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4 パーティー

俺が初めて冒険者協会を訪れてから二か月が過ぎた。パーティー募集をかけてもらっていたが、未だにメンバーは集まらない。まぁ。仕方ないと思う。最近になってわかってきたが、基本的にクエストは二種類に分けられる、一つは農作業や掃除の手伝いなどの雑多クエスト、もう一つが魔物の討伐や人の護衛などのクエストだ。冒険者よりも何でも屋みたいなんだが問題はそこじゃない。

問題は…報酬金が違いすぎることだ。討伐クエストは、雑多クエストの十倍は報酬が出る…。

 そして俺は、戦闘経験ゼロだ。そんなやつとパーティー組みたいと考える奴はいないだろう。何度か声はかけられたんだが、何ができるかと聞かれたら何もって答えしか返せなかった。

 そんなわけで俺は、死ぬ前と似たようなことをしながら生計を立てている。いや、俺も少しは戦えるように努力したんだけど無理だった。だって剣がすごい重いんだよ。あんな鉄の塊、デスクワークをしていた俺には無理だよ。魔法も使えないしな。さて、文句ばっかり言っても仕方ない今日を生きるために頑張るか。

 そんなことを考えながらクエストを選ぶ俺にセラが声をかけてきた。


「おいハジメ、昨日お前とパーティー組みたいってやつが来てたぞ」

「え、マジかよ」

「マジだよ。なんであいつがお前とパーティー組みたいかは謎だが悪い奴ではない。受けてもいいんじゃないか?」

「セラの知り合いか?」

「知り合いって訳じゃねぇんだが有名人ではあるな。赤の勇者って呼ばれてるな」

「赤の勇者?。魔王でも倒すのか?」

「そうか。勇者のことは説明してなかったな。冒険者は冒険者協会が任命するが、勇者は国に選ばれるんだ。昔、この国に脅威が訪れた時にその脅威を取り除くために選ばれたものを勇者と呼んだのが始まりらしい。」


セラが詳しく勇者について教えてくれた。勇者と冒険者、この二つは基本的に同じものとして扱うみたいだ。違うことは、国に何かしらの脅威が訪れた時、勇者には国の命令に従わなければならないということ。多分、日本の自衛隊みたいなものだと思う。国からの指令がないときは普通の冒険者と同じ扱いになる。ちなみに冒険者ランクは十として扱うらしい。


「ついでに言っとくと、今この国に勇者は三人いる。これからお前が合う赤の勇者、それと青の勇者、緑の勇者だな」

「なんか、安直だな」

「覚えやすくていいんだよ」


 なんで赤の勇者が俺とパーティーを組みたいかはわからんが、いい機会だと思う。もう二か月経つしそろそろ俺も討伐クエストデビューしたいしな。断じてお金が欲しいわけではない。

 俺はセラにその人と会うことを伝えた。そして、十二時に冒険者協会に来るとのことなので俺はそれまで雑多クエストをこなすことにした。


 十二時になり俺は冒険者協会に戻ってきた。そしてセラに案内され、彼女と出会ったんだ。これから先、俺の運命を変える出会いだった。


「初めまして。私はリゼリア・バイス。よろしくお願いします」


彼女は微笑みながら、挨拶してくれた。正直ヤバいと思った。何がって今まで、生前ですら見たことないぐらいの美少女だった。一目見た瞬間に気分が上がった。これほどまでに異世界にきて嬉しかったことはない。いや、アリアさんも美人なんだがここまでの衝撃はなかった。とりあえず一度落ち着いて話をしよう。

 俺も彼女、リゼリアに自己紹介をした。そして、冒険者になって日も浅い俺とパーティーを組みたいのか聞くことにした。


「なんで、俺とパーティーを組もうと思ったんですか?」

「二か月前からパーティー募集を出していながら、未だに一人でやってるから」

「もしかして、馬鹿にしてますか?」

「え…してない、馬鹿になんてしてません。ただ、その…。」


パーティーを組みたい理由を聞いたらリゼリアは、顔を赤くして黙ってしまった。そんなに言いにくい理由があるのか?疑問に思ったが彼女から話してくれるまで待つことにした。しばらくして彼女は何かを決意したような表情で少しずつ話し出した。


