第71話 ダンジョン探索は順調?
誤字報告いつもありがとうございます。
「おはようショウ君、朝食の支度ができたから起きてちょうだい」
「……。ん? おはようございます?」
「ふふっ、寝ぼけたショウ君もなかなか良いわね! ささ、今日もダンジョンで討伐よ」
「ふぇっ!? もう朝食? 俺の見張り番は?」
「気にしなくていいのよ、ショウ君は唯一のアタッカーなんだからしっかり休まないとね」
なんと! どうやら俺は起こされなかったらしい! 決して起こされたのに寝過ごしたというわけではない! …と思う。
マジックバッグから出されていたベッドから出て、火を焚いて鍋の様子を見ているメラナイトさんにも挨拶をする。生活魔法で顔を洗っていると、オニキスさんとメラナイトさんがニコニコ顔で話をしているんだが…
「しかし寝ている時のショウ君って暖かくて抱き心地が良いわよね」
「はい、私もしっかりと堪能させていただきました。ご馳走様です」
「良いのよ、メイトも同好の士として分かち合わないとね」
不穏な会話をしている…
というか同好の士? そうだったの? ってちょっと待って、抱き心地? 俺って寝てる間に抱き枕にされてた? 全然気づかなかった…
その後、なんだかえらく満足気な顔をしている2人と共に朝食を取り、ダンジョン探索の続きとなった。今日から6階層、ゲッキョウダンジョンのマップは5階層の途中までしかなかったので、ここからは新規エリアといっても差し支えない状況だ。オニキスさんが『シノビ』というだけあって、非常に優秀なシーフであるからダンジョンにきっとあるだろうトラップ関係はすぐに発見されるだろう。俺にはそういった知識も経験も無いからそこを頼りに出来るのっていいよね!
とりあえず探索とは言っているものの目的は魔物の間引きであり、目当ては楽に行き来できるよう転移陣の発見が最優先。階層全てを回る予定は無いので階段を見つけたら即降りる予定となっている。転移陣があるとすれば多分10階層、そしてそこには階層ボスがいると思われる。
階層ボスは道中に現れる魔物の上位種が出ると言われている、6階層に入りゴッキーに酷似した巨大魔物がやたらと徘徊しているんだが… そういう事なのかな? まぁ俺はゴッキーに対してそれ程嫌悪感とかは感じていないが、前世の知識では非常に不潔であるという事しか良く分からないが、カサカサと素早い動きで襲ってくるから気持ち悪いっていえば悪いかな。
「この魔物、なんていう名前なんでしょうね」
「うーん、私も初めて見るから分からないわね。でも黒くて艶々で背中の甲殻? ちょっとした高級品質に見えるわね」
「アレを持ち帰ったら防具とかになるんでしょうか」
「どうなのかしら… もしかしたらここのダンジョンを探索している冒険者でも見た事ない人は多いんじゃないかしらね、5階層から出て来てた魔物だし」
「そういえばオニキスさんの攻撃でも傷がつく程度でしたもんね… こんな浅層でこれだけ硬い魔物がってなると、奥の方がどうなっているのか怖くなりますね」
「そうねぇ…」
まぁ小剣使いのオニキスさんだから苦戦しているとかっていうのはあるだろう。これが馬鹿でかい大剣であったら腕力と重量で押し切る事も可能かもしれないが、それをするには魔物の動きが素早いという事だ。確かにこれだと長い間攻略が進んでいなかったというのも納得できる。
「とりあえずショウ君の次元断を見る限り、今のところは問題無く斬れているわ。切り口を見ても綺麗に切断されていたし、しばらくは問題無いと思うわね」
「そうですね、頑張ります」
それからの探索も順調に進み、オニキスさんがヘイトを取って魔物を振り回し、そこを俺が次元断で斬りまくるというスタイルの練度が上がっているのが実感でした。
そして体感的に日が暮れたであろう頃には9階層へと続く階段を発見した。
「ふぅ、今日はなんだか濃い1日だったわね。今日はここまでにしましょう」
「そうですね、そうしましょう」
6~7階層ではゴッキーもどきしか出ていなかったのに、8階層からはゴッキーに加えてどう見ても巨大なカマドウマ… 所謂便所コオロギにしか見えない魔物が混ざるようになってきてたのだ。
まぁ巨大だと言っても虫としてはってだけで、ゴッキーは全長1メートルくらいでカマドウマも同じくらいのサイズだ。まぁあのサイズの虫が高速で迫ってくるというのはなかなかに怖いんだけどね。カマドウマは移動速度は鈍いけどジャンプ力が半端じゃない、そして茶色と黒の縞々模様もキモさを加速させていた。
「でも、あの縞々の魔物は武器が刺さったから幾分楽だったわね。あれで硬くて斬れないなんてなったら撤退も考えなきゃいけない所だったわ」
「そうですね、まぁ虫といっても色々種類があるって事なんでしょうね」
「ええ、硬い虫ばかりじゃないって事が分かっただけでも十分な収穫だわ」
カマドウマっぽい魔物… 足はちょっと硬めだったみたいだけど腹側はすんなりと刺さったらしい、まぁ俺は槍だから? 刺さるんならどこでも刺すけどできるなら射程ギリギリで次元断で片付けたいね。
そんな訳で本日は9階層へと続く階段で野営となった。この調子なら明日中には10階層越えられそうだな、まぁ10階層に転移陣があるという保証はないんだけど… まぁ無かったら撤退という事になっている。
もしも無かったら… 片道3日で10階層という事であれば、帰りの分も含めての食料となるとかなりの量が必要になってしまうな。10階層じゃなかったら次は何階層なんだろうか、まぁ10階だの15階だのっていうのはあくまでも人間側がキリの良いところっていう判断だから、ダンジョンにとっては関係ないんだろうけど。
さて…
「今日は俺も見張りやりますよ! なんなら一番最初にやっちゃいます、それなら寝過ごすとか無いですから!」
「ショウ君はゆっくり休んでも良いんだけど… なんと言っても唯一のアタッカーなわけだし」
「それを言うならオニキスさんだって唯一の護衛じゃないですか。俺だって見張りくらいできるんです!」
「そう、じゃあ一番最初でお願いしようかしら。2番手は私で3番手がメイトで良いわね?」
「それはダメです。私が2番手でオニキス様が3番手でお願いします」
「何を言ってるのかしら? 3番手だとショウ君を抱き枕に出来ないじゃない!」
「ショウ君が交代する時に一度起きればいいんですよ」
女性陣が何やら騒ぎ出したけど、これに口出しするの… 嫌だなぁ。




