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第65話  依頼という名の命令

誤字報告いつもありがとうございます。

 あれからしばらくは平穏に訓練が続いていた、ニッケルさんも真面目に訓練しているしルビー殿下も同様に的に向かって気円斬を繰り返している。ニッケルさんはなんとか2枚同時張りを使いこなせるようになり、現在は重ね合わせの訓練を開始している。もう少し自在に操れる様になったらいよいよ次元断だね! まぁ今はまだ自在とは言えないから、事故が起きないよう無理はさせていない。


 それよりもルビー殿下だ… 努力家の上に才能まであるのは理解していたけど、思っていたよりも更に努力家だったんだよね。もうすでに気円斬は完全に使いこなしていると判断できるくらいになっていて、俺が訓練時間外に自主練でやっていた気円斬のブーメランバージョン… 文字通り結界をブーメランの形にして、強い回転をかけながら変化球のように曲げて的に当てていたんだけど、どうやらこっそりと見ていたようで… ええ、気づいた時には丸パクリされていましたよ! 見ただけで技を覚えるなんてどこの絶対強者ですか! 「その技ならすでに見た」とか言われそうで怖い。


 そんなこんなで暮らしていたんだけど… そう、例のヒスイ皇女殿下が現れた日からちょうど1ヶ月経った今日、ギルドからの緊急呼び出しが来てしまったんだ。


「はぁ… オニキスさんの予想だと、十中八九帝国絡みの話しなんだという事だが… オニキスさんはどこでその情報を仕入れているんだろうね? 国が絡んでいるというなら国家機密だろうに」


 まぁ仕方がない、『シノビ』であれば諜報活動だってお手の物なんだろう、深く考えるのは止めておこう。



「あら、随分と疲れ切った顔をしていますわね。これからギルドに行くのでしょう? わたくしも一緒に行きますわ」

「ええ? 呼び出されたのは俺だけなんですけど?」

「いいえ、わたくしの方にもお父様から連絡が来ていますわ。まぁ貴方にとっては面倒な事かもしれませんが、ここは我が国のため… いえ、わたくしの顔を立ててはくれないかしら?」

「はぁ… 内容によりますけど」


 突然現れたルビー王女… 別に呼び出しから逃げたりしませんから一緒じゃなくても良いんじゃないですかね? 王族と一緒にいるというだけでも結構なストレスなんですが… ダメですか。ずっと一緒に訓練してるだろって? いやいや、アレはお仕事だと割り切っていましたから。


 まぁ当然王女殿下が街を行くんですから警備は万全な体制になりますよね… 短い距離ながらも移動が馬車だったのだけが救いだったよ、本当に注目度が高すぎる。


 ギルドに到着するなりギルドマスターの部屋に通される、もちろんルビー殿下といつもの護衛さん、侍女さんも一緒。まぁ最近では睨まれる事も無くなったので変な緊張感はないんだけど、やはりこの人達は苦手な部類なんだよね… 選民思想が強すぎるというか、まぁ俺の被害妄想かもしれないけど。


「いらっしゃい、よく来たわねショウ君」

「おいっ! お前の部屋じゃないだろう? まぁいい… ショウよ、そこに座ってくれ。殿下もこちらにどうぞ」


 えっと… なぜか迎え入れてくれたのはオニキスさん? 今日は朝からいなかったから仕事かと思っていたけどここにいたんだね。


「さて… ショウにとっては嫌な話になるんだが、国王陛下からエメラルド帝国までの遠征依頼が来ている。一応遠征依頼という形にはなっているが、これは正真正銘命令書であると思ってくれ」

「命令書… ですか。こんな一介の結界師に遠征とか怖いんですけど」

「まぁそうだろうな。依頼内容はエメラルド帝国騎士団と共にAランクダンジョンであるゲッキョウダンジョンに入り、中を徘徊する魔物どもの間引きという事だ。

 これは帝国皇帝から直接の救援要請であるため、アズライト王国としても受けざるを得なかったというか… まぁ恩を売っておこうという事だな」

「しかし決断が早かったですね。ヒスイ殿下が来てから1ヶ月ですが、たった1ヶ月で我が国に救援要請が出せるなんて」


 ギルドマスターの言葉にルビー殿下が口を出す。まぁ確かに国内ならばともかく、隣国に対する救援要請なんてそうそう簡単には決断できない事だ。なんせ国としての威信にかかわる事だから、自国に誇りを持つ貴族なんかの反対にあいそうだよね。


「まぁ逆に言えばそれだけ切羽詰まっているとも考えられるな。正直言ってショウを送り出すなんてしたくはないんだが、ギルド本部もこの案件に賛成してしまったからな… すまんが断ることはできない状況だ」

「はぁ…」


 しかしいくら俺の次元断が威力があるからといって、単身で向かって意味あるのかな? まぁそこら辺どんな話し合いが行われたのか知らないからなんとも言えないけど、まぁ平民の結界師なら適当でいいかなとかやってそうだしな。


「もちろんエメラルド帝国までの護衛と現地でのお世話は私がやるから安心してね。残念だけど緊急案件だから移動は馬車じゃなくて騎馬で向かう事になるわ、まぁ私も体重は軽い方だしショウ君もそう、2人乗りでも大丈夫よね!」

「え? オニキスさんも行くんですか? 確かにそれなら安心できますけどいいんですか?」

「もちろんよ! 不在時の訓練場についてはギルドで管理するから大丈夫、ちゃんとニッケルの食事も用意させるわ」

「そうですか。ちなみに依頼という事は報酬が出るんですよね?」


 当然これは聞いておかなければいけない。さすがにギルドが表立って『依頼』だと言うんだ、報酬があって当然だよね?


「もちろん国からちゃんと報酬が出るから安心しろ。現地での作業量… つまりは討伐数だな、これについては歩合で加算という事で決まっている。エメラルド帝国の皇帝を泣かせるほど倒してこい!」

「あはは… 善処します」


 うん、断る事ができないっていうのは本当のようだね、完全に行く事が決定した上での話になっている。しかしいきなりエメラルド帝国か… 考えてみたら前世も含めて初めての海外だな。まぁこの国は陸続きだから海外という言い方はおかしいか、初めての国外だな!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「報酬内容、”具体的に”確認する」というのは、冒険者にとって、基本だと思うのですが? こんな抽象的な報酬内容(報酬はちゃんと出るぞ!)だけで、納得してしまうんですか?
[一言] 「うん、断る事ができないっていうのは本当のようだね、完全に行く事が決定した上での話になっている。」 ギルドでのレベルも最低、軍に所属しているわけでもないのに一介の平民にどうしてその様な命令…
[一言] ブーメランて揚力を生むためプロペラみたく微妙に厚みを調整してあるはずですよね?再現できる主人公もそれを更にコピれる王女さんも凄いことに。
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