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6 女神

日も上がらない朝五時、早朝から開いている行きつけのカフェで俺はコーヒーを飲んでいた。

大変なことになったなぁ。結局、緑の勇者の誘いは断ることが出来なかった。勇者一人でも目立つのに、パーティー二人目も勇者だもんな。この世界にいる勇者は三人。その内二人が俺のパーティーに来たことは、流石に偶然とは考えられないよな。俺の知らないところで何かが動いている、そんな気がするんだよなぁ。

まだ人通りのない道を、誰かが歩いてきた。


「朝、早いんですね」

「昔働いてた時は、この時間には起きてたからな。目が覚めるんだよ」

「そうゆうもんですか」


緑の勇者、ユーゼ・メルディアだった。


「勇者さんは、早起きして何してるんだ。偶然じゃないだろ。ここに来たの」

「その呼び方やめてください。わたしはユーゼです」

「悪かったよ。で、こんな早朝からユーゼは何してるんだ?」

「あなたと少し話がしたいと思ったんです」

「話がしたいってのは、このパーティーの今後についてか?それとも、なんでリゼリアが俺と組んでるのかって話か?」

「いえ、その二つも聞く必要があるとは思っていますが、今聞きたいのは別のことです」


少し間をとってユーゼは口を開いた。


「あなたが何処からきて何をする気なのか、と言うことです」


どう見ても警戒されてるな。でもなんでそんなに警戒されてるんだ?。誤解があるならここで解いときたいし、もう少し聞かないと何も分からないな。


「どこから来てもよくないか、俺は普通に生活したいだけだよ」

「話す気はないってことですか?」

「今は、な」

「わたしが、アリアの場所にあなたを運んだと言ってもですか」

「ユーゼが俺を?」

「はい。突然あなたは町中に現れた。そして何も持っていなかったあなたは町を彷徨い、最後は公園のベンチで寝ていた。わたしはずっとあなたのことを監視していました」

「マジか」

「本当です」


この世界に来た時から監視ってマジか。でも、公園で寝てた俺をアリアさんの所に運んでくれたなら敵意はないよな。むしろ優しいのでは?。何もわからないから不安って感じか。


「わかったよ。全部話すよ」

「結構素直なんですね。もっと抵抗されるかと思ってました」

「別に隠してないしな。アリアさんにも話してあるしな」

「そうだったんですね。では聞かせてください。あなたが何者なのかを」

「その前に、話すと長くなるからコーヒー頼んでもいいか」

「いいですよ」


俺たちは話をする前にコーヒーを注文した。


「ムッ......]


ユーゼがコーヒーを一口飲み苦しそうな表情をしていた。


「砂糖とミルク入れたらどうだ?」

「............]

「別にコーヒーをブラックで飲まないといけない、なんてルールはないんだから無理しなくていいんじゃないか」


ユーゼは俺を一瞥すると静かに砂糖とミルクを入れた。

ユーゼは今、十六歳だったか。少し背伸びしたい年ごろなんだろうな。俺も中学生の頃に飲めもしないブラック缶コーヒーを買ってたからな。よくわかるよ。


「では、聞かせてもらいましょう」


この世界の住人ではないこと、魂の還ってこない問題を解決しないといけないこと、何も隠さずすべてをユーゼに話した。


「頭、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ!!」

「あなたの話すべてが嘘だとは思いません。実際あなたがこちらの世界に来た時の服はこの世界にはありませんし。それに魂ですか。頼んできた方の名前はわかりますか?」

「聞く暇がなくてな、わからんな」

「そうですか......」


そういえば、名前聞いてなかったな。あの状況じゃ仕方ないとはいえ、聞いとくべきだったな。にしてもユーゼが何か考え込んでるが、何かわかることがあったのか?。


「何かあったか?」

「はい、少し。あなたが出会ったのは女神アムリ様ではないかと思いまして」

「女神アムリ様?」

「はい。この世界を作ったと言われている女神アムリ様です」

「世界を作った女神......」

「この町にもアムリ様を祀る教会があるので行ってみませんか」


女神アムリ、俺をこの世界に送り込んだかもしれない女神様......か。何かわかるかもしれないし、教会に行ってみるかな。


「教会は誰でも入れるのか?」

「入れますよ」

「よし、行ってみるか」


俺とユーゼは会計をし、カフェを後にした。


町の中心地にある教会の前にやって来た。


「教会は町の中心に建てないといけないと決まっているんですよ」

「何か理由があるのか?」

「町の中心に教会を建てて、町全体にアムリ様の加護が得られるようにしてるんです」


話を聞きながら俺とユーゼは教会に入った。


「教会の中も想像通りだな」

「そうなんですか。話を聞いた感じあなたの元居た世界と似てますよね」

「そうなんだよなぁ。俺の元居た世界をベースに作ったみたいな感じがするんだよな」


あながち間違いでもない気がする。なぜか日本語で通じるし、お金も日本円と同じだしな。異世界って感じが全くなかったんだよな。町並みは西洋な感じだけど、現代も西洋風な建物増えてたし。日本の枠に収まる異世界、過ごしやすくていいけどな。

俺とユーゼは一つの石像の前にやって来た。


「これは女神アムリ様の石像です」


それは、俺を異世界に送り込んだ少女と同じ見た目をしていた。


「俺が出会ったのはこの子だ。間違いないと思う」

「そうですか......もしも、あなたの話が本当だとすると大変なことになりましたね」

「大変なこと、何がだ?」

「わたしも詳しいことはわからないのですが、初代勇者も異世界から来たと言われているんです」

「異世界から来た奴が過去にもいたのか。しかも初代勇者とはな」

「昔、この世界に脅威が訪れた時アムリ様が送り込んだ者、その人が後に勇者と呼ばれたみたいですね」

「つまり、この世界に何かしらの脅威が訪れていてそれに対応するために俺が来たと、そう言いたいのか?」

「はい、その通りです」

「でもさ、軽い感じで言われたんだよ。あんまり危機感ない感じだったけどな」

「だとしてもです。問題を放置していても自然に解決はしません。時間が経てば経つほど大きくなります。何とかする必要はあると思います」

「俺にそんなことする力はねぇよ」

「一人でやる必要もないでしょう。わたしも手伝います」

「いいのか?」

「これでも勇者ですから、困っている人を見捨てることはできません」

「そうか......ありがとな」

「はい、改めてよろしくお願いします。ハジメさん」

「ああ、よろしくユーゼ」

「それと、ハジメさんが異世界から来たことは伏せておきましょう」

「どうしてだ?」

「誰が関与しているかわかりませんから」

「わかった」


こうして俺はユーゼの協力を得た。

一人でなんとかできる気もしなかったし、ユーゼの協力はありがたい。それに、一人で抱え込まないでよくなって気持ちも楽になったしな。


話を終えた俺とユーゼは教会を後にした。

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