短い里帰り
街での暮らしに人疲れ
ペダルを回して汗流し
少し離れた山間部まで
車の走行音も煩く感じ
知らぬ横道が目に入る
何処へ繋がる道なのか
キツイ登坂も予測され
袋小路も良くある話だ
知らぬ世界へ誘う小径
行ってみよう怪しい道
誰も行かない寂しい道
車の通れない狭い林道
夏に通りたくない獣道
途中まではスイスイと
自転車を押して担いで
山も深まり人気は皆無
静かな山の中に唯一人
目を閉じ耳を澄ませば
風に擦れる葉や鳥の声
虫の羽音に何かの物陰
近くの草木が揺れる音
一羽の鳥が飛び立つ音
一斉に騒ぎ出す鳥の声
一瞬にして緊張が走る
一気に自転車押し走る
背中の不安に蛇行運転
熊や猪に猿やカモシカ
狐か狸に化かされたか
兎に角逃げるが一番だ
山頂に来れば腹も空く
頭も心もスッカラカン
木々と鳥や虫に囲まれ
眺望もなく口に補給食
煩わしさは都会と同じ
相手が人か鳥獣と虫か
腹も落ち着き日暮れ時
郷愁誘い静まる山の声
下る道中に人気も無く
寂しさ感じる木々の音
人を避けて来た山の中
送電鉄塔見て安堵する
人工物如きに営み感じ
下る風受け人肌恋しく
下山客見て笑み浮かべ
声をかけるこんにちは
林道抜けた途端車一台
車から漏れる煩い音楽
ため息一つに鼻で笑う
さあ帰ろう煩い人里へ