第9話 襲撃者と…
誤字報告いつもありがとうございます。
今日も今日とてダンジョン探索だ。目指せ宿暮らし! そして孤児院に寄付だ!
朝早いにもかかわらず、今日もダンジョンに入っていく大勢の冒険者に紛れて3階層へと進んで行く。
4階層へと続いていくメインの通りからスっと逸れて脇へと入っていく… うん、誰もついて来ていないね。
やっぱり昨日あんな話を聞いたから、例の2人組が本当に俺を狙ってくるかもとドキドキしていたが大丈夫のようだ。まぁ最悪は不意打ちで次元断だけどな、この場合命の保証は出来ないけど!
とにかく今日は、昨日に引き続き次元断の効率的な使い方を体で覚えないといけない。もちろん自分の安全は最優先だが、時には前に出る事も必要だと思うしな。
「さて、不意打ちを受けないよう索敵だけはしっかりとだな。まぁゴブリンに気配を消すなんて芸当はできないだろうから普通に音を出して来てくれるんだけどね」
体重が軽いせいなのか、いつもどこからか聞こえてくるペタペタという足音。昨日も思ったが大体3体セットでつるんでいるから、戦闘になる前に相手との位置関係だけは把握しておかないと挟まれてしまう。ダンジョンの通路も迷路のようになっているから視界は悪いし… むむ、足音が近いな。あの角の向こうかな? ちょっと覗いてみるか。
通路の角からチラりと覗いてみると、いつものように3体がブラブラとだらしなく歩いている姿を確認できた。
ふむ、これはこのまま隠れていて、射程に入った瞬間次元断を使えば2体はいけそうだな。よし、待つか。
グギャグギャと何とも言えない言語? を発しながら3体のゴブリンが近づいてくる。しかしこれ… どう見ても会話しているように見えるよな。ちゃんと意思疎通が出来ているって事なのかねぇ… 謎だ。
そろそろ見つかりそうなので角から顔を引っ込め、いつでも次元断が使えるよう準備して集中する… なるべく見つかるのを遅らせるため、角の壁にピタっと背をつけて待機、来るか? 足が見えた!
「次元断!」
足が見えた瞬間一歩前に踏み出して次元断を発動! やはりというか、射程の都合で想定通り2体だけ巻き込んで討伐が成功する。よしよし、ゴブリンリーダーが引っかかったのはラッキーだったな。後は通常ゴブリン1体のみ!
「そぉいっ!」
「グギャァァ!」
2発目の次元断が残ったゴブリンの体を引き裂き、戦闘は終了した。
「ふぅ、たかがゴブリン相手なんだけど、なんだか不意打ちが成功するっていうのは気持ちが良いもんだな。訓練だの練習だの言っておきながら不意打ち… 不精だな俺は!」
まぁいい、少しくらい楽をしたって罰は当たらないだろう。というか、楽に戦闘をこなせるんなら断然そっちの方が良いしね。
まずは今回の収穫である魔石を回収しないとね、これだけで50ギルあるんだから塵も積もればの第一歩だ。
「おいおい、やっと見つけたぜぇ?」
「え?」
突然の声にびっくりして振り向くと… ああコイツ、昨日の奴だ。身ぐるみ剥いで犯して殺すというやつ。
くそっ、ゴブリンにばっかり意識が行ってて背後の事は疎かになっていたって事か、全然気がつかなかった。でもL字の通路だ、反対側にダッシュすれば逃げられ…
「お疲れさーん、逃げ道は塞がれましたぁ。がっかりした? 絶望しそう? ギャハハハハ!」
「あう」
やべぇ、すっかり挟み撃ちになっているよ。これはマジでピンチか?
「お前が結界師だっていうガキなんだろう? 結界師の分際で誰に断ってダンジョンにはいってるんだよ、ダンジョンに入りたかったら俺らにお布施をしないとダメなんだぜ?」
「そういう事~、罰則は死だけどな! 金も装備も持ってないだろうから、命で支払うしかないんだよな? ギャハハハ!」
「よし、それじゃあちょっくら楽しませてもらおうか。その間に好きなだけ絶望していいぞ? ああ、それから抵抗したければ自由にやれ、結界師ごときが何かできるって言うんならな!」
くそっ、こいつら本気で噂通りの奴だったのか。楽しませてもらう? 気持ち悪すぎてお断りだ! でもどうする… 1人は不意打ちで何とかなるかもしれないが、2人目は次元断を見せたら警戒されてしまうだろう。それに普通に身体能力では俺とは段違いなはずだ… マジでどうする?
「オラァ、返事くらいしたらどうなんだぁ?」
「ぐあっ!」
知らない内に接近されていて、派手に蹴り飛ばされてしまった。ダンジョンの床を転がるように飛ばされたので、もうこれだけで擦り傷がいっぱいできている… 痛い。
くそっ、近づいてくる事も気づけないほど差があるって事か、これはマジで死ぬかもしれない。
だとすると… もう切り札である次元断を使いまくって手傷を負わせてやる! 手でも足でもいい、切断する事が出来れば形勢は逆転するだろうからな… よし、もうどうなっても知らないぞ!
「クックック、ああ済まねえな、俺は少々乱暴なもんでな… まぁ終わるまでは死ぬなよ?」
倒れている俺に油断したのか、今度は普通に歩み寄ってきたので間合いを計る。ガキだと思ってなめてかかった事を後悔させてやる!
「次元だ「ぐえっ!」…ん?」
バシャァー
次元断が胴体に当たり、半分に切断されて倒れるが… あれ? 相手の頭にナイフが刺さっているぞ?
「な!? お前! 今何をしやがった! 色々と絶望させてから殺そうと思っていたが、もう楽には死なせねえからな。覚悟しやがプっ」
バタン
なんか喋ってる最中に倒れたんですけど… これって俺やこいつら以外にも誰かいるって事か?
「危ないところだったわね、大丈夫? さぁ私の胸に飛び込んできても良いのよ?」
「え…? あの、どちら様で?」
ふと気づくと、黒い装束に包まれた女性が立っていた。両手を広げて来い来いと手招きしながら… どういう事?
「ああそうね、名乗ってもいなかったわね。私はオニキス、ギルドマスターの指示で君を監視していたの。君がそこの2人… ヘソナイトとヘマタイトに狙われているって報告を受けてね」
「ああ、そう言えば昨日、フローライトさんが報告するって言ってたけどこんなに早く動いてくれてたんですね」
「そうね、昨日の夜に緊急で呼び出されてね… この仕事を依頼されたのよ。まぁそれはともかく、この2人はあくどい噂は多数あったのになかなか尻尾を出さないから手が出せなかったのよ、君のおかげでようやく捕まえる事が出来るわ」
「捕まえるって… 1人はもう完全に死んでますよね?」
「1人生き残っていればいいのよ。それにしても君… ショウ君だったわよね、それ、どうやったの?」
半分に斬り落とされた男の方を指差してそう言ってくる…