っていたゴミ箱など投げ捨てて、ただただ走る。



友達だと思っていたのに。


親友だと思っていたのに。


そう思っていたのは自分だけで、裕也はそんなこと微塵も思っていなかったのだ。



張り裂けそうな胸の痛みに溢れ出てくる涙を手で拭いながら、教室に置いたままの鞄の存在すら忘れて走り続けた。



俺も、この時のことを思い出して滲んできた涙を拭いう。



早々にこの場を去りたかったが、なぜか体が動かない。



縫い付けられたようにこの場に固定されてしまった。


俺に何をしろというんだろうか。



一体何を・・・・・。



と、裕也がこちらを見ていることに気づいた。



裕也の視線は、俺でなく散乱したゴミと、俺たちのクラスである2ーAの紙が貼ってあるゴミ箱に釘付けになっている。



「・・・・残念だったなぁ。お前の相棒さんは、逃げていっちまったみたいだぜ?流石は、“無愛想な猫”だなぁ」



体育教師はニヤリと笑うと、長くもない髪の毛を指で弄り始めた。



「お前があいつの悪口とか言ってるのをこのテープレコーダーに録音して、あいつに聞かせて喧嘩でもさせる算段だったが、手間が省けたぜ、ッヒヒヒ」



・・・・・コノキョウシハナニヲイッテイルンダ?


俺は、体育教師のまるで先生らしからぬ態度に呆れる。



それと同時に、今、この体育教師が言った言葉を聞いて頭の中が真っ白になっていた。



「・・・・てめぇ。絶対許さねぇ!!」



そして、目に涙をためながら教師に殴りかかる裕也。


そんな光景を見ながら、俺の頭に一つの可能性が浮かんできた。



この体育教師は、裕也の妹を含む何人かにセクハラ擬いの行為をして、俺と裕也がそれを校長にチクったのを根に持っているのではないか、と。



それで仕返しの方法を模索した結果、俺と裕也を喧嘩でもさせて友達の仲を壊そうとしたんじゃないだろうか。



俺には裕也以外に友達がいなかったし、裕也と友達じゃなくなれば俺が沈む。



この教師はそれを見たかったんじゃないだろうか。



それに気づいた裕也は、俺を巻き込むまいとあんな言葉を言ったんじゃーーーーーーーー。



「涼はなぁ・・・確かに、臆病で根暗だけど、優しくて、友達思いで・・・・・・・俺の大事な親友なんだぞ!!お前が涼のことをバカにするなぁっ!!」



俺はギリッと歯を食い縛り、膝をついた。



こんな、こんなことが・・・・・・。



涙は止まることをしらないように、頬を伝い続ける。


『真実を、心に刻みなさい』



あの男が何のためにこの映像を見せているのかわからない。



この映像が本当のものかもわからない。



でも、それでも俺は・・・・・・・。



ズッと鼻水を吸い込みながら、懸命に戦う裕也の姿を目に焼き付ける。



臆病な俺はこの次の日、転校した。



“友達から裏切られた”という勘違いのトラウマを胸に抱えたまま、裕也から逃げ出したのだ。



裕也は、そんな俺を許してくれるだろうか。



もう一度、友達になってくれるだろうか。



裕也の後ろ姿を見ながら、俺の意識はゆっくりと闇に落ちていく。



俺の心の中はいつの間にか、雨上がりの青空のように澄み切っていた。




くぅ・・・・シリアスはやはり難しいです。

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