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第1話 喚ばれて。

こんにちは。璃瑠@です。            今まで執筆していた小説を参考にしながら頑張っていくので、色々とよろしくお願いします。                  グダグダになってしまう確立大ですが、暖かい目で見守ってやってください。



それはある夏の日の出来事。



空に星が瞬く夜。



いつもと変わらないそんな日に、出会いは突然訪れた。






☆☆☆☆






俺はシャワーを浴びていた。



夏ともなれば、湯槽にお湯を張る人の方が少ないだろう。



いつものように頭から洗いはじめた俺は、シャンプーを手に出し泡立てると、ゴシゴシと乱雑に頭を掻き回し始める。



そんな時、とある感覚が俺の背筋を冷たくした。



みんな、一度はこんな経験があるんじゃないだろうか。



シャンプーの泡が目に入るのを防止する為に目を瞑った時、背後に誰かがいるような気配がするのだ。



普通それはただの思い過ごしで、目を開いて後ろを振り返ってみても、何もない。誰もいない。




それが日常。それが常識。



しかし、ホラー番組などを見た後だったりすると、実際に何かが“在る”んじゃないか、なんて思って、ビクビクしながら頭を洗うなんて経験。



俺の場合、それは17歳になった今でも、時々思ってしまったりすることがあるのだ。



実際に週末のロードショーでホラー映画を見てしまった今日なんかは、特に背後が気になる。



「しっかりしろ、俺」



そんなことを呟き、自分に喝を入れる。



頭に付着する泡をシャワーで洗い流しながら、眼光が鋭い、とか、まるで獣みたいだ、とか、色々言われ続けられてトラウマになりつつある目をゆっくりと開く。



普段なら、『ほら、何もいないじゃないか』と誰に言うでもなく一人呟き、そっと安堵のため息でも吐くところだが。



今日という日は何かが違った。



目を開いてもなお、後ろに何かの気配を感じるのだ。


俺は自分を奮い立たせ、ゆっくりと振り返り――――――――思い切り目を見開いた。



悲鳴を上げなかっただけでも少しは男らしくなってきたじゃないか、なんて自分を誉める間もなく、俺はソレを見て体を強ばらせた。


俺の背後に居たのは、黒いフードがついたマント的な服を着た誰か。



イメージ的には、悪い魔法使いなんかを想像してもらえると解りやすいと思う。


その誰かが、俺の後ろに“浮いて”いたのだ。



フードが深いせいか、顔がまったく窺えない。



しかし、顔がどうのこうのなんて問題ではない。



“浮いている”という、ソレが人以外の者であるという事実が一番の問題なのである。



・・・・・俺が知る中で宙に受ける、且つ、人型の生き物(?)と言えば、幽霊くらいしか思いつかない。



俺には、アレが幽霊であるということしか認識できず、軽いパニック状態に陥っていた。



「マスター。見つけました。彼が・・・・・ですよね?」



その黒フードは、俺を見下ろす位置からゆっくりと降りてきながら、そんなことを言った。



(・・・・お、おんな?)


