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第63話  オニキスさんの考察

誤字報告いつもありがとうございます。

「それで異変とは何のことだろうかをギルドでは考察しているわ、そして出た結論は…」

「け、結論は?」

「お風呂に入ってからにしましょう! さぁ行くわよ!」

「ふぁっ!?」


 夕食後、先ほどの話を深堀りして聞いていたというのに… ひょいっと担ぎ上げられ風呂場へと連れて行かれる。こうなってしまったら抵抗するだけ無駄なんだよね、所詮俺は12歳のガキでありオニキスさんは大人のAランク冒険者。敵う訳ありませんって!



 お風呂から上がり、火照った体に冷たい果実の搾り汁… まぁジュースだね。それを飲みながら夕食時の話の続きをしている。

 お風呂? ああ、なんて言いますか… うん、なんかもう慣れちゃった。年頃の女性とお風呂だなんて美味しいシチュエーションなんだろうけど、俺の心もどうやら12歳のようで恥ずかしさばかり目立っていたけど慣れちゃった。


「…で、どうやらスタンピードの兆候が出ているらしいのよ」

「うわぁ… どうなっちゃうんですかね」

「もちろん溢れさせないよう今からでも大量の魔物を倒して間引いていくしか無いんじゃないかしら。まぁAランクダンジョンだからどれだけ間引けば安定するのかは分からないわ」

「というか、間引けば抑えられるもんなんですか?」


 話の流れでつい気になった事を聞いてみた。そもそもスタンピードというのは原因不明の現象としてギルドに伝わっており、ギルドに行けば誰でも文書が見られるようになっている。

 だけど原因不明なのに魔物を間引くとか特定の行動を取っているところを見ると、この国では知られていない隣国の秘密だったりするんだろうかと思ったりしてしまうのだ。


「エメラルド帝国では200年以上前にスタンピードが起きたらしくて、その時の記録が残されているとの事よ。この国はもちろんジェードダンジョンですらそんな記録は無いというのに、帝国では生き残りが頑張って残したのね。

 まぁその時の記録からスタンピードの兆候であることが分かったという事だけど、さすがに私では間引けば安定と言われても眉唾としか思えないわね」

「ふむぅ…」


 まぁ残されてたという記録を見ていないからなんとも言えないけど、もしかしたらAランクダンジョンという事だし難易度が高すぎて放置されていたから… そんな理由だったりしてね。

 とはいえスタンピードが起こるとなれば俺も他人事では済まされない、エメラルド帝国という国の立地上溢れた魔物は間違いなくこの国にもやって来ると、ギルドは断定しているそうだから対岸の火事として暢気にしている事は出来ないよな。まぁだからといって俺に何かできるって訳じゃないから、ギルドから指示が出たらって感じになるのかな?


「それでね… その時帝国の皇女が言っていた話になるんだけど、国を通して支援の依頼? もしかしたらショウ君の噂を聞いてその攻撃力を当てにするつもりなのかもしれないって事ね」

「ええ? いくら攻撃力があったって俺が1人でどうにかできる問題じゃないと思いますけど?」

「これもギルドで聞いた話なんだけど… スタンピードの兆候が現れているダンジョンが2つあって、1つはジェードと同じように獣型や人型魔物がメインだから何とかなるとの事だけど、もう1つの方が厄介だと言うのよ。何でも虫系の魔物ばかりが出るダンジョンで、毛虫とかそういった魔物はともかく頑丈な殻などをもった虫や甲虫などの魔物が倒せないらしいわ。

 いえ、倒せないじゃなくて硬すぎて倒すのに時間と人員がかかりすぎるらしいのよ。そうなると… ねぇ?」

「あう、次元断で斬りまくれって話になるって事ですかね」

「そういう事。まだ現状では次元断を撃てるのはショウ君とルビー王女殿下のみ… さすがに王女殿下がダンジョンに行くわけ無いから必然的にご指名がかかる可能性が特大だという事ね。まぁあくまでもギルドが考えた未来予想でしかないけれど」

「いえ… なんだかその予想が大正解な気がします」


 なんじゃいそりゃ! でもまぁスタンピードが起きてしまった時の損害を考えると、防げるんなら防ぎたいというのは分かる。ましてそのダンジョンのランクがAランクでしょう? いったいどれほど恐ろしい魔物が出てくるのかって考えればね… 当然その魔物の一部はこの国にも来てしまうだろうし、あーもう! せっかく俺の人生が軌道に乗り始めたって時なのにどうしてこんな!


「もしかしたら… ギルドからは要請が来るかもしれないわ、帝国に行ってくれと」

「えー、でもそれって断れないやつなんですよね?」

「そうね、恐らくギルマス直々の強制依頼が発令すると思われるわ。まぁでも心配はいらないわ、もしそうなった場合私も一緒に行くから!」

「ええ? それは許されるんですか?」

「許されなくても関係ないわね、そもそもギルマスなら許さんとか言ってこないはずだし大丈夫よ」

「ソウデスカ…」


 いやしかし、もしそうなった場合この訓練場はどうなるんだ? まぁ一時閉鎖は仕方がないとはいえ、ニッケルさんとか通いの調理師の人や受付の人とか困っちゃうだろう。

 最悪はギルドに管理を依頼して、ニッケルさんには今まで通りの近接訓練を続けてもらうしかないかな… 受付の人はギルドの職員だからともかく、調理師の人には仕事をあげないとダメだよね。当然給金も。


「それで、今から急ピッチで育成を強化したらニッケルというおじさんは間に合うと思う?」

「んー無理でしょうね。まだ任意の場所に結界を張る事すら覚束おぼつかない状況ですから、急がせたら却ってミスを誘発しそうですね」

「なるほど… ま、そういうことならショウ君が単独で出張する方向で考えておいた方が間違いないわね。アズライト国王はエメラルド帝国に貸しが作れるから諸手を上げて了承すると思うし」

「うへぇ… やっぱり王侯貴族の人にとっては平民なんて道具にしか見えてないって事ですよね、マジで引くわぁ」

「そういう貴族がいるのは否定しないわ。でもそういう人だけじゃないって事だけは覚えておいてね、私も実家は一応貴族だから…」

「いや、オニキスさんにはいつもお世話になっているし、そんな事は思っていませんよ。ただ偉い人っていうのはどこに行ってもそんな感じなんだなって再確認しただけです」


 うん、記憶にある前世の世界では貴族制度は無かったけど、偉い人は大体そんな人が多かったよね。

 ちょっと嫌な記憶を思い出してしまったな…

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[一言] よっしゃー邪魔者いない!とか思ってませんか?>ニッケル間に合わない
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