2 異世界のはじまり
異世界とは、誰もが1度は思いを馳せる夢の場所だと思う。俺もそうだった。異世界転生または異世界転移、これらの小説はインターネットに腐るほどある。暇な日にはよく読んでいたよ。異世界に行って強力な魔法を使ったり、特別な力で無双したりとかそんな小説をね。だから、アムリアに異世界に行ってもらうと聞いたときは、嬉しかったんだ。
結構話が長くなったが、何が言いたいんだよとみんな思ってるだろ。ふふ、教えてあげよう。
何も持っていなかった。何も…だ。
魔法何て当然ないし、特別な力もない。
そして......お金もない......。身分を証明できないから、仕事もなかった。異世界にきて1日たたずに、俺の人生はまた終わるのか。異世界転移RTAで1位になれそうだよな。寒い。元の世界にいた時と同じで季節は多分冬。雪降ってるからね。まさか、異世界にきて公園のベンチで寝ることになるとは、思いもしなかった。もう起きることもないだろう。さようなら俺の第2の人生......。
目が覚めたら知らない部屋にいた。確か俺は、雪が降る中公園のベンチに寝ていたはず。そのはずなのに、今俺はベッドの上にいる。暖かい毛布にくるまって。どうなってるんだ?。
「おきた」
声が聞こえてきた方を向くと子供がいた。
「アリア呼んでくる」
そう言い残してその子は部屋から出て行った。ヤバいな、状況が全くわからん。多分誰かに助けられたのかな。呼んでくるって言ってたし待ってればいいよな?。
俺の前に1人の女性がやって来た。
「目が覚めたみたいですね。体調は問題ありませんか?」
「えっと、大丈夫だと思う」
「本当ですか、よかったです。心配したんですよ。こんな寒い季節に公園で寝ていらしたので」
心配!誰かに気にかけてもらえることがこんなにも嬉しいなんて思いもしなかったな。今の俺には、この人が女神に見える。
「あのー本当に大丈夫ですか?無理してませんか?」
しまった。嬉しさのあまり自分の世界に引き込まれてた。
「誰かに助けてもらえるなんて、思ってなくて。ありがとう、助けてくれて」
「いえいえ、困っているときはお互い様ですから。」
見た目も美人だけど性格もいいとか、ほんと女神だな。
「そういえば自己紹介がまだでしたね、私はアリアこの孤児院の院長をしています」
「俺は斎藤 始」
「サイトウ......ハジメさんですか......かわった名前ですね」
日本だと一般的な名前だったけどここでは違うみたいだな。にしてもアリアさんか。めっちゃ美人だな。長く伸びた金色の髪に一度目が合うと目が離せなくなる金色の瞳。そして、バランスのいいスタイル。文句のつけようがない、100点です。ありがとうございました。…ここにきて初めて人の温かさに触れてしかもあんな美人の女神さまに出会ってテンションがおかしくなってるな。
「ハジメさんは何処からこの町にいらっしゃたんですか?」
何処から来たか。なんて答えたらいいんだろうか、とりあえず日本でいいか。
「日本から来た」
「二ホン?」
やっぱり伝わんないよな。ここは遠い国とでも説明するか。
「ここからだいぶ遠くにある小さな国なんだ。だから聞いたことないかもな」
「そうだったんですね。でもどうして公園のベンチで寝てらしたんですか?」
さて......一番の問題が来たな。言い訳してもいいんだけど、大抵言い訳すると後が大変なんだよな。よし、ここは正直にいこう。
それから俺はすべてをアリアさんに話した。
「大変でしたね。もしハジメさんが真面目に働く気があるのなら生活が安定するまでここに泊まってもいいですよ」
「マジですか!あ、でも俺身分証明できなくて門前払いされるんですけど」
「それなら心配ありません。いい方法がありますから。冒険者協会に行って冒険者として登録すればいいんです」
「冒険者?」
「はい、冒険者です。」
冒険者とても心が踊る響きだな。何で身分証明の代わりになるかはわからんがなるしかない。
「なります!冒険者」
「ふふ、では今日はもう遅いですし、明日登録に行きましょう」
何をすればいいかも分からなかった状況から少しは希望が見えてきた気がする。でも冒険者ってなにするんだろ。 まぁ何でもいいか。それじゃあ、明日から頑張っていくか。