「実は私、今までパーティーを組んだことがないんです。しってるかもしれませんが、私は赤の勇者と呼ばれています。勇者は特別な意味を持ちます。私がパーティー募集している人に会いに行ってもいつも敬遠されるんです。そのせいで今までずっと一人でやっていました。でも私は、パーティーを組みたいんです!」

「俺もパーティーを組みたいとは考えてますよ。どうして俺なんですか?。理由を聞かないとパーティーは組めないですよ」

「理由はですね、私がセラさんにパーティーを組みたいって相談したらちょうどいい奴がいるって言われたんです。そいつは勇者についての知識を持ってないから断らないだろうって」


セラが原因だった。何がパーティー組みたい理由は謎だ、だよ。お前が仕向けてんじゃん。俺は受付で仕事しているセラに視線を向けた。するとセラは、一度視線を合わせ、親指を立て合図してきた。俺はセラに対し同じポーズを返した。ナイス!セラ。

俺の答えは決まった。


「いいですよ。パーティーを組みましょう」

「本当ですか!ありがとうございます。これからお願いします。あ、あと敬語じゃなくていいですよ。これからはパーティーですから」

「ん、そうか。ならお互いになしでいこう」

「ふふ、うんわかった」


 こうして俺はリゼリアとパーティーを組んだ。これからはクエストの合間にリゼリアが剣術や魔法を指導すると言ってくれた。これはチャンスだ。俺でも戦えるようになるのか疑問はあるがせっかく異世界に来たんだしやるだけやってみよう。

 

俺とリゼリアは冒険者協会を後にした。俺の今の能力を知りたいと言われたので町の外までやって来た。


「俺の能力を知りたいって言われても、魔法は使えないし、剣も振るのが精一杯だぞ」

「たしかに、戦闘能力は0だね」

「ストレートに言われるとへこむな」

「そういわないで。逆に考えればこれより下はないんだよ。そう考えよう。プラス思考だよ」

「そうだな」

「アビリティは何か持ってる?」

「アビリティ?」

「そう、アビリティ」

「アビリティって…何?」

「え……」


ここにきて初めて聞く単語が出てきた。アビリティ、魔法とは違うのか?。そんなことを考えていたら、リゼリアが説明してくれた。


「アビリティはこの国に住むほとんどの人が持つ、特殊な力のこと。魔法は魔力を消費して使うけど、アビリティは魔力を消費しない。例えば、魔法で火を出すと魔力を消費するけどアビリティで火を出すと魔力は消費しない。その代わりに何かを消費する。それは、体力だったり寿命だったりアビリティを持つ人で違うの。大体わかった?」

「ああ、大体わかった」


つまり俺にはまだ可能性が残されているってことだな。でもどうやったらわかるんだ?。この二か月、自分が特殊な力を持っているような感覚は全くなかったけど。


「今のところ、特別な力は何も感じないけどどうすればわかるんだ?」

「うん…ほとんどの人はね、子供のころにアビリティに目覚めるんだけど…」


子供のころに目覚めるか…もしかして俺にはアビリティがない…。俺の中に灯った希望の炎が、消えた気がした。やっぱりおとなしく生きていくほうがいいのかもな。

落ち込む俺にリゼリアが声をかけてきた。


「大人になってからアビリティに目覚める人もいるから…頑張ろ」


リゼリアの言葉を聞いて俺は、すごく、泣きたくなった…

 このまま討伐クエストに行くのは危険とリゼリアに言われたので当分の間は雑多クエストをこなしつつ訓練することになった。

これから毎日筋トレだな、と俺は決意をした。


 

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