声から察するに、どうやら女の幽霊らしい。



ペチャ、と水に触れたような音とともに、彼女は風呂場に降り立った。



どうやら実体化できる霊みたいだ。



俺はこんな鋭い目をしていながら、実はかなりの臆病者だったりするわけで。



無意識のうちに、その場にヘタリ込んでしまった。



『時間がない。早く帰ってくるのだ。・・・・我といえど、そちらの世界に干渉出来る時間は長くないからの』



天の声、みたいな感じで風呂場に誰かの声が響く。



黒フードの声ではないみたいだが・・・・・他にも幽霊が居たのか。



「・・・・わかりました。ではすぐにでも」



天の声に黒フードは頷くと、ペチャ、ペチャ、と俺の方に歩いてきた。



「ッ!?く、くるなぁぁ!!」



我ながらなんと情けない一言か。



絶望にも似た感情が心を支配し、じわっと涙が出てくるのを感じた。



「・・・・では、失礼しキヤァッ!?」



俺の方に近づいてきていた黒フードは、俺が体を洗うために用意していた新品の石鹸を見事に踏み付け、そのままツルッ!と滑った。


そして、俺にダイブしてくるような形で突撃してくる黒フード。



裸の俺は、防御力0な体でその一撃を頂いて、そのまま意識を失いかけた。



なんとか意識を繋ぎ止めれたのは、日頃の朝ランニングの成果か。



いや、たぶん違う。



俺に突撃した拍子に脱げたのか、フードの下から現れた女の幽霊の顔が、とても可愛かったからだ。



あまりの可愛いさに見惚れてしまい、痛みなんて忘れていたのが事実である。



先ほどまでの恐怖はどこへやら。



黒いマントの間からチラチラと見える、推定Dはいってるんじゃないだろうかというくらい大きな二つの双丘に釘付けになってしまったのは、男の性というものなのか。



顔の幼さから察するに俺と同年代か少し年下な感じはするが・・・・・よくもまぁ育ったものである。



「すっ・・・すみません!」



必死で謝ってくる度に揺れる彼女の漆黒の髪と、二つの丘。



俺は思わず唾を飲み込んだ。



『早くするのだ!!もう時間がない!』



そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、天の声にハッとなった女の幽霊は「事情は後ほど話しますから」と言って、慎重に言葉を口にした。



「・・・・帰還」



サッ、と視界が黒一色になり、先ほどまで感じていたシャワーのお湯の熱さも、音も、女の幽霊の温かさも消えた。



それとともに襲ってくる、ジェットコースターに乗っているような浮遊感。



下に“堕ちている”のだと気づくのは、それからすぐのことだった。



俺は声にならないような悲鳴をあげながら、ゆっくりと気を失い、重力という力に身を委ねながら、真っ暗な闇の中をすごいスピードで堕ちていった。






☆☆☆☆






「てぇいっ!!」



誰かに叩かれた。



そんなことをぼんやり考えながら、俺は今の痛みが夢でないことを理解する。



どうやら俺は、あの堕ち続ける闇の中から脱出できたらしい。



まだはっきりとしない頭を必死に駆使し、現状を把握しようと上体を起こす。



俺はゆっくりと目を開き、周りの様子を探る。



誰かの私室なのか、あちらこちらに本や見たこともない道具が放られていた。



「・・・・汚い部屋だなぁ」



思わず、見たままの感想が口から漏れる。



「悪かったの。我は掃除が嫌いでな」



俺の言葉に答えるような声がしたので、そちらを振り向けば、身長150cmもないくらいの小柄な金髪の女の子が腕を組んで偉そうに立っていた。



腰を過ぎた辺りまで伸びた金色の髪は、丁寧に手入れをしているのか、先の方まで艶やかだった。



「・・・・・幼女か」



「コヤツ!・・・・・・人の気に触れるようなことを!!」



見たまんまを言ったら、まるで殴りかかってこんばかりの勢いでこちらに突進してきた。



いや、しようとしていた。


寸での所で、後ろに控えていたらしい誰かがそれを止めたのだ。



「マスター!気を確かにしてくださいっ!!」



「ええぃ!!喚んだ者に誉め言葉の一つも言えん堕神〈おちがみ〉など我の手で消してくれるわ!」



「マスター!諦めてください!彼は一応、世界の意志から選ばれた存在なんですからっ!」



「くぅぅ!!口惜しや・・・・我の容姿を貶して生き残れたのはお主で55人目だの!」



55人って、わりかし多いな、なんて釣り針はあえてスルー。



それよりも、金髪幼女を止めた人物に俺は見覚えがあった。



俺を闇に堕とした、巨乳幽霊美少女だ。



俺は二人の会話を聞いて、今、俺がどうしてここにいるのかなんとなくだが察してしまった。



“喚んだ”というのは、“召喚した”、と同じ意味だと思う。



つまりこれは、俗に言う異世界召喚というやつではなかろうか。



「悪い夢だ。・・・ったく」



俺はため息を吐きながらゆっくりと体を横にして目を瞑り、目が覚めたら元の世界に帰っていることを祈りつつ、再び睡眠でも楽しもうかなぁなんて思っていると、「寝るなぁぁぁぁあ!!」怒声とともに叩き起こされた。



