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5分前後でサクッと読めるやつ あれこれ

缶コーヒーは甘さ控えめ

第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞応募作品です。テーマは「缶コーヒー」。


珍しく笑いとか無い、ストレートな恋愛ものを書いてみました。


※しいな ここみ様の『砂糖菓子みたいなラヴ・ストーリー企画』に参加しています。

「これ微糖なのに甘いよな」


 自販機を見つめ、佐藤が言う。


「え、微糖って甘くないって意味じゃないよ。糖類が少ない代わりに人工甘味料を入れてるの」


 彼の白目が2割くらい大きくなった。わかりやすい奴。


「詐欺じゃん! 俺はどうしたらいいんだよ」

「知らないよ。甘さ控えめを買えば良くない?」


 佐藤はボタンを押し缶コーヒーを買った。一口飲んで


「やっぱ甘い! ……お前にやる」


 私の前に腕を突き出す。顔は反対を向いたまま。


「えぇ飲みかけ?」

「要らないなら捨てろよ」

「貰うけど」


 私達は近くのベンチに座る。空気は冷たく乾き、私の指先だけでなく缶の中すら切り裂いているよう。早くしないとコーヒーの温度が下がってしまう。

 急いでこくりと飲み、確かに甘さ控えめだと考えていた私に佐藤が突然言った。


「あのさ、皆で遊ぼうって言ってたじゃん。24日の昼に決まった」

「え、マジ」

「うん。行くだろ?」


 私の心まで冷える。幹事の佐藤(コイツ)は日付を決められる立場だ。姑息な奴め!

 私が彼の飲みかけに躊躇(ちゅうちょ)無く口をつけたから、次はやっと外堀を埋めようって?


12/24(イブの日)は嫌」

「えっ」


 私は佐藤の目を見た。


「目が赤いよ。寒い?」

「え、あっ……そう。寒い」

「じゃ移動しよっか」

「じゃなくて!」

「何?」

「加藤、イブに予定あるの?」

「何でそれを聞くの?」


 佐藤の顔が赤くなった。本当にわかりやすい。


「私ね、遠回しなのは嫌。だって素直な気持ちを言いあえる方が良いと思わない?」

「えっ」


 外堀なんて埋めても無駄。私は籠城をする程甘くない。正攻法で攻めないと逃げちゃうよ。

 私は微笑むとコーヒーを飲む。

 冷たい空気は私達の間で振動せずただ吹きすさんだ。


 何分そうしていたか、漸く佐藤が口を開く。


「加藤がイブに予定があったら嫌だ」

「何で?」

「……俺が一緒に居たいから」

「私も一緒に居たい」

「!」


 彼は遂に首まで赤くなり、また無言に。ああ、早く言いたい。でも甘くしてはダメ。


「加藤唯さん!」

「はい」

「好きです。俺とつきあって下さい!」

「はい!」


 私は缶コーヒーをベンチに置き、冷えた指先を彼のコートの中に滑らせた。


「えへへ、やっと言ってくれたぁ」

「ちょ、え」


 コートに潜り込むように佐藤の背中にぎゅっと手を回す。


「か、加藤キャラ違くない?」

「私、家族や本当に心を許した人にはこうなの。あ、甘いのは苦手だっけ?」


 見あげると彼は真っ赤な顔を手で抑えていた。


「……凄く良いです」


 ほらね。素直な方が良いでしょ。


お読み頂き、ありがとうございました!


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5分前後でサクッと読めるやつ あれこれ
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― 新着の感想 ―
[良い点] 初々しい二人の遣り取りが爽やかで良いですね。 どうぞお幸せに。 [一言] なるほど、佐藤君と加藤さんのネーミングにはそういう意味があったのですか。 24日の昼に遊ぶ予定の「皆」のメンバーに…
[良い点] ふふふ……。コーヒーなのに、甘い甘い(*´ω`*) 微糖でも砂糖でも加糖でも、甘い甘い(*´艸`*) >「……凄く良いです」 実感のこもったセリフをありがとうございます(*´∀`*) …
[良い点] 企画から読ませて頂きました。 甘々だなぁ、良いなぁこういう初々しいカップルって。 甘々を堪能させて頂きました、ありがとうございます。
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