ギロッと睨むと、金髪幼女と幽霊美少女がたじろぐのが目に見えてわかった。



この目は、こういう時にはなかなか役立ってくれる。


しかし、内心泣きそうになっているのを悟られないようにするのはなかなか難しいのだ。



心の中は、感覚的にこれが夢ではない、という絶望にも似た何かで満たされていて、今にも大声を出して泣き出してしまいそうになっている。



我慢、は得意だ。



相手が諦めるまで粘り、解決したら一人で泣けばいい。



それはもう、慣れたことだから。



「帰る、方法はないのか?」



できるだけ低く、声を震わせないように気を付けながら、俺は尋ねた。



「・・・・・今はまだ、帰ってもらうわけにはいかん」



どうやら、帰る方法はあるらしい。



「困ったことでも、あるのか?」



何か困っているから俺を此処に喚んだ。だからまだ、帰ってもらうわけにはいかない、と。そう言いたいんだろう。



俺は困っている人を見捨てるほど腐っちゃいないし、俺に出来ることがあるなら、それだけでもやってあげたい。



俺の言葉に頷いた金髪幼女は、ゆっくりと俺を喚んだわけを話し始めた。






☆☆☆☆






金髪幼女によると、この世界には100年に1度暴れ出す魔王と呼ばれる存在がいるらしい。



その力は強大で圧倒的。



各国はそれぞれ独自の召喚法を使い、“勇者”と呼ばれる存在を別の世界から召喚して、それに対抗していた。



複数の勇者は、確かに不思議な力を持ち魔王を“倒す”ことはできる。



しかし、何度倒しても、何もなかったかのように100年に1度必ず魔王は現われた。



それで、この金髪幼女のばあちゃんがその謎を解明すべく研究を始め、魔王を完全に消滅させる方法がわかった。



それは、“細胞を残さず倒す”ということらしい。



どうやら、勇者から倒された魔王は、100年をかけて元の姿に戻っているんだと。



細胞が一つでも残っていれば復活できるなんて、某龍玉を集めるアニメの、緑色の人造人間もびっくりであろう。



確か奴は頭の核が残っとかないと死ぬはずだからな。


っと、閑話休題。



つまり、金髪幼女が俺にやってもらいたい事ってのは、俺に魔王を消滅させろってことか。



「・・・・絶対に無理」



話を聞いた俺は、ため息混じりにそう呟いた。



「・・・・・頼む。ばあ様の理論を証明させてくれ・・・いや、証明させてください」



高飛車なイメージを抱いていた金髪幼女が頭を下げた。



きっと、そこまでする理由が何かあるのだろう。



「わ、私からも、お願いします」



幽霊さんも、金髪幼女と同じく頭を下げた。



ここまでされたら、何かしてやりたい。



そうは思うのだが・・・。


「無理・・・・・だ」



まるで死刑宣告をされたかのように顔を青ざめる二人。



俺を喚ぶ為の材料を揃えるのに、家の財産を殆んど売ってしまった、というのも先ほど聞いた。



しかし、俺には二人の気持ちに応えられる力もない、勇気もない、ましてや、俺は勇者ですらもないのだ。



亜法と呼ばれる、この世界で禁止されている禁呪とやらを使って俺を召喚した、と、金髪幼女は言っていた。



つまり、魔王を倒すべく召喚される正式な勇者なんかと違い、俺には本当になんの力もないのだ。



何度も頭を下げてくる二人を見ていると、とてもやるせない気持ちになってきて、無意識のうちに唇を噛んでしまう。



本当なら、『俺に出来ることがあるなら、それだけでも手伝うよ』と、たった一言だけ言えばいいのに。



それを言う勇気すらない。


そんな俺を見て、元いた世界の人たちはこう言っていた。



自己中だ、自分勝手だ、と。



中学校の頃付けられたあだ名は、“捨て猫”。



誰も拾ってくれない、一人ぼっちの捨て猫。



この目も、そう言われていた原因の一つなんだろうが。



今は、そのあだ名が自分にお似合いな気がしていた。


こんなにも必死な二人に、自分の都合だけで何も言ってやれない。


「・・・・・・なんで、泣いておるのだ?」



金髪幼女の一言に、自分が泣いていることにいまさら気付いた。



俺はゴシゴシと目を擦り、「ごめんなさい」と言い残して家を飛び出した。



見知らぬ家で、どこが玄関かわからなかったけど、適当に走り回っているうちになんとか家を出れた。



外に出てみて、初めて異世界に来たんだなぁと実感する。



見たこともない木や植物を軽く見回しながら、後ろから追い掛けてきているであろう二人から逃げるべく、走りだした。



元いた世界にも、この世界にも、俺はいらない存在なんだ。



だったら、猫は猫らしく人に迷惑のかからないところで死のう。



そんなことを考えながら、ただただ、死に場所を求めて走り続けた。



そうして着いた場所は、とある崖の上。



下を見下ろすも、底が見えない。



ここなら誰にも見つからないだろうな。



そう思いながら、俺はゆっくりと身を投げ出した。

たぶん、更新はかなりローペースになりそう。   とりあえず、今執筆中のやつが完結しないことにはどうにもなりませんなw

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